リアクション
* * * ある日の空京、アレクとジゼルの自宅へフレンディスらが遊びにやってきていた。ソファで寛ぎながら会話していた折、ジゼルが端末の写真を一枚見せた事に昔話が盛り上がる。 「これは?」 アレクの質問に、ジゼルがあの嵐の日だと思い出すと、フレンディスはにこりと微笑んでスヴェトラーナを見た。 「アカリさんと初めてお会いした日ですね」 そう言えば……と皆それぞれあの日を思い出し懐かしむ。ベルクにとっても『嫌な予感がした』という意味で強烈な思い出だった。 「スヴェータ……アレクじゃねぇけどよ、よくバレないと思っていたな。 俺は未だに不思議だぞ? 容姿以前に名前から身バレしてるじゃねぇか」 ベルクのストレートな言い方に、スヴェトラーナは 「ロシア人を名乗る事は簡単だったんです。実際私はロシアで生まれ育ってロシア地上軍に所属していましたし、当然国籍もそうだったので実際ロシア人と言っても良いでしょう。 アレクサンドルだって欧州ではあちこちで見掛ける名前ですから、その程度では中々バレないというのもありますが……」と前置きして、困ったような笑顔を浮かべた。 「なにより父の名前と瞳の色は偽れなかったんです。 パーパとジゼルの娘である、と言うのが、私の誇りですから」 彼女のその言葉にアレクが眉を下げる。部屋の空気が温かくなったその時、フレンディスがもじもじとベルクの顔を見上げた。 「……マスター……この頃、一体どの辺りでお二人の娘さんと解る箇所があったのでしょう……? ジゼルさんは解りました??」 「あのねフレイ、私も実は……」 今の今まで、そして今の会話を聞いて尚全然分かっていないのか、ジゼルも視線を床の方へ漂わせている。ちらちら盗み見たアレクの無表情の中に『バカ』の二文字を拾うと、顔を真っ赤にして「お茶冷めちゃったわね!」とそそくさキッチンへ逃げて行った。 「まずは父称からだが――」アレクがベルクの代わりにレクチャーしようとフレンディスへ向き直ると、上擦った声をポチの助が上げる。 「ぼ、僕は最初から解っていましたよ! 何しろ超優秀なハイテク忍犬ですからね!!」 母と子は同じセイレーン独特の花香りを纏っているという犬専用の最大のヒントが目の前にあったにも関わらず、実は『ターニャ』に関心も示さず気づく以前の問題だったポチの助が、それこそバレバレな嘘をわざわざ披露してくれたのに、ベルクは何時ものように溜め息を吐き出して肘掛けにだるそうに凭れてしまった。 |
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