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 第 6 章


「エクスプレス・ザ・ワールド!!」
 魔法少女コスチュームに扮し、4人に分身したシリウスが闇騎士の四方に配置すると逃げようと動く方向へ的確に追い詰めその隙を見逃さずにノートが近距離から龍騎士のコピス【焔】で炎熱攻撃と同時に切り裂いていく。
「――駄目ですわ、決定的なダメージにはなりませんわね……剣とティアラがなくてはやはり難しいのかしら」
 切り裂いたところから元に戻っていく闇騎士に苛立ちを覚えるノートの背後からサビクが叫ぶ。

「光条エネルギーを解放させるよ! シリウスとノートは距離を取ってくれ! 『無量光』!」
 降り注ぐ光のエネルギーに貫かれた闇騎士は一度は霧のように霧散させるものの暫くすると形状を変えて復活してしまう。面倒とばかりにより濃い瘴気を放つと浄化の札で抑えた領域を超えて森へ広がり始めてしまった。
「浄化の札では直接あの悪霊は止められませんし…剣とティアラはまだなのでしょうか、お嬢様の愚痴を言いたい気持ちもわかります……!」
「それは申し訳なかった、ひとまずティアラの到着だ……待たせたね」
 望が振り返るとエースとリリア、ティアラをしっかり両手に持っている詩穂が立っていた。


「待ちくたびれたぜ! 早いとこそのティアラを使ってみてくれ!」
 分身したままのシリウスがティアラ到着に逸る気持ちを抑えられずに形状を変えた闇騎士を取り囲むと再度、体力削りとばかりに物理属性の魔法攻撃をくらわせると霧散していくが、ティアラを持った詩穂に気付いた闇騎士は彼女に襲いかかろうとした。

 ガキィン……!―――
 真っ直ぐに詩穂へ向かった闇騎士はその前に立ちはだかる貴仁の『フェンリルの爪』に弾かれる。
「あの悪霊にとっては、やっぱり都合の悪いものなんですね……詩穂さん、俺の後ろから出ないでティアラを使ってみてくれませんか? 攻撃は全部、俺が防ぐから」
「……は、はい!」

 貴仁に守られながら詩穂がティアラを掲げると、ティアラは淡く光り出し瘴気を徐々に浄化し始めていく。尚も詩穂を狙おうとする闇騎士の攻撃も力を失っていくのが目に見えてきた。
「弱り始めました……このまま封印出来るかもしれないよね、ちょっと試してみるよ。ティアラの力と詩穂の力……二つの神聖な力が悪霊に眠りをもたらしますように……バニッシュ!」
 ティアラから解き放たれたバニッシュが闇騎士へ直撃すると、それまで聞こえる事のなかった低い呻き声が森に響いた。そこへ息を切らして走ってくる複数の足音がすると懐に剣を持ったローズ、セレンフィリティとセレアナ、住人の避難を終えたザカコ、北都、昶が合流した。


◇   ◇   ◇

 盗賊としては駆け出しの集団だったのか、一人一人を相手には面倒くさかったとみられる朱鷺は一斉に魔法を仕掛けると苦も無くアジトが明け渡された。
「何だか弱い者苛めしたみたいじゃない、この辺の盗賊ってこんなに弱いのかしら」

 静かになったアジトを家探しすると、お金は勿論高価な金品がそこかしこから見つかり朱鷺はほくほく顔で懐に仕舞いこんでいく。
「そういえば、ここには剣とティアラは……なさそうですね。神器を持って颯爽と登場というシチュエーションは真面目に捜索してる人達に譲らなきゃいけないかしら」

 カツアゲ、もとい家探しで懐が温まり、当面の生活費の心配はせずに済む程度に満足した朱鷺は様子見くらい、とアジトを後にして森へ向かっていった。