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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
輝く夜と鍋とあなたと 輝く夜と鍋とあなたと

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「どうぞー! 今夜、イベントやりますので、来て下さいねー!」
 空京の街をぶらぶらと歩いていた神崎 優(かんざき・ゆう)は色っぽいお姉さんからチラシを受け取ると、すぐに目を通した。
「良いかもな」
 そう呟くと、優は一緒に買い物に来てはいるのだが、下着のお店に入ってしまった水無月 零(みなずき・れい)陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)にメールをし、その間新しい携帯を見てくると言って別れた神代 聖夜(かみしろ・せいや)に電話を掛け、空京自然公園で落ち合う約束をしたのだった。

 公園入り口で4人が揃うと、広場へと歩いていき、タノベさんのもとで食材をゲットした。
 タノベさんが言っていた広場の中央辺りのカマクラはまだ空いており、すんなり入ることが出来た。
「やっと暖かい場所に入れたな」
 聖夜はそう言うと、一番にコタツの中に入って行った。
「今日はかなり冷えるからな。買い物のあとに鍋やカマクラは良いイベントだったな」
「だね。こんなに冷えるんならもう1枚着て来ても良かったかも」
 優が座り、零が座る。
「イベントを企画したタノベさんに感謝ですね」
 最後に刹那が座り、4人で仲良く調理が開始された。
「春雨って一度戻してから使うんでしたっけ?」
「えーっと……この春雨戻さなくても大丈夫って書いてあるから、そのまま入れちゃって良いんじゃないか?」
「そうですか」
 刹那は聖夜がパッケージを確認すると、そのまま鍋の中に春雨を突っ込んだ。
「お肉ってこの大きさで良いかな?」
「もう少し小さい方が食べやすくないか?」
 零は優の言葉に頷くと、今切ったお肉にもう一度包丁を入れた。
 そうして、寄せ鍋が完成すると、お茶で乾杯してから、食べ始めた。
「……優。はい、あ〜ん」
 零は顔を真っ赤にしながら、鶏肉を箸に挟んで差し出す。
 優はあたふたと自分の手を見たり、零の目を見たりしてから、顔を赤くして食べさせてもらった。
「ありが……とう」
「ううん。一度やってみたかったの」
 零は自分と同じく、顔を赤くして受け入れてくれた優の行動が嬉しくてたまらないようで、真っ赤っかになりながら、笑顔を向けた。
「ホント仲が良いな」
「お似合いのカップルですよね」
 見ていた聖夜と刹那が小声で話しているのにも、2人は気づいていない。
 聖夜は微笑んで、自分の皿から人参をつまんで口へと入れた。
「……刹那?」
 突然立ち上がり、カマクラの入り口で星の光を反射して光り輝く雪を見つめ出した刹那を優が心配して声を掛けた。
「私、雪って好き。世界を白く染めて、何もかもを覆い隠してくれて……まるで私の罪を隠してくれるようで、その時だけは真っ白な、清らかな自分でいられるから」
 目を細めて、刹那が呟くと聖夜と零は何か言おうと口を開くが、何も出てこず、口を閉じた。
 ただ、優が刹那に近づき、隣に立って、一緒に雪を眺めながら口を開いたのだった。
「成る程。だけど俺は雪が白いのは、覆い隠す為じゃなくて、その上にまた新たに始める為……春を迎える為に世界を真っ白に染め上げてるんじゃないかな」
 そう言葉を発した優を刹那が見上げと、優は微笑んだ。
「確かに、過去を変える事や忘れる事は出来ないが、未来は違うだろ。こうして俺達と出会って、刹那は新たな一歩を踏み出せているんだから」
 くしゃくしゃと刹那の頭を撫でると、コタツへと戻ろうと歩きだした。
「ありがとう……」
(こんなにも暖かな気持ちになるなんて……なんて心の優しい人なんだろう)
 しかし、その裾を引っ張り、優の足を止めさせると、刹那は背伸びをして頬にキスをした。
「……!!」
 優と零が口をぱくぱくしているのをしり目に刹那はコタツの自分の席へと戻っていったのだった。