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仮装の街と迷子の妖精

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仮装の街と迷子の妖精

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 第四章


『今年の優勝者は……』
 ドラムロールが鳴り響き、会場中が静まり返る。
「あ、静香せんせ〜。お疲れ様です」
 いつの間にか隣に来ていた静香に気付いてヴァーナーが挨拶をする。
「いつもながらこの瞬間はドキドキするね!」
 会場中が見守る中司会者が封を切って取り出した先の中に記された名前は……!

『エリエルル・フロシェットさん! おめでとう!』
「あらあら、まぁまぁ!」

「おねえちゃんだ!!!」
 ルイに肩車――というよりはほぼ頭の上に乗っている状態で広場に来ていたアルがステージを指差す。
「あっ、間違いない、彼女です!」
「あれがアルのお姉さん?!」
「ようやく元に戻れるよ〜!」
 各々が感想を呟きながらも今度こそ見失わないようにと急いでステージの近くへ向かうアルたち。
「ほらな、やっぱり美人だったじゃないか……エリエルルさんかぁ〜」
 そんな様子を見つめながら髪を整えなおしたエースにエオリアはいっそ雪だるま頭になってしまっていればよかったのに、と一瞬黒い考えをよぎらせたとかしないとか。


「皆さんアルがご迷惑おかけしました」
 ようやく雪だるまから解放された面々はエルからもいろいろと話を聞いていた。
 どうやらこの近くに用事があってアルと来ていたそうなのだが、仮装があまりにも楽しそうでついやってみたくなってしまったとのことだった。夢中になるあまりアルとはぐれてしまったものの、泣き虫を少しでも改善出来ないものかと影からこっそり見守りながら街を堪能していたのだという。
「まるで初めてのお使い、ですね」
「いやいや、やってることは大分ひどいよこれは」
 ある意味千尋の谷に突き落としているようなものだからな、とヴァーナー、ルイ、和輝がようやく元に戻った頭をタオルで拭きつつ会話をしている。

「そう言えばあっちの彼女たちは戻さなくていいの?」
 静香がちらりと目線をやれば、雪だるま頭のままうつむいているマリリンと、同じように雪だるま頭になっているジョヴァンニが部屋の隅っこに座っていた。
 コンテスト入賞を逃して落ち込むマリリンの側に、微笑みながらジョヴァンニが元気付けている。
「……実は、ジョヴァンニさんに頼まれたんです。少しだけこのままでいさせてくださいって」
「え? そうなの?!」
 静香は声を上げるが、日が沈むまでの魔法なのでもう少ししたらちゃんと解けますよと言われて胸を撫で下ろした。

「それでは、私たちもそろそろ帰りましょうか、アル」
「うん! おねえちゃん」
 雪だるま頭の魔法の時間はもうすぐ終わり。観光客の多くも帰り支度を始めている。
「静香さん、皆さん、今日はいろいろとありがとうございました」
「みんなありがとう! またあそぼうね!」
 エルが一礼してアルの手を引き歩き出す。室内に冷たい空気が流れたかと思えば、風とともに二人の姿は消えていた。


「いや、しかしまさかこんなところで雪だるま王国のプリンスに出会えるとは!」
 クロセル、スノーマンと合流したルイはようやく無事に王国まで帰ることが出来そうで心からほっとしていた。
「拙者たちも帰るところだし、構わないでござるよ。同じ王国の民が困っているのを見過ごすわけにもいかないでござるからなぁ」
 ルイとスノーマンの後ろ、クロセルがぶつぶつと何かを呟きながら二人の後を追っていた。
「今回妖精の能力が契約者と作用しあったのは…………ということはまた逆も然りということであって、もしかしたら……」
 どうやらクロセルは雪だるま頭の普及を諦めてはいないようで、時折メモを取り出しては何かを書き込んでいるようだった。