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マリエルの5000年前の友達

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マリエルの5000年前の友達

リアクション


シャンバラ大荒野の遺跡

「マナ、大変よ!」

 朝野 未沙(あさの・みさ)の血相を変えた声が響く。

 後ろから突然話しかけられた小谷 愛美(こたに・まなみ)は、驚いて振り向く。

「マナ、急いでマリエルさんの所へ行きましょう。シャンバラ大荒野に遺跡が発見されたでしょ。マリエルさん、そこにひとりで行ったみたいなの」

「え?」

「そしたら、遺跡の中で、マリエルさんの友達を見つけたんだって!」

「友達って?」

「うーん、よくわからないけど、遺跡の壁に、守護天使のレリーフが刻まれていたらしいんだけど・・・・・・その像が、マリエルさんの友達にソックリだったらしいのよ」

「・・・・・・」

「で、マリエルさん、レリーフを見たとたん、我を忘れて助け出そうとしたんだって。でもうまくいかなくて、怪我をしたみたいよ」

「本当?・・・・・・マリエル、なんで私に内緒で・・・・・・」

 エヴァルト・マルトリッツ(えう゛ぁると・まるとりっつ)も愛美の気持ちがよくわかった。

「確かに・・・・・・小谷さん抜きで出かけるデカトリースさんも珍しい。何か危ない目に遭わないように見ておく必要があるね・・・・・・しかし、傷つくのも厭わずに友を助けようとする気持ちも、よくわかるぜ」

 パートナーのロートラウト・エッカート(ろーとらうと・えっかーと)は、エヴァルトの言葉にうなずく。

「一人で行くなんて、心配だなー・・・・・・と思った矢先だったけれど、やっぱり怪我をしたのね。仕方がないわ、エヴァルト、マリエルちゃんを守ってあげようよ!」

 再び朝野 未沙(あさの・みさ)が口を開いた。

「うん、一人でなんて無謀だよ。だから、あたし達も古代の遺跡まで行って、マリエルさんの力になってあげなきゃ! ね、マナ」

「う、うん」

「大丈夫、みんなで力を合わせれば、きっとなんとかなるよ。それに、どんなことがあってもマナはあたしが護るから、心配しないで。」

 そういうと、未沙たちは、遺跡に向かって出発した。

※ ※ ※


 シャンバラ大荒野にて発見された遺跡の前には、仄明るく光るレリーフの噂を聞きつけた生徒たちでいっぱいになっていた。

 すると、小谷 愛美(こたに・まなみ)たち一行の姿をみつけた小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)が声をかけてきた。

「あ、マナミンだ。私、マリエルの友達を助けに来たよ。力を合わせて遺跡のモンスターを突破しようね」

「ありがとう。美羽さんは、マリエルと仲良しだもんね」

「うん、ファラールの封印を解く方法を見つけるのが今回の目標よ。ねえ、ウィングさんだったらなにかわかる? いっぱい知識持ってるじゃない」

「そうですね。ファラールを助けるためには、私の持てる知識<博識>と、特技の<考古学>および<捜索>をフルに活用しなくては! それで、儀式の内容から封印を解くための方法を見つけ出しましょう」

「さっすがー」

 ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)の知力を尊敬のまなざしで見る美羽だった。

 遺跡に興味を抱く生徒は、他にもいた。

 ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)などはその典型で、なにかおもしろいものはないかなと、暇つぶしに遺跡探索の一行に加わっていたのだ。

「ふふふ、お宝がみつかるといいですね。モンスターとの戦闘もドンと来い! まぁ、参加の動機は遊びだけど、真剣にやりますわ。山登りと一緒。全力で取り組むつもりですよ・・・・・・って、あなた、その格好で遺跡探索をするわけ!?」

 ガートルードに服装を指摘されたのは和泉 真奈(いずみ・まな)だった。

 真奈のいでたちは、メイド服とブリムのカチューシャ、それに、化粧を施し、髪型も普段とは変えていたので、一目だけでは真奈とわからないくらいの変装ぶりだ。

「少し気になることがありますので、私も御同行させていただきますわ」

「ふーん、でも今日はパートナーのミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)がいないじゃない?」

「いえ、ミルディアは来ているんですが・・・・・・どうも、フラストレーションがたまっているみたいでね。一緒にいると大変なことになりそうだから、こうやって変装して、ミルディアには内緒で参加しているのですよ・・・・・・」

 真奈の困惑した表情を見ていた佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は、思わず苦笑い。

「確かに、君のパートナーが暴れたら手を焼きそうだねぇ。まぁ、お手柔らかにお願いしますよ。ワタシは軽い気持ちで参加したのでねぇ。全校に調査依頼がきたので、それで・・・・・・ただ、遺跡に純粋に興味を持っている人は多いと思うよ。仁科 響(にしな・ひびき)なんかもそのクチだしね」

「興味はあるね。ボク自身、5000年前には産まれていなかったけど、この遺跡からは、何か声が聞こえるような気がするんだ。だから、その声にしたがって調査しようと思うよ」

「声が聞こえるって!? 気味の悪いことを言わないでくれよ、響」

 清泉 北都(いずみ・ほくと)はちょっと顔をしかめて仁科 響(にしな・ひびき)の話に応酬した。

「まあ、鏖殺寺院のことだから、ファラールを使って良からぬ儀式を企んでいたんだろうね。たとえば、生贄を使って何かを召喚するとか、悪しき存在を蘇えさせるとか・・・・・・いずれにせよ、このまま放っておくわけにはいかない。とにかく、マリエルの友達を助けよう。大切な人なんでしょ?」

 北都の口から漏れた「鏖殺寺院」ということばに、匿名 某(とくな・なにがし)はブルッと身を震わせた。

「寺院関係ってだけで危険なのに、そこに綾耶を連れてくのか・・・・・・」

 しかし、匿名 某の心配をよそに、パートナーの結崎 綾耶(ゆうざき・あや)は使命感に燃えている。

 綾耶は、まだ爪の傷が癒え切らぬマリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)を見つけると、励ましのことばをかけていた。

「あ、マリエル。えっと、私みたいなのがどこまでできるかわかりませんが・・・・・・出来る限り頑張ります!」

「ありがとう、綾耶。傷のほうはもう大丈夫だから」

「それはよかったわ。でも、ずっと昔のお友達を助けようという気持ちが報われないなんていやです! だから、私に出来ることがあるのなら・・・・・・」

 大谷地 康之(おおやち・やすゆき)も援護射撃。

「ずっと昔のダチを助けるために頑張る・・・・・・泣かせるじゃねえか! よっしゃ! ここは俺がきっちりハッピーエンドにしてやろうじゃねえか!」

「みんな、ありがとう」

 某は、綾耶に遺跡探索をやめさせようとしていた気持ちがスーッと消えていった。

 『何があっても護るさ・・・・・・絶対に』

 ことばには出さぬ決意を固めるとともに、どうしたら事件解決に導けるのか、考えをめぐらせた。

「儀式に使うぐらいだから、もしかしたら特殊な存在だったのかもしれないな・・・・・・」

 匿名 某(とくな・なにがし)はそういうと、マリエルから、封印された友人について、聞ける限りの情報を引き出していた。


 ひとしきり、マリエルの探検談を聞くと、霧島 春美(きりしま・はるみ)は自分の出番とばかり、自信の程を見せていた。

「やっぱり鏖殺寺院の良からぬ企みに違いないわね。大丈夫! このマジカルホームズ春美が謎を究明してあげる。勧善懲悪こそ私のポリシーなんだからねっ☆ 地図にライトに食料と、万全の用意をして調査開始よ! いいわね、ワトソン君!」

「えっ、ニャンコは今日、ワトソン役なの!? ・・・・・・まいいや。うん、がんばる」


 いきなりワトソン役を振られた超 娘子(うるとら・にゃんこ)は、ちょっと動揺。

 さらに、不安がる娘子を追い討ちするように霧雨 透乃(きりさめ・とうの)が恐怖を煽る。

「この遺跡・・・・・・今まで未盗掘だったということは、多分モンスターか何かいるんじゃないかな?」

「ええ〜っ!!」

 しかし、ピクシコラ・ドロセラ(ぴくしこら・どろせら)がこれを収めた。

「大丈夫! 空手ニャンコは後ろががらあきだから、ワタシが特に注意してあげる・・・・・・ともあれ、この遺跡探索では、考古学を特技とするワタシの出番ね。皆の調査を的確にサポートするわ。封印を解くカギを見つけてみせますよ」

「友達が封印されている?・・・・・・って、えげつなくないか、それ?」

 こうつぶやくレイス・アデレイド(れいす・あでれいど)に対して、伏見 明子(ふしみ・めいこ)はヴァンガードとしてのプロ意識に誇りを持っている。

「女王器の噂アリと言われれば、どこでも行くのがヴァンガードよ」

 そういったものの、日ごろの激務による疲労の色は隠せない。

「・・・・・・ふぅ。最近なんだか疲れてきたわ。とはいえ、今回は人助けでもあるし、少しは甲斐もある、かな・・・・・・? ここに来ているみんなの中にも、昔パートナーが封印されていたって人、少なからずいるようだから。シリウスたちも確かそうだったわよね?」

 シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)は答える。

「おう、そうだぜ。でも、封印されていた理由がわかんないんだよな。5000年前の人なら何か事情を知っているかもと思ったから、調べに来たんだよ。というわけで、オレたちも愛美たちの遺跡探索に協力するぜ」

 パートナーのリーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)は、マントのフードを深々とかぶり、うつむき加減で顔をみせない。

「リーブラ。今回の探索で、お前のことなにかわかるかもしれないぜ・・・・・・大丈夫、お前が十二星華ティセラに似ているとかどうとか因縁つけてくるヤツがいたら、ぶっ飛ばして別人だって教えてやるから」

「そんな乱暴なことしないで、シリウス・・・・・・何故わたくしが十二星華そっくりなのか。シリウスの大切な人がティセラさんなのか。あるいはティセラさんのモデルとなった方がシリウスの大切な人なのか・・・・・・封印前の記憶が殆どないので力になれるかわかりませんけど・・・・・・ただ、わたくしは自分が何者か知りたいのです。」

 やがて、生徒たちは、順次遺跡の中へと入っていった。