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イルミンスール湯煙旅情

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報告書

「……以上が、『温泉旅館・薫風、空前の復活劇』の一部始終ですわ」
 自身で纏めた体験レポートを手に、佐倉 留美(さくら・るみ)が報告する。
「ふぅん、ずいぶんよく出来た物語じゃない、これが事実だとしたら実に興味深いわ」
 レポートの写しをペラペラとめくりながら、メトロ・ファウジセン(めとろ・ふぁうじせん)が応える。
「お言葉ですが……」
 まるでフィクション小説の品評のようなメトロの物言いに、留美はついカッとなる。
「これらの出来事は、全て、私が実際に見て来たものを忠実に書き記した事実です、誇張の類は一切ありませんわ」
 自身の名誉にかけてそう断言できる、強いて言うなら、取材にかこつけて留美が縁に四六時中付きまとったことをカットしたくらい。
「ふぅん、だとしたら……面白いことになるかもね」
 メトロの目つきが変わる……それは良い儲け話を見つけた時の目だ。
「面白いこと、とは何ですの?」
 薫風を気に入っているだけに少し気になる留美だった。
「まぁ、見てなさい、悪いようにはならないわ、貴女にとっても、薫風さんにとっても、ね」
 その為には、このネタを出来る限り高く売りつけなければ……忙しくなりそうだ。