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盗まれた魔導書を取り戻せ!

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第二章 迷子と無関係の人たち


 東 朱鷺(あずま・とき)は森の中で強化訓練を第六式・シュネーシュツルム(まーくぜくす・しゅねーしゅつるむ)に施していた。
 『毒虫の群れ』で虫を呼び寄せたり、『獣寄せの口笛』で動物を呼び寄せたりして、第六式と戦わせていたのだった。
「……なにやら、アンデッドが寄ってきましたね。何かあったのでしょうか?」
 そのとき、二人の前にゾンビとスケルトンの群れが木々の間から姿を現した。
 アンデッドたちは剣を構え、二人ににじり寄っていく。
「まぁ丁度良いです。第六式に特訓の成果を見せてもらいましょうか。
 ただ、ちょっと数が多いので多少、支援してあげましょうね」
 朱鷺は『バレンタインデーキス』、『羅刹眼』、『八卦術・参式【震】』『庇護者』で、第六式の能力を増強した。
「さぁ第六式、これを凌げば、特訓は完了ですよ」
「ハッハッハッハッハッハ」
 第六式は『白の剣』を振りかざして言った。
「オレが選ばれたキングオブスケルトンという事を証明する時がきたようネ。有象無象のアンデッドなんか、蹴散らしてやるネ」
 第六式は連れてきた『ガーゴイル』をアンデッドたちに向かわせた。
「さぁ、行けガーゴイル。適当にその辺のアンデッドを石化させるのネ。
 ……ヤー。ヤー。オレじゃない。オレじゃないネ。オレはキングオブスケルトン。間違えるとは、ナニゴトネ」

 神崎 荒神(かんざき・こうじん)はモンスターを相手に修行中、森の中を疾駆してきた三人の影と出くわした。
 大量の巨大蜘蛛たちを拳ひとつで片付けているところだったので、すぐ見失ってしまったが、三人の様子が不穏だったことはわかった。
 それから少し経った後、『スカーレット・グリント』に乗った優奈が荒神のところに突っ込んできた。
「あれ、犯人……とはちゃうなぁ。あの〜ここに怪しい人来ませんでした?」
「ああ、さっき怪しいのが三人、あっちのほうに行ったの見たぞ」
 荒神は先ほど見かけた影たちが去っていったほうを指した。
「三人……複数犯だったんやろか。ありがとうございます!」
 優奈は再び猛スピードで森の中に消えていった。
「なんだ犯罪者でも森に逃げ込んだのか? 他にも捜索してるやつがいたら教えてやるか」
 そのとき、今まで倒してきたモンスターたちより、ひときわ大きな影が目の前に現れた。
 それは体長十メートルはあろうかという超巨大蜘蛛だった。
「おっと……こいつらの親玉か? んじゃお前を倒して今日の鍛錬はおしまいにするか!」

「アンナさんもアリスちゃんも玲亜ちゃんも迷子になっちゃった〜!? 急いで捜すの!」
 及川 翠(おいかわ・みどり)ミリア・アンドレッティ(みりあ・あんどれってぃ)川村 詩亜(かわむら・しあ)と一緒に森の中で、いなくなった迷子たちを捜すことにした。
 翠は『ダークブレードドラゴン』に、ミリアは『聖邪龍ケイオスブレードドラゴン』に乗り、詩亜は翠のドラゴンに便乗し、森に向かった。
「放って置いたらさらに迷子になるのはわかってるし、急いで捜しにいかなきゃ……」
 詩亜は心配そうに言った。
 森の中ではミリアの『銃型HC』を使い、それぞれ迷子たちにつけた発信機の電波を感知し、その場所を目指して進んでいった。
 道中、ゴブリンの群れに出くわした。翠は『我は射す光の閃刃』を放ち、ミリアは『召喚獣:サンダーバード』で攻撃し、詩亜は『アルティマ・トゥーレ』を使ってゴブリンたちを倒していった。

 ――その頃、迷子たちは。
「あれっ……ここ、どこ? お姉ちゃ〜ん、翠ちゃ〜ん! えっと……わ、私もしかしなくても迷子〜!?」
「えっと……私たちさっきまでイルミンスールに居たよね? でもでも、ここって……森だよね? ……ようするに、今日もまた迷子〜!?
 れ、玲亜ちゃん、私から離れちゃダメだよっ!?」
 アリス・ウィリス(ありす・うぃりす)川村 玲亜(かわむら・れあ) と一緒に迷子になっていた。
 二人はあてもなく森の中を歩いた。すると、一体のゴブリンがいるのを見つけた。
 アリスは玲亜を守るようにして、『野性の蹂躙』を使い、ゴブリンを倒した。それからまた二人はじっとしていられず、あっちこっち移動し始めた。
「あっ、アンナさん!」
 やがて二人は見知った人を見つけて声をあげた。
「あら、二人とも……よかった無事で」
 それは二人と同じように迷子になっていたアンナ・プレンティス(あんな・ぷれんてぃす)だった。
 合流した三人は森の中、また移動を続けた。そこで、妙な人物と出会った。
「なんだ……なんでこんなところに人がいる」
 別に魔導書を盗み、犯人に罪をなすりつけようと企むローグ・キャスト(ろーぐ・きゃすと)は驚きの声をあげた。ローグは森の知恵で養った方向感覚を生かして、逃走ルートを何通りも考え誰も予測できないルートを選んで逃げてきたはずだったのだ。
「あの私たち、迷子なんです」
 アリスは相手の挙動に不審を感じて言った。
「迷子?」
 そのときローグは手元にあった盗んだ書を隠そうとした。アリスはそれを見逃さなかった。
「その本はなに?」
「いや、これは」
「そういえば、さっきイルミンスールで魔導書が盗まれたって騒いでたわ」
 アンナが思い出したように言った。
「犯人はあなたね!」
 早合点したアリスと玲亜とアンナは、一斉にローグに飛び掛った。不意を突かれたローグはアリスたちに書を奪われてしまった。
 それからアリスたちは一目散に、その場を去った。
 ……その数分後、迷子たちは捜しにきた翠とミリアと詩亜に保護されたのだった。