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【GWSP】サルヴィン川、川原パーティ

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【GWSP】サルヴィン川、川原パーティ
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リアクション


第3章 大漁!?

 真っ白な花を重そうなほど咲かせている木々。
 整備はされていないけれど、地面にも可愛らしい花がところどころに咲いていて。
 ひらひら舞っている蝶がなんだかとても楽しそうに感じられた。
「はあ……気持ちいいですぅ……」
 シャーロット・マウザー(しゃーろっと・まうざー)は、ほんわり微笑みを浮かべながら、川の中に足を入れて時々ちゃぷちゃぷと動かして遊んでいた。
 そして、周囲を見回して皆が楽しむ姿を眺めていく。
 右側には水浴びを楽しむ少女達の姿がある。
 少し離れているので、ここまで水しぶきは飛んでこない。
 左側には、釣りを楽しむ人々の姿があった。
「いいですねぇ……。お腹空いたかもですぅ」
 背後からは美味しい匂いが流れてくる。
 シャーロットのお腹がくぅと可愛らしい音を上げた。

「思うように釣れないもんだな〜」
 森崎 駿真(もりさき・しゅんま)が、釣竿を手に欠伸をした。
 そんな状況なのに、バーベキューを楽しんでいる皆の方から煙や美味しい匂いが流れてくるものだから、食欲が湧いて仕方がない。釣った魚をそのまま食べたくなってしまうくらいだ。
 しかし、バーベキューに混ざるためにも、皆へ提供できる分の現地調達を成し遂げなければならない。
「気合入れないとな」
 駿真は立ち上がって必要以上大きく、竿を振り上げた。
「バーベキューの食材は現地調達が基本だって、パパが言ってた気がする!」
 守山 彩(もりやま・あや)もハイテンションで釣りに挑んでいる。
「こりゃ、魚が逃げてしまうぞ?」
 と、ちょっと離れた位置で釣りをしていたグラン・アインシュベルト(ぐらん・あいんしゅべると)がため息をつく。
「……こう騒がしくちゃ釣れるものもつれんのぅ……」
「でも、大きな魚泳いでるし。やっぱり大物は違うってカンジ? 絶っ対釣り上げてみせるんだからね〜」
 えいえいと釣竿を振る彩。
「まぁ、僕も大漁狙いですが、森で採れたキノコも持って来ていますので……って、何釣ってるんだ?」
  音井 博季(おとい・ひろき)は、彩が釣った数々の魚を見て、仰天する。
 ザリガニ、ヤカン、モヒカン、長靴、釘バット、特攻服、怪しい袋、その他!
「た、大漁といえば大漁ですが……」
「大物〜!」
 彩は大きな影に向って、糸をおろしては皆をびっくりさせながらちょっと変わった魚を釣り上げていくのだった。
「っとあ、テティスさんに彼方さん?」
 博季は、ソアと一緒に歩いている、テティスと彼方に気付き立ち上がった。
「よろしければ、一緒に釣りをしませんか」
 そう誘うと、テティス達は顔を合わせて微笑み合い、頷いて近づいてきた。
「是非ご一緒させてください」
 歩み寄るテティスを、博季が岸辺へと招く。
「やれやれ、また煩そうなのが来よった」
 グランも口ではそう言いながらも、穏やかな表情で若者達を迎えた。

○     ○     ○


 お昼を過ぎた頃、釣りをしていたメンバーもバーベキューを始めることにした。
「火はこのように点火します。よく焼いて召し上がって下さい」
 川原を回って若者達を手伝っている本郷 翔(ほんごう・かける)が、機材の使い方を説明し、バーベキューに必要な用具を並べていく。
「誰か、料理お願いっ。食材とか、洗っておくから……」
 彩は真剣な表情で、得たいの知れない魚や、やかんとか釘バットを洗っている。
 普通の魚も少しは釣れたのだけれど、料理は苦手なので下手に手は出さないことにした。
「料理得意な奴は居ないのか? とりあえず塩焼きにしようぜ、塩焼きにー」
 駿真は釣った魚の内臓を割り箸で取り出した後、竹串を入れて、彩の方を見る。
「一緒に焼こうか?
「お願い」
 彩も魚は、駿真に任せることにする。
「こんなカンジかな?」
 駿真は塩を振って炭火で焼いていく。
「もう少し離した方が良いかもしれませんね」
 翔が魚の距離を少し離した後、後ろに下がる。
「それでは、私はこれで」
「おう、サンキューな!」
 一礼すると、翔は他のメンバーを手伝うためにその場から去っていった。
「肉と一緒にキノコも焼きますよ」
 博季は肉と洗ったキノコを網の上に乗せていく。
「うん、これも食べられるでしょう。お願い」
 彩が箸でつまんだ赤い物を、網の上に置いた。
「いや、コレなんだかわかんないんだけどー!」
 網の上で、何だか奇妙にうごめいているソレに、博季は思わず逃げ腰だ。
「見れば分かるでしょ。トサカよトサカ」
 彩は平然と言った。
「何でそんなモンが釣れるんだ? 寧ろ食えないだろ、そりゃ」
「好き嫌いはいかんぞ」
 箸が伸びてきたかと思うと、ひょいっとその赤いトサカのような物体を、グランが掴み、ぱくりと口の中に入れた。
「ひぃ……っ」
 小さな声を上げたのは、仲間に入れてもらおうとほわほわ訪れたシャーロットだ。
「な、何かこのパーティ怖いですぅ……」
「大丈夫よ、普通の魚もあるし」
 言って、彩が掴み上げたのはザリガニだ。
「それは魚じゃないし!」
 すぐに、博季のつっこみが入る。
「時代は変わったものね……こんな物まで食べるなんて……」
 テティスも彩が調理しようとしている物に驚き顔だ。
「さ、流石に食べられないものは食べないと思います。私もお肉焼きますね!」
 ソアは持ってきた羊肉を取り出して、網の上に乗せていく。
「上手そ〜。もう食える? ザリガニも食ってみたいかも」
 彼方は紙皿と割り箸を手に待ちきれない様子だ。
「無理して食べようなんて思ってないわ。これなんか串の代わりに使えそう?」
 彩は釘バットから長い釘を引き抜いて、割り箸に括り付けて串を作っていく。
「見たこともない魚だけど、美味しそうよね」
 彩は斑模様の魚を串刺しにして焼いていき、はいっとグランに手渡す。
「うむ」
 グランは特に何の表情も浮かべず、むしゃむしゃと魚を食べていく。
 焼かれているキノコも、皿にのせて、むしゃむしゃと食べ続ける。
「……あたしが釣った魚もちょっと変わってるかなあと思うけど、この縞々模様のキノコも変だと思うの」
「いや、これはイルミンスールでしか採れない、肌がすべすべになるキノコなんですよ」
 そう説明した博季の横からグランの手が伸びて、キノコをまたひょいっと掴んでぱくりと食べてしまった。
 途端、グラン60歳男の顔がつるつるになり、額がキラン☆と光る。
「うわっ。本当だ。あたし食べたかったかも……」
 しかしもう、そのキノコはない。
「わ、私も食べてみますぅ……や、やっぱりこっちを〜」
 シャーロットはキノコに箸を伸ばしかけたが、無難にソアの羊肉をいただいて食べることに。
「あちっ。けどすげぇ美味い! 十分中まで焼けたぜ〜!」
 味見後、駿真は塩焼きにした釣った魚を皆へ渡していく。シャーロットも喜んで受け取る。
「あつ、あつ……はふはふ、ですぅ〜」
 そしてゆっくりゆっくりいただくことにする。
「やっぱり、自分で釣った魚は美味しいわねっ!」
 彩が言い。
「それ、俺が釣った魚だけどな」
 駿真がにっと笑う。
「細かいことは気にしない。この川の上流、パラ実空間だしねー。って、パパが言ってた気がする!」
 彩が笑みを浮かべる。
 皆で笑い、ちょっと変わった魚中心のバーベキューを楽しむのだった。