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リアクション
「シャンバラ国軍館」
緊張の面持ちで先ほどから未来パビリオンの前で待機していたルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、少数の警護の人間とともにパビリオンの前に姿を現した金 鋭峰(じん・るいふぉん)の姿を認めた。
姿勢を正し、パートナーであり、今日の任務をともに遂行することになっているダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)にそっと言った。
「いい? 私たちは今日は団長の国軍館を始め、未来パビリオン各所を案内ということになっているわ。
でも、実際は案内というだけではなく、団長達教導幹部の護衛任務もかねているの。
ろくりんでの一件もあるし、油断怠りなく、ね」
「了解していますとも!」
近寄ってきた金らに、ルカルカとダリルが直立不動の姿勢をとって敬礼をする。
「ルカルカ・ルーであります。本日未来パビリオンのご案内をさせていただきます」
「ダリル・ガイザックであります。ご案内と、展示の紹介をさせていただきます」
「……ご苦労」
警備をかねての張り付き任務、ご苦労。その最後の部分だけを発し、皮肉っぽい笑みを浮かべた金はルカルカとダリルに案内され、入り口近くにに金の立像を配したシャンバラ国軍館へと導かれた。
クエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)とサイアス・アマルナート(さいあす・あまるなーと)は、未来パビリオンの公式コンパニオンの制服に身を包んで背筋を伸ばし、笑顔で一行を出迎えた。異口同音に歓迎の言葉を口にする。
「ようこそいらっしゃいました。シャンバラ国軍館はこちらです」
「ご苦労様。ルカルカ・ルー、ダリル・ガイザックの2名、本日団長のご案内を務めさせていただきます」
ルカルカとダリルがクエスティーナらに声をかける。答礼し、クエスティーナとサイアスが応える。
「シャンバラ国軍館案内担当、クエスティーナ・アリアです」
「サイアス・アマルナートです」
サイアスがが扉を開け、クエスティーナが静かに下がって、一行を通す。金がクエスティーナの制服をを見やった。思わず顔を赤らめながら、露出の高い衣装の胸元を反射的に押さえるクエスティーナ。
「公式コンパニオン制服か」
「は、はい」
金は一瞬かすかな笑みを浮かべたようだが、気のせいだったのかもしれない。そのまま扉を通過する一行。金に声をかけられた緊張と嬉しさで、一瞬意識が保てなくなったクエスティーナがよろめいた。すかさずサイアスがその体を背後から周囲にわからないよう支え、鋭く囁く。
「しっかりしろ」
「あ、はい」
サイアスがクエスティーナを案内としてその場に残し、すぐに金とルカルカらのあとを追い、声をかける。
「国軍の名を冠するに相応しい大規模展示です。どうぞ、こちらへ」
「こちらはイコンシミュレーターです」
ルカルカの言葉に、ダリルがシミュレーターのデモンストレーションをしてみせる。
「まあ、ゲームセンターみたいなもんです。体験してごらんになりますか?」
一渡りの実演を終え、メットを軽く掲げて声をかけるダリルに金が応じる。
「そうだな……体験しておくのも悪くない」
(まだまだ、最初の展示……団長のご案内と警護を、きちんと全うしなければね)
ルカルカはダリルとサイアスが丁寧に説明を行うさまを見やりながら、ひそかに気合を入れるのだった。
金団長を、ルカルカとダリルが別の展示へと案内して行き、シャンバラ国軍館には一般客が入り始めた。クエスティーナらと交代したウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)とジュノ・シェンノート(じゅの・しぇんのーと)は笑顔で出迎える。
「いらっしゃい! 未来のパビリオンへ!
そして『シャンバラ国軍館』へようこそ!」
そこへ子供達が数人走ってきて、ウォーレンの制服を目を輝かせて見つめ、歓声を上げる。
「あ、シャンバラ国軍の旧制服だー!」
「おー、よく知ってるね」
「デザインのほかに、なにが違うの?」
「それはだな、まず動きやすさ、それに素材をね……」
熱心に聞き入る子供たち相手に、ウォーレンがわかりやすく新旧の制服の違いなどを説明してゆく。質疑応答を微笑みながら見ていたジュノに、声をかけるものがいた。
「なんだかイコンとかの、展示が見られると聞いたのでありますが」
はるか前のご先祖の英霊である大洞 藤右衛門(おおほら・とうえもん)をつれてやってきていた大洞 剛太郎(おおほら・ごうたろう)が、広い館内を見回して尋ねる。ジュノがすぐに笑顔で対応する。
「ああ、それでしたら『イコン運用の未来』の方へどうぞ。こちらです」
藤右衛門の歩調に合わせ、先導してゆく。担当者に話を通し、ジュノは二人を任せて、再び案内業務に戻った。
金元 ななな(かねもと・ななな)がちょうど国軍館のイコン運用コーナーを通りかかった。未来パビリオンの女性用制服は、深いブイ字の切れ込みのある、肩から胸だけを覆う銀色のぴったりした生地に、お尻を最低限覆う感じの銀色ホットパンツタイプのデザインだ。おのおのロボットを思わせる金属製の装飾が付けられたコスチュームである。
藤右衛門は剛太郎がイコン説明に見入っているのを確認し、さりげなくなななを見る。
(むむ。あれが金元 なななか……。 お尻のラインがまたぴったりじゃな……むふふ。
ちょっとこう、かがむと……ぱんちーが見えそうな……)
視野の隅に動きを感じ、藤右衛門は即座に視線をそらし、展示説明を見入っているふりをする。
一方の剛太郎は、藤右衛門が展示説明を読み始めた様子なのに気づき、パンフレットを眺めるふりをしながらなななを見つめた。
(む、胸元がなかなか……。谷間もくっきりと。
ちょっと上体をかがめたら、谷間がまたいい感じに強調されて……)
一体全体この二人、なにを見に来ているのやら。
なななが剛太郎らに背を向け、子供達の質問攻めから解放されたウォーレンに試着コーナーの場所を尋ねた。
「制服試着コーナーの方へ行きたいんだけど、どっち?」
「ああ、それでしたらこちらです。ご案内しますよ、どうぞ」
それを聞きつけた剛太郎は、はるかにさかのぼる先祖に声をかけた。
「超じいちゃん、機械見ても良くわからないでありましょう?
何でも制服の試着ができるコーナーがあるそうでありますよ」
「おお、そうか。それも面白そうじゃな」
なななに見えない糸ででもくっついているかのように、二人は彼女のあとを追って歩き出した。
未来パビリオン見学にやってきたエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)とメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)は、その規模に目を丸くしていた。
「少しお手伝いしたし、どんな感じに仕上がってるか気になるから、シャンバラ国軍館へ行ってみよう」
エースが言い、メシエも頷いた。
「ここでしか手に入らない限定品とか幾つもありそうな予感。楽しみだな」
入り口のジュノに声をかける。
「見学に来たんだ。手伝ったしね、お客さんの入りが気になるから見に来ちゃったよ」
「それはそれは。まあ、楽しんでいってくださいよ」
「制服体験コーナーとか装備体験コーナーとかは、あるんだろう?」
メシエが言うと、ウォーレンがにやっと笑った。
「もちろん、こっちだ」
一方なななを案内して見学の人々の邪魔にならないよう、巧みに間を縫って案内してゆくジュノ。試着コーナーではシャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)が、てぐすね引いて(?)待ち構えていた。
「女の子の制服コスプレ!! こりゃお世話するっきゃないでしょう。
……あ、いや、もちろん男も歓迎だぜ」
「どうも動機がな……」
相棒のユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)が、疑わしげなまなざしてシャウラを見る。そこへウォーレンが声をかける。
「なななさんが制服の見学をなさりたいそうだ。 頼んだよ」
「いやー、どうもいらっしゃい、ささどうぞこちらへ。
新旧制服だけじゃなく、野戦で着る服、式典で着る服、演奏で着る服等、色々あるんだ」
「ふーん。 ……宇宙刑事の制服より可愛くなーい」
「いやー、しかし未来パビ男制服がヘソ出しでなくて本当に良かった。
ヘソ出しは女の子に限るよなー。 ……ななな少尉ちゃん ……おなかをつんつん」
「なにするんですかー」
「やめろアホ!!!」
ユーシスの拳骨ががシャウラの脳天を捉えた。
「……おー、いってえ。 ……ちょっとふざけてみただけじゃないか」
口を開けて、その様子を半ば呆然と、半ば魅入られたように見ていた剛太郎と藤右衛門を見やり、シャウラがこぼす。
「ほら〜、そちらのお客さんだって、なななちゃんのセクシーな衣装に見とれているじゃないか」
顔を見合わせ、めちゃくちゃ決まり悪げに退散する剛太郎と藤右衛門であった。シャウラがいっかな気にせずなななに声をかける。
「えーと、試着するんなら記念撮影もできるからシャッター押すぞ!
あ、申し込み書はこれね。 ……ついでに電話番号をひとつここに書いて……」
「……あのな、シャウラ。 ……いい加減にしろ」
鉄拳制裁が加えられ、そのあと何もなかったかのように通常通りの試着と記念撮影が、ユーシスによってきっちりと遂行されたのは言うまでもない。
瑞江 響(みずえ・ひびき)とアイザック・スコット(あいざっく・すこっと)もまた、国軍館展示の手伝いをした関係から、完成した展示がどんなものかと、見学にやってきていた。
「いや〜、作戦と戦術の紹介は良かったな。すごく勉強になったよ」
響が言って、メモを取っていた手帳を閉じた。アイザックはふーっとため息をついた。
「響も生真面目だからな」
「あ、そうそう、軍用携帯食の展示もあって、試食も出来るそうだ。
是非味見してみたいな。アイザックも行くだろう?」
「そうだな。なかなか面白そうだ」
五十嵐 理沙(いがらし・りさ)は国軍館パンフレットを見て、セレスティア・エンジュ(せれすてぃあ・えんじゅ)に言った。
「ねえねえ、『軍用携帯食の展示、試食できます』ですって!
メイド喫茶のオーナーとしては、飲食関係のチェックは必須だわ!」
「そうね。わたくしも興味ありますもの、ご一緒しますわ」
セレスティアはおっとりと微笑んだ。赤毛でやや気性の激しい理沙と対照的なのはそのアイスブルーの髪の色だけではない。
「ナポレオンだって言ってるわよ。『軍隊は胃袋で動く』と!
そこから缶詰が生まれたのよ」
「まあ、そうだったんですの」
頷きながらセレスティアはひっそりと思う。
(まあ、一生懸命言い訳をして……わくわくしている理沙には和みますわ)
試食コーナーはなかなかの盛況ぶりだった。2人はいくつかの試食用レーションを受け取り、休憩と試食ができるように設置された簡素なテーブル席に、空きがないか探してみることにした。響とアイザックのテーブルは、空いた椅子がまだ3つほど残っていた。
「こちら、ご一緒させていただいてもよろしいでしょうかしら?」
セレスティアが尋ねると、響が気持ちよく応じた。
「ああ、もちろん。どうぞどうぞ」
理沙は早速レトルトのカレーと、ライスのセットを試してみている。
「レトルトとは思えないおいしさだわ」
響も試食してみていたが、理沙の言葉に頷いた。
「うん、思ったより美味しいもので驚いたな。 な、アイザック」
「……いや、俺はお前の血の方が美味しいがな」
ボソッと言うアイザック。理沙は二人にチラッと目をやり、いたずらっぽく目を輝かせる。響は赤くなった。いや、赤くなるシチュエーションでもないのに赤くなった自分が腹立たしい。決まり悪さに、響はアイザックの後頭部をどつく。
「なに言い出すんだよ」
理沙は知らん顔でカレーを半分セレスティアに分けながら言った。
「レトルトなのに、このゴミの少なさは素晴らしいわね。
うーん、エコだわ!」
「お味もなかなか良いですわね。
テイクアウトメニューで、こういった工夫をすれば、お客さんにも喜ばれるかもしれませんね」
試食を堪能して、理沙とセレスティアは立ち上がった。
「さて、と、私達はお土産コーナーへ行ってみるわ。
相席どうもありがとう。ご・ち・そ・う・さ・ま」
響に向かって鮮やかなウインクを一つ残し、理沙は席を後にした。
「お土産もあれこれ買いたいですわね」
お土産コーナーもなかなかの人出だ。国軍館限定のみやげ物や、認識票を模したアクセサリー、レーションなど、ここでしか手に入らないものがいっぱいである。
エースはメシエを付き合わせて、真剣にみやげ物を見ている。
「なになに?? タイムちゃん国軍制服ストラップ!?
お、これは通な一品だぞ! 金団長の一喝で起こされる目覚まし時計!」
メシエは楽しそうなエースに、隣のブースを指し示した。
「こっちにはレーション同様、保存性のいい非常食兼用のお土産菓子もあるよ。
俺は認識票のペンダントを買うかな」
「おおお、それはぜひ買わねば!」
こういった催しは、やはりオリジナルのお土産探しも楽しいものである。
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