蒼空学園

リアクション

第１章

　葉　剣英（イェ・ジェンイン）は、カンナも交えてシャンバラ教導団と蒼空学園の生徒の指示に当たっていた。
　森の中に「鬼大刀会（グェイ・ダー・ダオ・フゥイ）」が隠れており、何かを企んでいることは、明らかだった。
　蒼空学園校長、御神楽　環菜（みかぐら・かんな）も学園の危機に「鬼太刀会」対策本部を設置し、準備を進めていた。

　シャンバラ教導団の有志で結成された【葉捕縛隊】の皇甫　伽羅（こうほ・きゃら）は、今回の件を見過ごすわけにはいかなかった。
「…これは教導団の統帥と統制を根底から覆しかねない重大事件ですぅ。教導団がよりにもよって鏖殺寺院にそんな浸透工作を許したことも大問題ですしぃ、それ 以上にこれを野放しにしては、今後いちいち作戦命令そのものを疑ってかからなければならずぅ、命令系統自体が崩壊しますぅ」
　伽羅は、書類の流れからまずは更なる隠し玉を持ち出していないかをチェックする。さらに次いでリリーの手口から何か弱点は見つけられないかを調査していた。
　とりあえず、物資の持ち出しはなかった。そして、皇甫　嵩（こうほ・すう）が調べ上げた「鬼大刀会」のデータが今、伽羅の手元にある。
　嵩はシャンバラ教導団の訓練において捕縛した「鬼大刀会」のダミーの三人組の取り調べを担当していたが、それは過酷を極めたと言う。
「…それがしがいた頃の中華には、捕まえた敵兵の屍で塚を作り、戦勝を記念する風習がござってな…この皇甫　嵩も一山築いたことがござりますよ」
　丁寧な言葉の裏には、冷静な恐ろしさが隠されており、さすがの鏖殺寺院の構成員とはいえ、ダミーたちは震え上がったという。
そんな経緯があったのち、嵩は羽根　季保、策士紀　君祥（ジー・ジュインシャン）、ウィリアム・リリーの三人は各地でテロを起こしている連中で、特に紀が得意としているのは地雷トラップだという情報を引き出すことに成功したのだ。
「これは…【葉捕縛隊】に知らせなければいけないですぅ…！」
　先に出発しているうんちょう　タン（うんちょう・たん）に、伽羅は連絡を取った。


☆　　☆　　☆


　うんちょう　タンは伽羅からの連絡を受けると、早速、マーゼン・クロッシュナーに報告する。
「マーゼン殿！　嵩が捕縛した鏖殺寺院の構成員から手に入れた情報によると、奴らは『地雷トラップ』なるものを得意とするそうでござるよ！　これはシャンバラ教導団、蒼空学園の皆に知らせないと…」
　うんちょう　タンの言葉に、マーゼンはうなずくと
「許すまじ、『鬼太刀会』…早速、生徒たちに連絡をいれますかな。我々も、地雷の探索にあたるとしましょうかな」
「わかりましたでござる」
　マーゼンの言葉にうんちょう　タンが頷いた。

☆　　☆　　☆

　銀色の髪をしたシルバ・フォード（しるば・ふぉーど）と、対称的に美しいぬばたまの黒髪のパートナー、雨宮　夏希（あまみや・なつき）が、ドラゴニュートに一致団結を呼びかけていた。
「ドラゴニュートの赤ちゃんを助け出すには、おまえたちの力が必要なんだ、みんな協力を頼む」
「私からもよろしくお願いします」
「当然でしゅ！」
　小さなデンカ・クロスフィールド（でんか・くろすふぃーるど）は、カーマル・クロスフィールド（かーまる・くろすふぃーるど）の頭の上でぷうっと小さな炎を吐く。
「もちろんだ！」
　同じく、ルーク・クライド（るーく・くらいど）が声を上げる。デンカもルークもまだまだ小さく、自分たちと似ているドラゴニュートの赤ん坊を助け出そうと燃えている。
「ちっくしょ、俺達は人族みたいには増えねぇんだ。子は種族の宝なんだよっ」
　カルキノス・シュトロエンデ（かるきのす・しゅとろえんで）も怒りに満ちた表情を見せる。
　ネヴィル・ブレイロック（ねう゛ぃる・ぶれいろっく）も同様だった。
「同じ種族だから、赤ん坊が出す小さな声の周波を拾うことは出来るんじゃないのか」
「できるさ。どんな小さな声だって、同族として必ず受け止める！」
　シルバの言葉に、ルークが応えた。

☆　　☆　　☆


「それでは森に入る。それぞれ、『鬼太刀会』捕縛班、ドラゴニュート救出班、鏖殺寺院構成員へのゲリラ戦闘班、おおまかな班わけをしている。基本的な指示は今から申し渡すが、各員、その場での臨機応変な対応が求められるだろう。作戦を聞いてしっかりと遂行してくれ」
　葉　剣英の声に、生徒たちは表情を引き締めた。

　緋桜　ケイ（ひおう・けい）と悠久ノ　カナタ（とわの・かなた）は森に入る準備をしていた。
二人は教導団の訓練に参加しており、今回の事情を聞いて、助っ人として参加したのだった。
「鏖殺寺院の連中が潜んでいる可能性が高いし、ここはみんなで協力していこう」
　ケイはドラゴニュートの赤ちゃんを救い出すため、そう決意する。
　カナタはある用意をしていた。
「ドラゴニュートはお腹を空かせているかもしれぬ。出発前に何か食料になりそうな物を持っていかねばな……。そうじゃ、今日の弁当にはから揚げを多めに入れておくとしよう」