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【アラン漫遊記】魔法のランプはパラミタ製?

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【アラン漫遊記】魔法のランプはパラミタ製?

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第2幕 魔法のランプレンタル会社へようこそ


 洞窟の奥へと進んでいくアラン一行。
「あ、あれは……なんだ!?」
 アランだけじゃなく、みなが息を呑んだ。
 目の前に現れたのはなんと6階建てのビルだ。
「ここは……洞窟の中で合っているのだ?」
 アランが目をぱちくりさせる。
 ビルの入り口にある看板には汚い文字で『魔法のランプレンタル会社』と書かれていた。
「ここで間違いないようですね。入りましょうか」
 セバスチャンがそう促すとやっとみんな動き出した。
 ガラスの扉に近づくと、自動で扉が左右に開く。
 中は普通に観葉植物が飾ってあったり、受付があったりと普通の会社だ。
 その受付から出てきた安そうなスーツを着たインプが近寄ってくる。
「いらっしゃいませ〜。きひひ。魔法のランプをレンタルしにいらしゃったのですね?」
「そうだ」
 アランがきっぱりと言う。
「きひひ。そうですか、そうですか。どうぞこちらへ」
 インプは陰気な笑いを浮かべながら、受付の左側にあるつい立で仕切られたところへと案内してくれる。
 いくつかにわかれており、机といすがそれぞれに用意されている。
 どうやらここが契約をする場所のようだ。
 契約したい人がここでわりふられていく。
「んなっ!?」
 そして、ある部屋には先に会社に来ていた鬼院 尋人(きいん・ひろと)
は呼雪と天音の姿を認めると慌てて机の上のランプを窓から放り投げた。
 どうやら尋人は戦闘しているみんなを置いて、こちらに先に来ていたようだ。
「オレ何もしてないから! 絶対に何もしてないから!!」
 尋人は書きかけの契約書を丸めると、口の中に入れ飲み込んでしまった。
 さすがにちょっと涙目になっている。
「何も……? 今、窓から何か投げていなかったか?」
 呼雪はまじめに聞き返すが、ヘルはにやにやしている。
「ふ〜ん……何もしてない……ね」
 天音は窓の外をちらりと見る。
「ほんとーに何もしてないから! ランプのレンタルしようだなんてほんとに――」
 語るに落ちてる尋人を見て、ヘルはとうとうこらえられず声を出して笑ってしまっていた。
「いやぁ〜、かわいいっていいよねぇ〜」
 尋人は真っ赤になって、ビルを飛び出していったのだった。
 そして、アランたちは一番奥のもっとも広い場所へと案内された。


 こちらは契約をしにきた陽と、その陽を守りたいテディと、見学にきただけのユウだ。
 アランたちとは別のところに腰掛けている。
「この契約書にサインをするだけでいいんだよね?」
「はい、こちらにサインを――」
 陽はボールペンでサインをさっそくしようとするが、それをさえぎるようにユウがインプに食いつく。
「ところで、こちらのガーゴイルに襲われたんだけど、どういうことなん? 客を襲ってもいいと命令でもしとるんか? ん? ぴっちぴちのお肌とかわいい服がほこりまみれ……どう弁償してくれるんかいな?」
「ふひひ……あちらのガーゴイルは警備員のようなものでございます。あれに勝てないような者など契約をする資格すらないのでありますよ……ふひひ」
「だーかーらー。そうじゃなくてな? この服とお肌をどうしてくれるん? って言ってるの。わかる?」
「そうですか……別にこちらとしては無理に契約をしていただく必要はございません。そのことが原因で契約をしたくないというのであれば、帰っていただければと思います……ふひひ」
「だから、違うって。それに別に契約をする必要なんてオレにはないし? 契約なんてどうでも良いから――」
「ええっ!? ボクはするよっ! だって、願いごとがあるんだから! その……モテたい……って……ごにょごにょ」
 陽は最後のほうは恥ずかしそうにうつむいてしまった。
「つか、ずっと思ってたんだけど、どうしてこんな怪しさ満点、栄養ゼロ点みたいな会社を信じちゃうの!?」
 とうとう見かねたテディが口を挟む。
「テディのくせに生意気」
 そんなテディに対し、陽とユウは口をそろえてそう言う。
「理不尽だ……」
「で? 弁償――」
「それよりボクの契約――」
 ユウと陽が話しを元に戻した瞬間、隣からぼこぼこにやられたインプが飛んできて、その場にいたインプの後頭部を頭突き。
 インプは前のめりで机に突っ伏したのだった。


 少し時間は戻って、こちらアランたちの机。
「本当にみなさんで契約するのを見ているんですか……? きひひ……」
 インプはちょっと迷惑そうにアランの周りを見る。
 ビルに到着したほとんどの人がここにいるのだ、そりゃあ聞きたくもなるのだろう。
「うむ! みな余のために来てくれているのだ」
 アランは胸を張ってそう答える。
「そうですか……きひひ。ガーゴイルたちは一体なにを……ぶつぶつ……」
 インプがそうつぶやくとアランの周りの人たちの目が光る。
 もともと怪しいと思ってついてきてくれている人たちばかりだ。
 少しでもおかしなことがあれば皆の目が光るのも無理はない。
 椅子はそれほど用意されていないので、とりあえず契約するアランとカッチン 和子(かっちん・かずこ)だけが椅子に座り、あとはみな立ってアランたちを取り囲んでいる状態だ。
「そなたたちは契約しなくてよいのか?」
 アランが疑問に思ったことを口にする。
「叶えて欲しい願い事なんてないわ! 願いは自分の力で叶えるもの、でなければ満足できないもの」
 茜は力強くそう答える。
「私は魔法のランプというのがどういうものなのか、この目で確かめてみたくて同行したので」
 舞花もきっぱりと言い切る。
「そうなのか」
 アランが納得したところで、インプが口を開いた。
「それではこちらの契約書によく目を通し、こちらにサインをお願いします。きひひ」
 インプは机の上に2枚の契約書と高そうな重いボールペン、それから『魔法のランプ』を置いた。
 契約書は1枚はなにやら読めない文字のもの、もう1枚はアランや和子にも読める文字になっていた。
「こちらの契約書を翻訳したものがこちらになっております、きひひ。ですので、こちらの翻訳していない方にサインをお願いします。きひひ」
「その前に聞きたい。本当にこの『魔法のランプ』で何でも願いが叶うのだな?」
「そりゃあ、もう……きひひ」
 このインプの言葉にカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)とギルティの目が光る。
(怪しいのに……嘘感知は反応しない。嘘ではないけど、本当のことをすべて話しているわけじゃないって感じかな……?)
 カレンが目配せすると、ギルティも同じようなことを思っていたようで、まだ何も口は出さない。
「これで医学の勉強が身につくんだね……! この参考書をいくら覚えようと読み込んでも頭の中に入っていかなくて困ってたんだよね……ほんとに助かる」
 和子が心底ほっとしたような顔をする。
「そなたの願いはそれなのだな」
「うん、そうだよ!」
 和子がにっこりと笑う。
「そういえば、アランくんの願い事ってなあに?」
 遠野 歌菜(とおの・かな)がアランにそう質問をする。
「余は……余はどうしても会いたいヤツがいるのだ……」
「そっかぁ……会えるといいね」
「うむ!」
 歌菜の言葉に元気よくうなずくアランを月崎 羽純(つきざき・はすみ)が頭をぽふぽふする。
 和子とアランは会話が終わるとサインをしようとボールペンを握った。
「ちょっと待て」
 すぐにサインをしようとする2人を羽純が止める。
 するとインプの目が鋭く光る。
 羽純は契約書に手を置き、サイコメトリを発動させた。
 だが、そこからは特に情報は得られなかった。
 それをテレパシーでここにいる仲間に伝えると、みなインプをにらむ。
 インプはそこから何もできなかったらしいと覚るとまたにやにや笑いをしだした。
 しかし、そこで食い下がるわけもなく、今度はブルーズが転写式になっていないか、重要な記述が小さな文字で書かれていないかを確認する。
 だが、何も見つけることは出来ない。
「もうよいか?」
 アランと和子はとうとう契約書にサインをしてしまった。
「では、こちらがお約束のランプにございます、きひひ」
 アランはお金を20万払い、和子は【資産家】の舞花からお金を一時的に借りることとなった。
 お金を渡すとすぐに本物のランプが2つインプより手渡される。
「そのランプをこすり、魔人が出てきたら願い事を言ってください。どんな願い事も1つだけ叶えることができます、きひひ」
 アランと和子は顔を見合わせてから、同時にランプをこする。
 するとランプから煙が出てきて、その煙の中から赤い色の魔人が出てきた。
「余は……余はある者に会いたいのだ! そいつに会わせてくれ!」
「あたしはこの参考書を覚えさせて!」
「承知した。では、その願いをかなえるための対価をいただく」
 魔人の言葉に和子がきょとんとする。
「ん? あたしもうお金なら払ってるよ?」
「それは本当の対価をもらうまでの担保にすぎん。そう書いてあっただろう?」
 魔人はサインの入った契約書を持ってこっそりとこの場を出て行こうとするインプを指さした。
「もしかして、その対価っていうのは強い魂か?」
 乱世は思わず質問していた。
「その通りだ」
 魔人からその言葉を聞くと、乱世は納得したようだ。
「あのガーゴイルの連中もきっとその強い魂を選抜するための仕掛け……ってところだったんだろう?」
 乱世はインプをにらみつける。
「な、なんのことでございましょう? それにもう契約書はこちらの手に――」
「シャンバラ判例六法によれば『クーリングオフ』という制度があってだなァ? そうだよな?」
 乱世がそう付きつける。
「そうよ、クーリングオフが施行されるわ。それに契約者未成年につきこの契約……ノット マテリアライズド!(不成立)」
 ギルティが判官の心得でさらにおいうちをかける。
「くっ……ちゃんと邪魔者は排除しろと言ったのに! ガーゴイルどもめ! 役に立たん!!」
 インプが地団駄を踏む。
「良い子の夢をぶち壊す悪い大人の頭に、9ミリパラベラム弾をプレゼントしましょうか?」
 いつの間にかインプの背後に立っていたゆかりが、インプの後頭部に二丁のハンドガンを付きつける。
 ぶっそうなことをしているにも関わらず、ゆかりの顔はにこにこと笑っていて、それがさらに恐怖をあおる。
 頭を少し後ろにやり、目をいっぱいまで動かしてそれを確認してしまったインプはゴクリと喉を鳴らした。
「『子供の夢を奪い、その心を傷つけた罪は特に重い』ってどっかの機動刑事が言ってたわよ?」
 そして、マリエッタが動けないインプの手から契約書を奪うと、これまたふわりと花のような笑顔を浮かべながらハンドガンを取り出し、そして――ハンドガンで顎を殴り、インプをぶっ飛ばしてしまった。
 そのインプはそのまま隣の陽たちのつい立の中へと落ちて行ったのだった。
「みんな!! 出てくるキー!!」
 どこにいたのかインプたちがぞろぞろと出てきて、戦闘態勢に入ったのだった。
(……願い事しなくて良かった。でも……一目で良いから父ちゃんには会いたかったな……)
 泉 椿は少しだけ残念そうにしながら、戦闘に加わっていったのだった。