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リアクション
カスタム祭だぜ2
「フェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)だよ。実際には改修作業も必要になるわけだよね。ってことはこの飛空艇の整備が、今後の飛空艇のカスタマイズのモデルケースになることもあるわけだから、きっちり作業しないとダメだよね。マニュアル化できるといいかな?」
とフェルは子どもっぽい口調でそう言った。
「和泉 猛(いずみ・たける)だ。整備課の人間ってことで一応駆りだされてる。まあ、俺は本職は強化人間の研究であって整備士じゃないんだがな」
「まあ、これも整備課に籍をおいたものの宿命としてやってもらおうか」
猛の言葉にドクはニヤリと笑う。
「わかってますよ、ドク」
猛は不承不承といった感じで頷くと
「無茶な案があったら止めようと思ったが、それほど無茶なのは出ていないな。まあ、俺は実際の整備で出力系統のカスタムからやらせてもらうよ」
「松川 咲(まつかわ・さき)です。基本カスタム案といえば、とりあえず武装をつけるならミサイルと機関銃系じゃないかな? まあ、コームラントの大型ビームキャノン4門とかも……」
「だから、そー言うのが無茶な意見だっつうの」
咲の言葉に猛が割って入る。
「ああ、無茶そうだから胸の奥に隠しておこうと思ったのについ言葉に出てしまった」
「おいおい……」
どうやら咲自身も無茶だとわかっていたようである。
「とりあえず、私はペンキ塗りでもやってますよ……」
咲はそう言うと部屋の隅でのの字を書き始めた。
「あからさまにイジケんでいい!」
「はーい」
ということで咲は席に戻った。
「まあ、ミサイルと機関銃系はすでに意見にも出たが、問題ないだろうな。コームラントの大型ビームキャノンも武装スロットが開いていたら登載してもいいかもしれん」
猛はそうまとめてドクに続きを促す。
「非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)。近遠と呼んでください。まあ、ソニックブラスターを大量につけてド派手な電飾をつけるといいと思いますよ。ソニックブラスターそれぞれの音波を干渉させて、部分的に無音状態つまり、プラスの波とマイナスの波で相殺を作って、自身や周囲の味方への影響を抑えつつ、空間……平面的に言うなら面、飛空艇を中心とした範囲を攻撃したり、音波同士の波長を重ねる事で、強力な攻撃を為したりも出来る……という様な案を提出します。まあ、干渉位置や干渉対象の位置予測と、波長と空間の把握の演算が、とても大変そうですけれど」
「まあ、大変だからこそやりがいもあるさ。整備の人間としてはな。なあ、ドク?」
「うむ」
猛とドクが意気投合する。
「わしもそう思うぞ」
と、整備科の鳳 源太郎(おおとり・げんたろう)が賛同する。
「あたいは源さんとの愛の巣が欲しいな、えへえへ」
深澄 撫子(みすみ・なでしこ)がとぼけたことを言うと源太郎のげんこつ(加減してる)が飛んで
「何を馬鹿なことを言ってるんだ」
と怒られた。
「まあ、それはともかく艦の前後左右にソニックブラスターユニットとして4基登載して中和や増強を図るのはそう難しいことではないはずだな」
源太郎がそう言うとドクが頷く。
「まあ、計算と論理が違っているときは大抵間違っているのは論理の方ですから、論理にとらわれず行きましょう」
近遠がそういうと彼のパートナーたちが意見を提出し始めた。
「『イコン用まじかるステッキ』とか『ツァールの長き触腕』とかを飛空艇が使ったら面白そうとは思いますわ」
そう言ったのはユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)だが近遠は即座に
「無理」
と否定する。
「では、別に伸ばすのがパンチでなくても良いと思えば『無尽パンチ』の様なパタパタと展開しながら何かを打ち出すのもありだと思うのですわ」
「それは別の意味でやばそうな気がするのでダメ」
いろいろな意味で大変危険だ。
「意見が飛び道具ばかりで卑怯なのだよ。男性陣はもっと漢らしく『激突』とか『破岩突』の様な提案をするべきなのだよ」
今度はイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)。彼女も無茶な提案をする。
「だから無理だって。母艦が特攻してどうするんだよ」
近遠は額から冷や汗を流す。
「どうしても射撃武器に拘ると言うなら、せめて『ブレストクレイモア』の様な提案をするべきだと思うのだよ」
「おお、それはロマンだ!」
ルースが賛同の声を上げる。が……
「無理だ。ブレストクレイモアを発射する距離になったら敵の航空歩兵が飛空艇の中に入り込んでくるよ」
と猛が止める。
「そうか……」
「残念だ」
イグナとルースが肩をおとす。
「『嵐の儀式』とか『魔法の投げ矢』などは如何でございましょう?」
アルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)がそう言うと、ドクは
「魔法の投げ矢は……発射台を作ればあるいは可能かもしれんが……補充が面倒そうだからとりあえず後回しだな」
とつぶやいた。
「那由他は常々思っていたのだよ。いくら天学のイコンがみんな空を飛べるからといって、現在イコンの戦闘が空戦が主戦になっているからといって、未だ飛べないイコンに乗っている人達も多いのに整備基地が空飛んでいてどうするのだよ? それならせめて地上イコンも回収出来るように「トラクタービーム」を艦底に取り付けてやるべきなのだよ。コレなら墜落した機体も回収できるし、他に大きなお宝とか見つかった場合も回収に向かえて運用の幅が広がるであろう?」
阿頼耶 那由他(あらや・なゆた)がそう言うと、源太郎が
「飛空艇はあくまでイコンの運搬用だ。応急修理以外の各種整備は着陸してから行うのだ」
という。
「それに、トラクタービームは無理だな」
ドクがその後に続く。
「そうなのか。これは那由他が間違っていたのだよ。申し訳ないのだ」
「いや、いい」
那由他がいかにも申し訳なさそうにするので、ドクはかわいそうになってしまった。
「まあまあ、そんな時は麦茶でもどうぞ」
結がそう言って勧めた麦茶を那由他は飲んで落ち着く。
「僕は堂島 直樹(どうじま・なおき)。結の兄です。まあ、無茶な装備から現実的な装備まで色々と取り揃えてますよ。無茶な装備としては巨大ヴリトラ砲とか多連装ホーミングマジックカノンなどですかね」
「まあ、無茶だよねー」
結がツッコミを入れる。
「まあ、そうだな。現実的な例としては対空用ミサイルとバルカン砲。最初は対イコン、対ミサイル用として考えてたけど、対人用バルカンも必要じゃないかな?」
「妥当だな。対空ミサイルはすでに出たし対イコン用は20ミリレーザーバルカンを使えばいいとして、対人用バルカンも念の為に装備しておくべきか」
ドクはその言葉に頷く。
「あとはすでに出たけどイコン搭載のものより高性能なレーダーと、無理と言われたけど考えてたのがビーム兵器を応用したバリアーかな?」
「まあ、レーダーは可能だが、バリアは無理だろうな」
源太郎がそう答えて続きを促す。
「僕からはこれくらいかな? 対人用バルカンも装備しておけばいいってくらいか。イコンの頭部バルカンでいいと思う」
そう言ってバトンを手渡す。
「レリウス・アイゼンヴォルフ(れりうす・あいぜんう゛ぉるふ)です。今日はパートナーのハイラルのおまけできました。ということでハイラルよろしく」
「了解。ハイラル・ヘイル(はいらる・へいる)だぜ。回転式のレーザーとか付けてみたらいいんじゃねえか? 戦闘の時は出力を上げて戦闘レベルに、ステージの時は逆に出力を下げてライトにするみたいな」
「それは佐那さんの提案と似ていますね。いいんじゃないですか?」
とアポロンが言う。
「それならレーザーの色を換える機能を付けませんか? 戦闘時その色によって指示も出せるように。撤退とか攻撃とか優勢とか劣勢とかステージの演出としても色の変わるレーザーは便利だと思いますし」
レリウスがそう言う。
「それ採用です。だいじょうぶだよね、ドク?」
「うむ。問題ない」
フレイの言葉にドクがうなずく。
「で、わしからの意見だが、防御用に追加実態装甲、ビーム兵器防御用にエネルギーフィールド発生装置……ま、艦のエネルギーに余裕があればだが……ビームバリアと同じで無理そうだな。対人用にとの意見もあったが牽制用に艦周辺にバルカンを、それから緊急離脱用の補助ブースター。燃料系は独立している方が誘爆の危険が少しでも減るからという判断だ。それから、艦内の整備環境は確実に整えておきたいし、弾薬と燃料の倉庫も必須か。まあ、わしからの提案はこんなもんだ」
源太郎が一気に案を述べると、ドクは「まあ、エネルギーフィールド発生装置以外は可能だろうな」と答えた。
撫子はそれに続いて
「脱出ポッドはあったほうがいいと思うな。念の為に。あとはアンカーを実体射撃武器として投出できればいいと思うんだ〜。ちなみに試作はあたいも手伝うよ。源さんの妻として!」
「…………」
「ちょっと源さん、スルーしないでよ」
「妻じゃない!」
「ひどい!」
「まあ、内縁の妻というやつか?」
ドクがこめかみをポリポリとかきながらそう言うと、源太郎は
「それも違う」
と答えた。
「ひどい……でも負けない。あたい頑張る!」
撫子はそう言って整備で鍛えた力こぶを見せた。
「八王子 裕奈(はちおうじ・ゆうな)です。この飛空艇カスタムのついでに自分の小型飛空艇カスタムもしてみようかと……あと、クェイルをオーバーホールしてくれると助かります」
「おいおい、このスクラップ同然のクェイルをか……それはいくら何でもどうかと思うぞ。あ、バル・ボ・ルダラ(ばるぼ・るだら)だ」
「かまわんよ。片手間でこなしてやる」
ドクは裕奈の申し出に鷹揚にうなずいて胸を叩いてみせる。
「ありがとうございます!」
裕奈は感激してドクの手を握った。
「林 誠(はやし・まこと)です。私と森さんは機械やプログラムの開発を手伝いたいと考えています。
将来なにが必要になるかを考え、実行できる計画を立てます。
そして、必要な予算、人員、開発期間の確保を上長にお願いします。
手戻りを減らすため、要求分析などの上流工程に力を注ぎます。
派生開発は見積もりが甘くなりがちなため、日程は余裕をもたせます。
開発の方針と期待する成果を明確にし、文書で関係者に配ります。
文章だけでは複数の解釈ができるため、絵や図表、模型、動画などで誤解をなくします。
そのうえで、見落としやよりよい改善案など意見を求めます。
意欲と適性のある人を適材適所に配置し、失敗を重ねないため、朝礼や定例会議、メール、掲示板などで情報共有します」
「森 誠(もり・まこと)です。私もおおむね林さんと同じ考えです。
付け加えると、林さんは軍人の家系で育っており、また、物理や機械に強いため、専門用語を分かりやすく説明できます。
一方、私は人前に立ち、人の役に立つことに慣れています。
このように人間には向き不向きがあるため、人に任せるべきところは任せます。
ただし、働きすぎの人には休憩を進言し、拒否された場合は、上長に相談します。
もし、病欠や事故が起きても仕事を進められるよう、一つの仕事を複数の人で担当します。
また、天災に備え、開発に関するデータのバックアップをとります。
合意形成のため、率直な議論も行います。
あと、資材の運搬くらいには使えるかと、念のためイコンを持ってきています」
二人の誠がそう言うと、ドクは
「有能な助手が来てくれたようだ。実にありがたい。たのむぞ、ふたりとも」
と声をかける。
「実際、システムの上流工程に詳しい人間というのはそうそういないからの。二人が来てくれただけでもかなり助かるわい」
そう言ってドクは喜ぶ。
そして話し合いの結果、ガーネットトーピード、20ミリレーザーバルカン、対艦ミサイル、対空ミサイル、全方位バルカン、回転式レーザーが武器として。追加装甲、ソニックブラスター、スモーク発生装置、高性能レーダー、チャフ、フレア、ECM、ECCM、補助ブースターに脱出ポッドなどが補助システムとして搭載されることになった。
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