天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【ぷりかる】夜消えた世界

リアクション公開中!

【ぷりかる】夜消えた世界

リアクション

エピローグ 太陽のゴーレム

 太陽の塔、最上階。
 そこでは、最終制御装置を守護する太陽のゴーレムとの死闘が繰り広げられていた。

「太陽の塔だから何だか知らんが黄金色の塔とか悪趣味かつ無駄な物建ておってからに!」

 マグナ・ジ・アース(まぐな・じあーす)が太陽のゴーレムとガッチリ組み合う。

「……隙あり」

 その背後からは、リーシャ・メテオホルン(りーしゃ・めておほるん)が太陽のゴーレムに一撃を加えている。
 本来ならば、更に強かったであろう太陽のゴーレム。
 実際に、この最上階には太陽のゴーレムしか配備されてはいない。
 しかし、ここに来るまで破壊し続けた制御装置。
 それによって、太陽のゴーレムもまた弱体化しているようだった。
 眩しさ自体ももはや、耐えられないほどではない。

「本気でぶつかり合ってこそだからね……真っ向勝負でいくよ!」

 マグナが一瞬の隙で軽く吹き飛ばされたのを確認すると同時、フォローする形で緋柱 透乃(ひばしら・とうの)が太陽のゴーレムに等活地獄を叩き込む。
 それを正面から受け止めると、太陽のゴーレムは炎を纏う拳を透乃へと放つ。

「……ハハッ、おまえ、いいね! 本気の出し方、忘れそうだったんだ!」
「こういう魔法建造物にも興味はありますが……ひとまずは、サポートをしませんとね」

 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)のエンドレス・ナイトメアが太陽のゴーレムへと放たれて。

「まさに最後の敵に相応しいわね……あたし達もやるわよ、司!」

「ああ、ゴーレムごときに太陽などおこがましい名だが、太陽ならこっちにも似たようなのがいるな。頼むぞサクラコ」
「え、お前はどうするのよ」
「陽動のサポートなら任せておけ」

 シェヘラザードに蹴りを入れられながらも、白砂 司(しらすな・つかさ)サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)へと声をかける。
 目の前では、透乃と太陽のゴーレムが激しい応酬を繰り広げている。
 その姿を見ながら、司は思う。
 単純に眩しい建築物だというだけでも困りものだというのに、あたりの魔力を吸うなど迷惑極まりないな。夜があってこそ昼はあるんだ。第一こんな状態では寝不足になる。
 そう考えるだけで、怒りがこみあげてくる。

「任せてくださいっ。今日は太陽のゴーレムをぶん殴りに来たんですから!」

 一方、司に話を振られたサクラコはやる気満々だ。

「夜がなければ気持ちよく眠れないじゃないですか。ネコは昼も夜も寝るものです。しかも太陽だなんてナマ言ってんじゃないですよっ。太陽の化身・ネコ様を差し置いて太陽名乗るとはいい度胸だ!」
「言っておくがサクラコ、正直お前の方が眩しい。サングラスのひとつでも持ってくればよかった……」

 ノロケなのかどうか。
 そんな司の台詞を聞きながら、サクラコは自らの愛用の武器を取り出す。

「我が日輪、太陽の映し身たる私の日輪天虎爪で私とゴーレムどちらが眩しいのか、正面から勝負を挑みます! 光の刃で光の木偶の坊をぶち抜いてやりますともっ」

 言うが早いか、サクラコは太陽のゴーレムと透乃の戦いに乱入していく。
 そこに、体勢を立て直したマグナやリーシャも加わって。

「さあ、もっと私を楽しませてよ!」
「力負けする気はないぞ……!」
「私達、別に負けに来たわけじゃないですからねっ」

 太陽のゴーレムは、ついに膝をつき。
 そのまま、大量の光となって消えていく。

「あとは、この最終制御装置のみですか……」
「そうと決まれば、すぐに壊すわよ!」

 陽子の言葉にシェヘラザードは一歩前に進み出て。
 しかし、思い出したように振り向く。

「さあ、皆。どうしたの。あたしだけじゃなくて、皆で一斉にあれを壊すのよ?」

 そう、ここまで来た数多くの仲間達の努力。
 それがあったからこそ、シェヘラザードはこの太陽の塔の最上階に立っている。
 だからこそ、皆で最終制御装置を壊そうとシェヘラザードは言って。

 その提案通り、全員の一斉攻撃で最終制御装置もまた光へと還った。
 その途端、太陽の塔の壁から、天井から、床から。
 大量の光があふれ出してくる。

「な、何これ!」
「塔が崩壊を始めてるのよ! 予想より早い……オルヒトのヤツ、何か妙な仕掛け仕込んでやがったなあ!?」
「この勢いだと、すぐに崩壊しますね……」

 陽子も、流石に少し焦ったような口調で語る。
 すでに最上階の屋根は消え、未だ明るい空が見えている。

「ふっふっふ……塔にあるお宝は全て頂戴いたしましたよ。諸君の感動的な大激闘も楽しませていただきました!」

 そこに現れたのは、四代目 二十面相(よんだいめ・にじゅうめんそう)
 どうやら、この機をずっと伺っていたようだ。
 この光で作られた塔の中で、唯一の現実の物質……すなわち、魔力媒体を抱えているようだ。
 それは盗賊団が本来狙っていたものであり、かなり高価な魔法の宝物でもある。
 彼女の目的は盗賊退治と、このお宝のゲットであった。
 メンバーの中に探偵が混ざっていたのにはヒヤヒヤしたが、表に出ないことでここまでの成功はした。
 そして、今なら屋上となった最上階から逃げる事が出来る。

「それでは……また会おう諸君!」

 言うが早いか、二十面相は屋上から見事な軽業で下へ下へと向かっていく。
 その勢いと思いきりの良さは、二十面相の名に恥じないものだった。

「ど、どうするのよ! あたし達もあれやるの!?」

 しかし、その軽業は誰にでも出来るものではない。
 慌てるシェヘラザードの耳に、元気な言葉が飛び込んでくる。

「大丈夫、ルカ達に任せて!」

 そう、そこに居たのはルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の姿。
 ルカルカとダリルが用意したものは、小型飛空艇アルバトロス。
 そう、こんな事態を想定して小型飛空艇を用意していたものは、実は何人か居た。
 その全員が、屋上となったそこで脱出の準備を整えていた。

「さあ、行くぞアーシア、シェヘラザード! 他の全員もそれぞれの飛空艇に分乗して脱出を!」

 ダリルのテキパキとした指示に従って、それぞれの飛空艇への慌しい分乗が始まる。
 勿論定員オーバーの飛空艇も多くあったが、そこは仕方の無い事だ。
 地上までもてばよし、というのがそもそもの作戦である。

「地面に付くまでなら何とかなる! ……かな?」

 そんなルカルカの小粋なジョークも飛び出しつつ、一行は地上へ向かって降下していく。
 その間にも太陽の塔は光へと変わり続け……やがて、空は元の夜の色をとりもどしていく。

「装置に敵組織の手掛りになるような紋章や記憶装置があれば部分回収したかったんだが……」
「ああ、ネバーランドのこと? どうせ、どっかでまた会うと思うし。今回はいいんじゃないかな」
「正義と悪はめぐり合うものね。アーシア、分かってきたじゃないの!」
「はいはい。いいから、ひとまず百合女に帰りなさい。私はあっちから文句言われるのは御免だからね?」

 アーシアの言い様に、ダリルは人知れず苦笑する。
 これでいて、結構人情に厚いのが、このアーシアという人間である。

「ま、確かに。ひとまず悪の陰謀は打ち砕いたし。お前達にも出会えたし。今日はここらが潮時かしらね」
「ふふ、今後とも宜しくねシェヘラザード」

 ルカルカの差し出した手を、シェヘラザードは硬く握る。

「今日は皆に会えて良かったわ。今日の出会いはあたしにとって、大きな収穫だった」

 そして、地面に降りて。
 太陽の塔が消え、星空の戻った空の下で、シェヘラザードは優雅に一礼をする。

「お前達のおかげで、あたしの求める正義は執行されたわ」

 星空を見上げ、褐色の少女はやわらかい笑みを浮かべる。
 それは、今日初めて見せた飾らない笑み。

「そして、あたしの求めるものが此処に確かにある事も理解できた。この出会いに感謝を。そして、またの逢瀬を」

 その言葉の意味するものが何かは、シェヘラザード本人しか知らない。
 けれどきっと、彼女にとっては重要な意味を持つ何かなのだろう。
 百合園女学院のプリンセス・カルテット。
 呪術姫と呼ばれる褐色の少女、シェヘラザード・ラクシー。
 きっと彼女とは、また近いうちに会うことになるだろう。
 確信はない。
 ないが……この場の誰もが、そんな確信めいた予感を感じていたのだった。





担当マスターより

▼担当マスター

相景狭間

▼マスターコメント

皆さん、おつかれさまでした。
皆さんの行動の結果、シェヘラザードからの一定の信頼を得られたようです。

お楽しみ頂けたならば幸いです。
それではまた、次回の冒険でお会いしましょう。

▼マスター個別コメント