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リアクション
イコン空戦アクションゲーム”OPERATION PEREGRINE”
イコンシミュレータを改造した、ミッションクリア型空戦アクションゲーム”OPERATION PEREGRINE”の筐体は全部で10台。コーナーの入り口には、大きなコピー看板が飾られている。
『突如現れた異次元からの侵略者による人類の滅亡の危機!!
パラミタ、地球の人類よ、結束しイコンを用いてこれに立ち向かえ!!』
スコアによっては賞品も(しかもマニアックな)出るとあって、十七夜 リオ(かなき・りお)はここは人気は出ると予測してはいた。
「一般のお客さんはイコンなんて見た事も触った事もない人が多いだろうし。
一時でもパイロット気分を味わって貰いたいな。
まあ、そうそう体験できることじゃないし、そこそこ人は来ると思うんだよね」
リオの言葉に、少々怯み気味のフェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)が不安げな面持ちを隠せない。リオは優しく声をかける。
「フェルは接客苦手そうだし、機械の調整と、あと景品を準備してね」
「……うん、わかった」
素直にうなずいたフェルクレールトは、まずは景品を受け取りに展示コーナーから出て行った。展示手伝いの高峯 秋(たかみね・しゅう)がそばにあったチラシを手にして声をかけてきた。
「ローラーブレードつけてるし、賢狼も一緒だから俺たちはチラシ配りをしてこようか?」
「わあ、それはありがたいな、頼んでもいい?」
リオが言う。秋のパートナーのエルノ・リンドホルム(えるの・りんどほるむ)は未来パビリオンの女性用コンパニオン衣装を身に着けていたが、結構セクシーなためちょっと恥ずかしそうにしている。
「コンパニオンの格好になってみたけど、これ……ちょっと恥ずかしいよね」
荒井 雅香(あらい・もとか)がエルノの肩をぽんと叩いて言った。
「慣れよ、慣れ。自信持って!
ここの準備期間は忙しくて手伝えなかったけど、本番は私も手伝うわ。
来客者の応対はお姉さんに任せて!」
雅香のパートナーでひげ面の強持てだが、気のいいイワン・ドラグノーフ(いわん・どらぐのーふ)がしみじみと言う。
「エリュシオンとも和平を結べたが、今後どうなるか分かんねぇ。少しでも長くこの平和が続くといいんだがな。
ま、今はそんな事は忘れて万博を思う存分に楽しもうぜ。
オレは賑やかなのは大好きだから、こういうイベント事は張り切っちまうぜ!」
筐体のゲーム画面は、設置されたディスプレイに映し出され、遊ばないまでもゲーム画面を見て楽しむこともできるようになっている。イワンはその場所への誘導と、プレイヤーの列整理を担当することとなった。
一方、チラシを持った秋とエルノは、未来パビリオン前の広場に出た。秋は賢狼にチラシ入りバスケットを預け、ローラーブレードでちょっとしたパフォーマンスをしてみせ、お客の目を惹きつけて声をかける。
「一回体験したらとっても楽しくてはまれると思うんだ! よかったら来てみてね!」
「どうぞ、よろしかったらいらしてくださいね。ゲームの操作方法がわからない方にはご説明もいたします」
エルノはなんとなくやはり衣装が気恥ずかしく、ちょっともじもじしている。そのさまがなおのこと色っぽいことに気づいていないのは本人だけである。そんな2人はかなり目立った。
秋とエルノの宣伝効果もばっちりとあって、かなりの盛況となった。10台の筐体はフル稼働である。集まった人を、イワンは元気良く声をかけつつ、手際よく見物とゲームの順番待ちのエリアに分けてゆく。
「こっちはゲーム画面を見学のコーナーだ。リオの実況中継つきだからよ、楽しめると思うぜ。
こっちは遊びたいお人が並んでくれよ。人気があるもんでちっとばかし混んでるが、待っててくれな。
ん? オレ? オレはゲームとか苦手でよぉ。おっちゃんは見てるだけだ、がはは」
フィッツ・ビンゲン(ふぃっつ・びんげん)は獣人のパートナー、ナークト・キネレウス(なーくと・きねれうす)を連れて、見学にやってきていた。未来パビリオンで紹介されている科学技術のあれこれは、自分たちの住んでいた地域ではまったく見慣れないものばかりで、圧倒され続けだ。
「イコンシミュレータを改造した空戦ゲーム???
何がなんだかさっぱりわからないけど、すごいよこれは!」
ナークトもこくこくとうなずいて、目を丸くしている。
「これがハイテクってやつなんだねぇ!」
雅香が、そんな2人に優しく声をかける。
「イコンって普通の方にはまだまだ分からない物ってイメージでしょう?
まずはゲームからイコンに触れてもらうのもいいかもしれないというわけで、こういう展示を作ってみたのよ」
フィッツはほーっとため息をついた。
「すっごいなぁ。ヨーロッパの片田舎に住んでたから、ハイテクはさっぱりです」
「だったら、遊んでみる前にどんな感じのものか見て行かれるのもいいかも?」
「せっかくきたんだから、オラはなんでも見てみたいな」
ナークトは大乗り気だ。
「それじゃ、ご説明させていただくわね……」
リオがギャラリーコーナーで、熱戦となっている対戦者2人の空中戦の実況中継をしている。
「隙をついての攻撃だあっ! おおっと、間一髪で避けたっ!
見事な操縦だねっ! おっと、今度は……」
フェルクレールトは、ゲームを終えて興奮気味の参加者たちに、チラシ配りを終えて戻った秋とエルノとともに、点数に応じた景品や、参加賞を手渡している。
見ているほうも、参加した方も、なかなか楽しい展示となっているようだ。
最新鋭の医療と現代医学と魔法医学の今後
ここは医療関係者や医療関係の学生などが多く訪れる一角となっていた。パラミタ、地球双方から提供された最新の医療技術に関する各種資料の展示がなされ、現代医学と魔法医学についての展望についても紹介されている。また、各医療品メーカーからも最新医療機器や薬品等が提供されており、そちらの営業担当と医療従事者のやり取りする姿も散見された。シミュレータを使用しての医師体験など、一般客向けのコーナーもある。
ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)はこれら全てをほぼ今回一人で手配したのだった。秘伝 『闘神の書』(ひでん・とうじんのしょ)は医療関連資料を見て頭痛を起こし、今回は不参加だったのだ。
新任の空京大学学長である嵐を起こすもの ティフォン(あらしをおこすもの・てぃふぉん)も、興味を持ってこの展示にやってきていた。パビリオンの広い空間でも、彼の巨体では気をつけて動かなくてはいけない。ほぼ首と頭部だけを動かして、展示品を見ている。
「ティフォン学長、ようこそ、医療展示場へ!
ここは最新鋭の医療や今後医療はどのように発展していくか。
そして最新鋭の医療機器の説明、展示をやってるぜ」
「ふむふむ、なかなかのものだな」
ティフォンは目を細め頷いた。
「こういう真面目な展示もいいかと思ってな。
そうだ、いつかでいいんで今度ドラゴンの医療を教えてくれ! すっげぇ興味あるんだ」
「ほう」
エールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)は、好奇心いっぱいの様子で展示をいそいそと見て回っていた。アルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)は医療従事者として一緒にやってきていたが、どちらかというと最新鋭技術などよりは、コンパニオン嬢のほうにやや関心が強いようだ。
「アルフ、ホントすごいよね。
最新医療機器はこんな時でないと間近で見られないからね」
「まぁ、そうだな。
自分が病院へ担ぎ込まれたりしない限り普通は身近に体験できないのは確かだ」
診察用医療機器の説明をする、セクシーなコンパニオン嬢に、アルフは記念撮影を申し込んだ。快諾したコンパニンと撮影を済ませると、エールヴァントに向かって言う。
「昔ながらの触診技術も見直したほうがいいんだぜ? メカメカしいのも結構かもしれんが……
機器がない場合、体に直接触ることで、体調不良の原因に迫れるんだ。すごいと思わないか?」
「まあ、ね」
日々女性をくどくことにも熱意を持つアルフに、エールヴァントはやや懐疑的な目線を向ける。
「いや、熟練した医師は、表面から腹に触れてだな、腸の癒着やなんかまでわかるんだぞ?
断じてセクハラでは無い!!」
蒼大医学部で医師を目指し、勉学に励むキリエ・エレイソン(きりえ・えれいそん)は、アルフの言葉に興味を持った様子だった。いずれキリエの手伝いもしたいと考えているセラータ・エルシディオン(せらーた・えるしでぃおん)も一緒にやってきている。
「手で触れるだけで、ですか?
それなら高価な医療機器がなくても、ある程度のことはできるということですよね」
「そうとも。たいした技術だろ?」
「ええ。私は貧しさゆえ治療が受けられず、命を落すというのが一番悲しいと思っているんです。
医術の知識などを惜しげなく沢山の人が気軽に見られる場所で公開するというのは素晴らしいことですよね!」
キリエが目を輝かせて、周囲の展示を指し示し、エールヴァントが熱心に頷く。
「パラミタ特有の魔法医学も、機器がない場所でも役立ちそうですよね。
民間療養に使われている薬草も医薬が手に入らない緊急時に役立つし、新薬開発の可能性もあるだろうし」
セラータも微笑を浮かべて言う。
「なかなか分野が違うと交流の機会もありませんから、色んな人のお話を聞けるのは素晴らしいですね。
あ、公開講座もあちらであるようですよ」
ラルクがいちだんと広くなったスペースで、講座の内容と、公演する医師の紹介を始めている。
「これはぜひ聞かなくては」
エールヴァントとキリエ、セラータはレコーダーを手にいそいそとそちらへ向かう。アルフはちょっと名残惜しげコンパニオンを一瞥すると、ため息をついて3人のあとを追った。
「ええ、それではまず民間療法に使用される薬草と、その効力、副作用についてのお話をしたいと思います」
小柄な男性が壇上に立ち、植物の写真などの資料を背後の大型ディスプレイに表示して、解説を始めた。医療に関心を持つものが集まって、熱心に聞き入っている。
ティフォン学長は最後尾のスペースになるべく小さくうずくまり、やはり熱心に聞き入っているようだった。
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