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魔列車を襲う鉄道強盗

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魔列車を襲う鉄道強盗

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第四章 狙撃、混乱

列車は、強盗団を寄せ付けていなかった。強盗側にはアジトからの応援も到着せず、戦況はこう着していた。
「なんで、こないんだあいつらは!」
強盗は叫んだ。
すると、なにか重機械が走ってくるような音がした。
「おっ、ついに来たか!」
しかし、それは強盗団ではなかった。アーマード レッド(あーまーど・れっど)である。
「目的地ニ到着シマシタ」
「また救援か!」
「ミッション、賊ノ殲滅、オヨビ列車ノ護衛開始」
そして、レッドは強盗達を補足した。
「標的ヲ 確認・・・殲滅シマス」
アサルトライフルが乱射された。強盗の固まっている所にはミサイルポッドが飛び、盗賊たちは蹴散らされた。
「えーい固まるな、散らばれ!」
その様子を遠くからコルセア・レキシントン(こるせあ・れきしんとん)が双眼鏡で見ていた。隣では、葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)が地面に伏せ、狙撃姿勢を取っていた。
「戦況はどうでありますか?」
「大型の機晶姫が飛び込んできたわ。そろそろチャンスがありそうね」
吹雪たちは、少し前にこの場に到着していたが、戦闘には参加せずチャンスをじっと待っていた。
「狙撃は、外したら警戒されるであります。チャンスは一度きりであります」
「リーダーを一発で仕留めなければいけないわね。見て、強盗たちがバラバラになったわ」
 吹雪とリーダーの間には障害物は何もなかった。まったく警戒もされていない。
「One shot, One Kill(一撃必殺)」
とつぶやいて、吹雪は引き金に指を掛けた。そして、銃の揺れと標的が最も落ち着いたところでそれを引いた。
「ぐわあっ!」
「おかしら!」
 強盗たちにはリーダーは突然倒れたように見えた。彼らには、何が起こったのか理解できるほどの冷静さは無かった。
「かしらがやられた。もうだめだ。逃げろ!」
強盗達は統率を失い、逃走を始めた。
「これで終わりであります」と吹雪が言った。
乗客たちの目にも、残党は残っているものの、全て終わったように見えた。


「お前ら、情けねえなあ」
「ボス!」
突如現れたのは、もう一人のリーダーだった。彼は前方の線路爆破していた別グループである。
彼は怪我したリーダーを馬の後ろに乗せた。
「めちゃくちゃ不利だな。おーい! 先生! 頼みますぜ」
すると、貨物車に居た乗客の中の一人が立ち上がった。辿楼院 刹那(てんろういん・せつな)だった。
そして、彼は暗器を取り出した。
「な、なにするつもりだ」乗客の一人が言った。
「わらわは強盗側の人間だ。全員大人しくしてもらおう」
刹那は乗客に紛れて、今まで潜んでいたのだった。
「何っ!一人で勝てると思っているのか」
「動くな、既に車内に毒虫の群れを放っているからのう。猛毒をもっているでのう。動けばそれらを一斉に乗客に噛ませるとしよう」
「いつの間にっ!」
「悪く思うなよ、こちらも仕事じゃからでのぉ」
「卑怯者っ!」
乗客の一人がそういうと、ひとつの高笑いが車内に響いた。
瀬山 裕輝(せやま・ひろき)が、車内の隅から出てきた。
「動くな、毒虫を放つてもいいのかのう」
「ええで」
と、裕輝は言った。
「乗客がどうなってもいいとはのう。まあわらわには関係のないことじゃのう」
刹那は毒虫に号令をかけた。しかし、一匹も出てこなかった。
「もう毒虫はおらへんで。オレが全部捕まえたからなー。全部窓から投げ捨ててやったで」
「なんじゃと!」
「金庫でずっと強盗さんがくるの待って隠れとったんやけどなー。強盗さんが金庫爆破したらな、それを追いかけて現金もろ……いや、ちゃうわ! 捕まえよーおもてたんやけどな。全然きーひんやん。その代わりに毒虫なんか出てきよったからな。捕まえてたんや」
「くっ!」
切り札を失った刹那は、軽業を使い出口まで素早く動き、走る列車から飛び降りた。
「いやーオレがいーひんかったら、危ないとこやったな。これは褒賞もんやな」
すると裕輝の目の前に、突然一匹の毒虫が落ちてきた。
「うおっ!」
彼は驚いて毒虫を払いのけた。毒虫は窓の外へ出ていった。
「い、今のは演出や!」
貨物車内は冷ややかな空気に包まれた。