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水着とカレーと、大食いと。

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水着とカレーと、大食いと。

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7/それから

 プールサイドのテーブルの上には、それぞれ三種類のカレー。

 優勝者──ネージュたちのカレーが、幸祐たちの前に。
 幸祐たちの本格派カレー三種が、ネージュらの前に置かれている。

 ここは、島の高級ホテル。無論『蒼の月』の経営する──イベントの成功に気をよくした彼女によって今夜は皆に無料開放された宿。

「なるほどな。これは確かに、選び甲斐がある」

 それぞれを試食した幸祐が、ぽつりと言った。
 終盤まで猛追したけれど、届かなかった相手のカレー。食べてみたいと頼んで、こうして食べてみたが……確かに、どれも味の方向性が違って、面白い。

「いやいや、そっちもどれもコレ高級レストランかなにか? ってくらいおいしいよ? 正直びっくりした」

 ねえ。ネージュたち三人が、驚いている。

「なんでこっちが優勝できたのか、わかんないくらいだもん。こっちのほうがすごいじゃん」
「そんなことはないさ」

 優勝するにふさわしい味だと、幸祐にも、ローデリヒにも思えた。
 いい勝負ができたのだという満足感が、心にはあった。

「優勝、おめでとう」

 幸祐が、ローデリヒが握手の手を差し出す。相手は一瞬戸惑って、けれどしっかりと握り返してくる。

「けれど……次があればそのときは、負けませんよ」

 不敵な、ローデリヒの笑み。それを受けて、ネージュも笑って。

「オッケー。また、いい勝負しようね」

 競い合った好敵手同士は、月明かりの下、またいつかのための闘志を燃やすのだった。



「ねー、真人。ご飯食べに行こうよ。レストランでバイキングやってるし」
「まだ食べる気なんですか……」

 プールの中では、加夜に手を引かれ、カノンに支えられて彩夜が泳ぐ練習をしている。
 その様子をプールサイドに腰掛け、眺めて両脚で水をぱしゃぱしゃやっていて、不意にセルファがそんなことを言いだした。

「あれだけ昼間、カレー食べたじゃないですか」
「え。だってあれはイベントじゃない。夕飯、まだでしょ?」

 そこは別腹扱いなのか。もはやどこからつっこんでいいやら、真人は言葉に困る。
 またなにやら揉めあっていたフランシスとスプリングロンドが揉み合って、プールサイドから水中に落ちる。そのまま器用にも、カナディアン・メイプルリーフ……逆片エビ固め。かけられた側はがぼごぼ泡を水中に吐き出しながらプールの底を叩いている。

「バイキング? いいねー」

 行こう、行こう。美羽が同調し、フレンディスと連れ立って水から上がる。……一体彼女たちの胃袋はどうなっているのだろうか。



「ところで、カノンちゃん」
「なあに、お姉ちゃん」
 プールサイドのビーチチェアで、ローザマリアとゆかりが飲み物のグラスを軽く合わせたのが見えた。
 見上げた空は、星が満天に散りばめられている。

「辛いものは苦手なカノンちゃんでしたけど……今回の旅行はどうでした?」

 加夜は、彩夜の手を引いてやりながら、カノンに訊ねる。
 どうだったか、か。

「うん、そうですね」

 カノンはちょっと、考える。
 色々ハプニングもあったし、苦手な辛いカレーに当たってひどい目にあったこともあった。
 ……けれどまあ、そうだなあ。全体的には。

「楽しかった、んじゃないかな」
 少なくとも、総合してみればそう思える旅行であったし、イベントだったように思える自分がいた。
「そうですか、よかった」
 加夜の微笑。なんとなく見とれていると、うっかり彩夜の身体から手を離しそうになっていた。
 バランスを崩して沈みそうになって慌てる彼女に、ごめんごめんと謝り、改めて支えてやる。
「また皆で、これるといいですね」
 加夜の提案に、それもいいな、とカノンはおぼろげに感じていた。

 島の夜は、静かに更けていく。
 昼間の喧騒とは打って変わって、長閑に。とても、とても静かに。

(了)

担当マスターより

▼担当マスター

640

▼マスターコメント

ごきげんよう、ゲームマスターの640です。リアクション『水着とカレーと、大食いと。』はいかがだったでしょうか?
カレーの大食い、ならぬ大食らわせ大会ということで、皆さま多種多様、様々な趣向を凝らしたメニューを考えていただきまして、文字通り「どう料理しようかなあ」と悩むことしきりでございました、はい。結果としては本文のようなかたちになりましたが、楽しんでいただけると幸いです。
それでは、また。次のシナリオガイドで会えることを祈りつつ。