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首狩りウサギを捕まえろ!!

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首狩りウサギを捕まえろ!!

リアクション


切り落とされた生首

 蒼空学園のウサギ小屋から逃げ出した10匹のパラミタヴォーパルバニー。

 最初の1匹は、マリエルたちが捕まえて小屋に戻したものの、まだ9匹が校内のどこかに潜んでいる。

 鋭い歯で獲物の首を狩る肉食のウサギ・・・・・・犠牲者が出る前に、すべてを捕獲しなければならない。

 生徒たちは、ウサギがどこに逃げたか、どのようにして捕まえるか、頭をひねっていた。

 クラーク 波音(くらーく・はのん)は、生き物係のマリエル・デカトリース(まりえる・でかとりーす)からウサギのエサとなる肉塊をもらうと、置き場所を探した。

「うーん、やっぱり人気のない校舎の裏かな?」

 クラークが歩き出そうとすると、スレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)アレフティナ・ストルイピン(あれふてぃな・すとるいぴん)に引き止められた。

「クラーク、ひとりじゃ危険だぜ。俺たちも一緒に校舎の裏手に行くから、その肉塊持ってきてくれ」

「わかったわ。でもスレヴィ、あんたウサギに乱暴なことしちゃだめだよ! できるだけ友好的な方法で、パラミタヴォーパルバニーさんを傷付けずに、ウサギ小屋へと戻してあげたいからね」

「わかってるって」

 そういうと、3人は連れ立って裏手へとまわった。

「このあたりなら、物陰も多いし、いかにもウサギが潜んでいそうな場所よね。よし、ここに肉塊を置いて、様子を見よう」

 クラーク 波音(くらーく・はのん)は、ヴォーパルバニー用の肉塊を皿に乗せると、地面に置いた。

 おいしそうな肉を見たアレフティナ・ストルイピン(あれふてぃな・すとるいぴん)は、なんだかヴォーパルバニーに親近感を覚えていた。

「私みたいにお肉大好きなウサギ、ですか。ぜひ仲良くなりたいですねっ」

 すると、スレヴィ・ユシライネン(すれう゛ぃ・ゆしらいねん)がニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「そうそう、ぜひウサギと仲良くなってくれよ、アレフティナ。このから揚げでな」

「あっ、から揚げくれるんですか? おいしそうですね!」

「おっと、ここで食べるんじゃない」

「へ?」

「あそこだ! クラークが首狩りウサギ用の肉をおいた場所で食べるんだよ」

「ええっ? 首狩り? ・・・・・・スレヴィさん、やっぱり帰りま・・・・・・」

 そそくさと立ち去ろうとするアレフティナの襟首を、スレヴィはギュッとつかんで、グイと引き寄せた。

「同じ肉食なら、もしかしたら同類と思ってくれるかもしれないじゃないか。そうすれば、ウサギに襲われることなく、捕まえられるかもしれないんだぜ」

「そ、そうかなぁ?」

 結局、スレヴィの有無を言わさぬ圧力に屈し、アレフティナはパラミタヴォーパルバニーのエサが置いてある隣で鶏のから揚げを食べることになった。

 スレヴィとクラークは、アレフティナから少し離れたところで、物陰に隠れ、様子をみることにした。

※ ※ ※


 一方、こちらは校庭の茂み。

 影野 陽太(かげの・ようた)は、特技「捜索」を使用して、ウサギのいそうな場所を探していた。

「ウサギのやつ、どこにいるのかなぁ?」

 一緒に来ていた酒杜 陽一(さかもり・よういち)は、年長者の経験から、陽太へアドバイスする。

「このあたりは確かにウサギが隠れていそうだな。首狩りウサギは基本、茂みや物陰に潜んでいる。それで、獲物の視界の外から、頸をめがけて飛びかかってくるんだ」

「ええっ、そんな。正直、首を狩られたらトンでもないことになりますよ・・・・・・」

 影野 陽太は、内心かなりビクビクしながら、警戒を怠らなかった。

「陽太さん、必要以上に怖がってもしょうがない。ウサギの攻撃パターンを把握するんだ。ヤツが『どこ』から、身体の『どこ』に向かって、『どんな』攻撃が来るか予め判ってれば、迎撃は容易だぜ」

 ソラ・ウィンディリア(そら・うぃんでぃりあ)は、パートナーの酒杜 陽一とは少し離れた場所で、周囲の様子を注意深く観察していた。

 ウサギを誘い出しやすくする為、陽一とはあえて一緒に行動せず、単独で作戦を敢行していた。

 ソラは、コンパクトの鏡を使って化粧を直しつつ、しかし油断せずに、『予兆』を察知しようと務めていたのだ。

「茂みの葉の僅かな動きや音を聞き漏らさないようにせんとな。それに、この鏡があれば、後ろの物陰で動く影なんかも見えるし」

 近くにいた霧島 春美(きりしま・はるみ)は、ソラと協力して、視界の悪い茂みでの探索をおこなっていた。

「ソラさん、その鏡いいですね! ウサギは足が速く、狭い所に潜り込んだりと、なかなか見つけにくいですから。あ、それに穴も掘りますしね。その辺りを念頭において探してみましょう。できるだけ、ウサギにケガさせないように捕まえましょうね☆」

「了解〜」

※ ※ ※


 湯島 茜(ゆしま・あかね)エミリー・グラフトン(えみりー・ぐらふとん)は、すごい光景を目撃してしまった。

 その詳細を語ろう。

 ルミーナの全校放送を聞いた変熊 仮面(へんくま・かめん)が、校門から校内へ駆け込もうとすると、そこに1匹のウサギが校外に出ようとしていた。

 白い体毛に鋭い前歯、間違いなく、パラミタヴォーパルバニーだ。

 その殺人ウサギは、変熊 仮面の姿を認めると、キシャーッ!! っと牙を剥いた。

「おお、これが首狩りウサギか! うん、しかしいくら危険な動物でも、愛情を持って接すればモフらせてくれるはず! うさちゃ〜ん、おいで〜!」

 変熊 仮面は、ウサギに近づくと、手を出してしゃがみこんだ。

「危ないからやめなよ!」

 湯島 茜(ゆしま・あかね)が叫ぶよりも早く、殺人ウサギは獲物の首めがけて飛びかかった。

「あ、危ないっ!!」

 変熊の首筋を、ヴォーパルバニーの牙が掠める。

 ブッパァーッ!!!!!

 飛び散る鮮血。

「うおっ! このままでは・・・・・・死ぬ!」

 変熊 仮面の首から下だけが、光学迷彩で透明になったところ、変熊の意識が途切れた。

 変熊 仮面の後ろに着地したパラミタヴォーパルバニーは、相手の視界が外れているとみるや、再び襲ってきた。

 今度は本気だ。

 キシャーーーーーーッッ!!!!!

 鋭利な前歯が陽光にきらめいたかと思うと、スパーーンと丸いものが飛び上がった。

 ゴロリ。

「キャーーーーッ!!!」

 女子生徒たちの悲鳴とどよめきが、蒼空学園全体をつんざく。

 校門に転がる変熊 仮面の生首。

 しばらく、誰も、どうしてよいかわからなかった。

 この状況の中、エミリー・グラフトン(えみりー・ぐらふとん)だけは冷静だった。

「それがし、首を狩られるシーンを見るのは慣れているであります!」

「はぁ? エミリー、何言ってるのよ」

「以前にも首を切断されたことがありますので・・・・・・ちなみに切断したのは藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)さんであります!」

 エミリーの発言に、生徒たちの視線が一斉に藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)へと向けられる。

「私が責任を持って、変熊さんの頭を立派な干し首にします!」

 自信たっぷりに言い放つ藤原 優梨子に、周囲はどう対応していいのかわからないという困惑が包んでいた。

「う、なにが立派な干し首だって? 勝手に他人の頭を使われちゃ困るな」

 首のない胴体がしゃべるのを聞いて、生徒たちは一層どよめいた。

 と、変熊 仮面の胴体を覆っているブラックコートから、ニュッと新しい頭が生えてきたのだ。

「ヒャーーーッ」

 今度は藤原 優梨子が驚いた。

「はははは、びっくりしたか。さすがの変態も、この変熊 仮面の変態さ加減にはかなわないと見たぞ」

「これ、どういうこと?」

「貴様が持っているのは、ダミーの首さ」

「くっ、だましたわね」

「はははは」

「笑っている場合じゃないわよ、このヘンタイさん。あなたを襲ったウサギ、あっちへ逃げちゃったわよ。よーし、私が捕まえてやるわ」

 こういうと、藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)はウサギの逃げだ方向へと駆け出していった。