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リアクション
第10章 闘いの果てに
さて。
戯れる女の子達とは随分と距離のある場所、バーベキュー会場の端に当たる場所には、子供たちがぱらぱらと集まっていた。
「どり……どりどり〜〜☆」
夢見心地な表情をした神楽月 九十九(かぐらづき・つくも)が綿菓子屋の屋台に入り込んで、綿菓子機を動かしている。
頭の中では、ドリルを回している状態を思い描いていた。
手をくるくると回しながら、九十九はぼーっと歌を歌う。
「くるくるくるくるどりどりどりどり〜☆ ひゃっは〜☆」
「……あのおねぇちゃん、変だねぇ? 王ちゃんは? わたがし配るから来いって言ってたんだけど」
子供がピエロ姿のナガン ウェルロッド(ながん・うぇるろっど)に尋ねる。
「外せない用事があってなァ、少し遅れるそうだ。それまでここでナガンやおねぇちゃん達と一緒に待ってようなァ」
ナガンはにこにこ笑みを浮かべながら、子供達に綿菓子を配っていく。
ガツン、ドスン
時々、鈍い音が響く。
「ワンちゃん、ワンちゃん……」
晃月 蒼(あきつき・あお)は、戻ってこない王を切実に待ち続けていた……。
綿菓子屋の後方で、漢達の殴り合いはまだ続いていた。
「根性あるじゃねぇか!」
ドスッ
五条 武(ごじょう・たける)の拳が王の腹に決まる。
「そっちこそなァ!」
ゴスッ
王の肘鉄が武の肩を打った。
互いに荒い呼吸を繰り返し、睨みつけていたが――。
風が吹き抜けて、互いに髪がふわりとゆれた途端、互いの顔に笑みが浮かんだ。
同時に右手を振り上げて、がしっと組む。
「はは……しょうがねぇな、テメェは」
「てめぇこそな……」
笑いあい、男達は戦いを経て、今、深い友情で結ばれようとしていた……その時。
「終わったの。そう終わったのね。ようやくあたしの番ね」
むくりと立ち上がったのはメニエス・レイン(めにえす・れいん)だ。
「やっちゃってください。メニエス女帝!」
「我等、帝世羅・蛮牙亜怒の代表として!」
ガヤやモブ達がいつの間にかメニエスに靡いている。
「空京大学とかどーでもいいんだけど」
にこにこっと妖しくメニエスは微笑む。
「なんかムカつくから貴方を肉塊にして今日浜辺で楽しんでる人たちにプレゼントしてあげようと思ってね!」
途端、メニエスはグール、ゾンビ、レイスをけしかけていく。
「そうはさせるか!」
武がぼろぼろの体で、友、王の前に立つ。
「いや、これは俺の戦いだッ!」
王はいつもより100倍凛々しい、潰れ顔でそう言い武を制する。
「ならば、外野は俺に任せろ!」
「おうよ!」
友情で結ばれた男達がよろよろと走り出す。
「さあ、楽しい焼肉パーティの始まりよ!」
メニエスは火龍の杖を手に王に殴りかかった。
「ぐはっ」
王の額がぱっくりと割れて、血を流しながら片目でメニエスを睨みつけ、無我夢中で抵抗していく。
「うふふふふ……っ!」
ガスガス、メニエスは王を殴り続ける。
「俺達は負けない! 互いの熱き魂に誓い!」
武が吼える。
「おお、いくぜェー!!」
漢達の戦いは続く――。
「ああ……っ」
蒼は遠くに見えるすさまじき戦いに、がくりと膝を落とした。
「くっ……早く戻って来い、王大鋸」
ナガンも子供の世話をしながら、戦場に厳しい目を向けた。
「おまえじゃなきゃダメだ。ナガンには守りきれねェかもしれねぇ…………………………店を」
「どりどりどりどり〜☆ くるくるくるくるどりどりどりどり〜☆ ひゃっは〜☆ ひゃっは〜☆ ひゃっは〜☆」
巨大綿菓子に埋もれ、綿菓子屋は崩壊寸前だ。
ただ一人。九十九はとっても幸せそうな顔だった。
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