天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

長期休暇廃止の危機

リアクション公開中!

長期休暇廃止の危機

リアクション



終章『試合と勝負』

 一通りの視察を終えて帰ってきた校長室。
 涼司の元に火村 加夜(ひむら・かや)がやってきた。手には練習で作ったクッキーの袋。
「涼司くん、お疲れ様。これ練習で作ったんです。良かったら食べてください」
 軽く上気した頬が可愛らしい。
「ありがとう。頂くよ」
 受け取って一つ摘む涼司。
「美味しいですか?」
「うまい。加夜も練習していたのか?」
「ええ、一緒に頑張ってきました。皆さんもすごく頑張っていて、とても楽しかったです」
 料理は愛情が最高のスパイスだと、涼司のことを想いながら作ったクッキー。女子同士、恋愛話で盛り上がったりもした。
「加夜は心配するほど料理は下手じゃないだろ?」
「そうですけど……」
 少し俯いてもじもじと手をすり合わせ、小声で付け加える。
「休みが無くなったら、涼司くんとデート行く時間が減ってしまうので困ります」
「ん? 何だって?」
「え!? あ、あの、何でもありませんよ!?」
「急にどうした?」
「ただ、その……そう! 休暇はちゃんとあげられそうかなって思っただけです!」
 急にしどろもどろになった加夜。テンパった末に出てきたのは彼女なりの素直な質問だった。
 皆のことを思う優しさと、涼司のことを想う気持ち。
 それに気づいているのかいないのか、涼司は答える。
「皆、一生懸命に取り組んでくれていた。中にはふざけて遊んだりしている生徒もいたけれど、それを修正して導いてくれる生徒もいた。特に目立ったのは他校の生徒が手伝ってくれたことだ」
 教師役だけでなく、勉強をしに来る生徒まで居た。
「それに、頑張りすぎて体を壊されては元も子もない」
 図書室での騒動は、涼司の思考の範疇を超えていた。
「これだけ励んでくれたんだ、長期休暇は予定通り実施しよう」
 その言葉を聞いて柔らかく微笑む加夜。
 校長室を穏やかな空気が包む。


 その一方。
 下校時刻もとっくに過ぎ、誰もいなくなった図書室。
 コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)が学生に見えない巨漢を揺らして登場した。しかし、
「うむ? 誰もいないぞ?」
 他の生徒は下校済み。当たり前といえば当たり前なのだが、ハーティオンはラブ・リトル(らぶ・りとる)が「夜の図書館に残って勉強する!」と言っていたのでその手伝いに来たのだ。
 やっとラブも勉強の大切さに気付いてくれた、そう思って来てみたまでいいが、このありさまである。
「確かに、彼女は手伝いはいらないと言っていたが……」
 腕組みして考えるハーティオン。
「当の本人まで居ないとはどういうことだろうか?」
 答えは廊下から響いてきた。
「な、ナニィ!? こ、この問題用紙はー!!」
「貴方の行動を私が読めないとでも想ったの?」
 甲高い声と共に聞こえる冷静な声。同時に現れる二人の女性。人形みたいに小さいラブと、その襟首を掴んで引きずった高天原 鈿女(たかまがはら・うずめ)だった。
「ハーティオンは甘いわね。まだまだラブの行動を読めていない」
「いったい何があったのだ?」
「うー、筆記試験のテスト用紙をあらかじめゲットしておけば、あたしの休みは約束されたも同然だったのにー!」
 おしゃべりな性格が、自分の悪行を暴露していた。
「そんなことをしておったのか」
「それを未遂で私が捕まえたのよ。あらかじめ教員の人に話してね」鈿目は嘆息し、「さあ、さっさと教科書を開きなさい。私が無駄なく効率よくいい点数が取れるように教えてあげるから」
「私も協力しよう」
「うぅー、見逃してくれないかな……?」
 目に涙を溜め、頼み込む。
「無駄ね。私に泣き落としとか通用すると思っている?」
 つり目がさらにつり上がる。
「さっさと教科書を開きなさい」
 涼司の心配をよそに、新たな修羅場が誕生する。


 ■ ■ ■

 意欲と向上心、それは人生で大切な気持ち。
 皆さんも忘れずにいて下さいね。


担当マスターより

▼担当マスター

Airy

▼マスターコメント

 この度はシナリオ『長期休暇廃止の危機』にご参加いただき、誠にありがとうございます。
 はじめまして。担当マスターをさせていただきましたAiry(えありー)と申します。
 多くの素晴らしいアクションを頂き、光栄の至りです。
 反映できなかったアクションもあり、申し訳ございません。
 力不足故に見苦しい部分も多々あるかもしれませんが、心穏やかに読んでいただけると幸いです。

 試験といえば苦悩なもので、こうやってコメディにすれば皆様に楽しんでいただけるかなと思ったのですが、いかがでしたか?
 皆様のおかげで長期休暇を手にすることができました。
 年末年始の忙しい時期ですが、体調には気をつけて目一杯楽しみましょう!

 これからも皆様に楽しんで頂けるよう精進いたします。
 またのご参加お待ちしております!