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リアクション
プロローグ
光零にある食堂・青楽亭。学生達が多く集まる食堂には、一枚の紙が貼り出されている。そこには『幽霊退治募集!』と書かれていた。
依頼主は街でバー『夜華』を営むイブ。最近になって、街の中心地区にある『メアリの家』と呼ばれている建物を買い取った。イブは街の外れにあるバーの経営が芳しくないことに悩み、新しい商売を始めることにした。それが中心地区にある『メアリの家』を改築し、学生向けの宿屋にすることであった。
しかし、『メアリの家』は昔からメアリと呼ばれる老婆と黒犬の霊が現れることが有名で、改築工事を始めた途端、恐れていた通りの出来事が起こった。メアリと黒犬の霊が現れ、工事をしていた者たちを全て追い出してしまった。
そこで、イブは幽霊退治を依頼したのだが、更にメアリの霊が出現した時に、街の外の森の近くで青年の霊が目撃されて噂になり、その森には昔の盗賊団がアンデッドモンスターとなっていた。
依頼を受けた学生達は青楽亭に集まり相談していた。その中にはアンデッド盗賊団に興味を持った学生たちも混じっていたが、逆に早々に目的場所に向かってしまった者たちもいた。
学生たちの一人、ナイトのヴィナ・アーダベルト(びな・あーだべると)は、イブの依頼書を読みながら呟く。
「この3件の幽霊事件は関連がない……わけないよな」
セイバーの樹月刀真(きづき・とうま)は頷き、周りを見回しながら言う。
「俺は青年の霊に会いに行くつもりだけど、メアリさんが現れないと会えないらしいから、できるだけ連絡をしっかりしておきたいです。誰かメアリさんの家に行く人がいれば連絡したいんだけど……」
「それなら、刑事の拙者がメアリの家に行くでござる。同時接触できるように連絡するでござる」
セイバーのゴザルザゲッコー(ござるざ・げっこー)が手を挙げる。何故かトレンチコートと伊達メガネを着け、自分のこと刑事と名乗ったが、誰も深く訊く者はいない。パートナーのヴァルキリーであるイリスキュスティス・ルーフェンムーン(いりすきゅすてぃす・るーふぇんむーん)も関心がなく、骨型の犬用ガムを手の中で弄んでいる。
街の調査をするつもりのローグの神和綺人(かんなぎ・あやと)は、立ち上がりながら言う。
「じゃあ、街を調査する人は一度青楽亭で情報を集めよう。人数も多いし、携帯での連絡も全ての人とできるわけないしね」
それぞれが頷き散っていく中、出て行こうとしたナイトの譲葉大和(ゆずりは・やまと)をローグの高崎悠司(たかさき・ゆうじ)が呼び止めた。「なあ、何を調べるんだ?」
譲葉が答える前にパートナーで剣の花嫁のラキシス・ファナティック(らきしす・ふぁなてぃっく)が元気よく答える。
「ボクたちは青年が探す指輪がどっかに売られちゃってないか調べるんだ!」
譲葉は空飛ぶ箒を持ち上げ言う。
「店主は不在だけど、俺はダメもとで黒喜館に行こうと思っています。君たちはどうしますか?」
高崎はテーブルに頬杖を付きながらだるそうに答える。
「ああ〜……ここで留守番でもしてる。指輪を調べるんだったらよ、ついでにその指輪に呪いでも掛ってないか、訊いといてくれよ」「……青年の無念の想いが指輪に宿っているかも……というところですか」
譲葉は頷き、隣に座っている高崎のパートナーで剣の花嫁のレティシア・トワイニング(れてぃしあ・とわいにんぐ)は溜息を吐く。
「もうっ、また自分は動かないで人任せにして」
しかし、高崎は全く気にしてない様子で、手をひらひら振りながら言った。
「機会があったらでいいからよ。よろしく頼むぜ」
譲葉とラキシスは了承して出て行った。
「呪いかぁ……やっぱりそうだよね」
高崎たちの会話を聞いていたウィザードのカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)は、一人呟く。
「カレン、アンデッド盗賊団が指輪の呪いを受けていると考えているのか?」
隣にいたパートナーで機晶姫のジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)が訊くが、カレンは首をひねりながら答える。
「う〜ん、指輪が原因かわかんない。でも、悪霊になるならわかるけど、アンデッドモンスターになるのは変じゃない? 裏で何かが隠れている気がするんだよね」
「とにかく、青楽亭の主人にでも話を聞いてみるべきだ」
ジュレールが言うが、カレンたちと同じくアンデッド盗賊団の討伐に向かうセイバーの荒巻さけ(あらまき・さけ)が、カウンターの中で皿洗いをしていた青楽亭の主人にちょうど訊いていた。
「あの、少しお時間を頂いてもよろしいですか?」
青楽亭の主人が無言で顔だけ出す。
「森のアンデッド盗賊団について、具体的な場所とか規模をご存じですか?」
青楽亭の主人は濡れた手をエプロンで拭きながら答える。
「森のアンデッド盗賊団は、光零ではメアリの家と同じくらい有名だからな。森に立ち入る者はいないし、森を迂回して通るはずだ。しかし、昔は盗賊団の規模は小さいが、複数存在したという話だ」
主人の言葉に、アンデッド盗賊団討伐に行こうとしていた者たちの顔が引き攣る。森へ行く支度を整えていたバトラーの高谷智矢(こうたに・ともや)も手を止める。
「複数ですか……。もし、アンデッド盗賊団が指輪を持っているとしたら、辿り着くまで厳しいですね」
パートナーで剣の花嫁の白河童子(しらかわ・どうじ)が、不安そうに高谷の服を掴む。
「フン……面倒なことだが仕方ない。とりあえず、事の発端はその盗賊団らしいから、彼らを片付けてからでないと話は進まないだろう。行こうか? ブルーズ」
ローグの黒崎天音(くろさき・あまね)は小さく笑みを浮かべ立ち上がり、パートナーでドラゴンニュートのブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)も無言で立ち上がる。
アンデッド盗賊団討伐に向かう他の面々も、自然にグループに別れ手分けをしてアンデッド盗賊団を討伐することになった。
留守番宣言した高崎たちは、街などを調査しに行った者たちから、アンデッド盗賊団について何かわかったら連絡する約束をした。
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