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リアクション
第3章 新鮮な食材を探し求めて
アーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)とラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)のために、スタミナのつく魚を釣ろうと羽瀬川 セト(はせがわ・せと)たちはパラミタ内海で釣りをしていた。
「いやぁ〜いい天気で良かったですね。・・・ふぁぁぁ・・・ミア〜あんまりはしゃぎ過ぎて海に落ちないでくださいよぉ」
「釣りは忍耐っスよぉ。・・・まぁのんびりいくっスぅ」
眠そうにしているセトに、呂望・姜子牙(りょぼう・きょうしが)がここが耐えどころと声をかける。
「・・・しかし魚釣るのもつまらんのぅ。そうだ3人で誰がたくさん魚を釣るか競争せぬか?」
釣り始めてから1時間経過したところで、エレミア・ファフニール(えれみあ・ふぁふにーる)は魚を1番多く釣るのは誰が競争しようと言いだす。
「チビすけぇ。釣りは競争するもんじゃないっスよぉ、のんびり楽しむもんっスぅ」
「誰がチビすけじゃ!1匹も釣れておらんおぬしが言っても説得力ないわい」
エレミアは姜子牙の空っぽのクーラーボックスを指差して怒鳴るように言う。
「―・・・うまそうじゃ・・・1つ味見してみて良いか?」
バケツの中で泳いでいる魚をエレミアが指差す。
「1匹くらいなら・・・」
「それじゃあ、ちと味見を・・・」
魚を1匹取り出して火術で焼き、パクッと噛みつく。
「う〜ん、やっぱり獲れたてはうまいのぅ」
骨以外きれいに食べ、満足そうな顔をする。
「あっ、姜子牙!引いていますよ!」
「こっ・・・これはきっと大物っスぅ!」
魚は針から逃れようと水中で暴れていた。
「よぉおしっ、今っスぅー!それぇええ!」
釣りあげたのは体長60cmほどの石鯛だった。
「なにぃいい!?こ・・・こうしてはおれぬ・・・。わらわも大物を釣らねば・・・」
負けてたまるかとエレミアは釣りに集中し始めた。
「今のところクリーチャーはでないようだね」
食材を採取する生徒たちと共に、クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)は辺りを警戒しながら歩く。
「亡者たちは無痛覚らしいから、気をつけないとな」
ローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)は辺りに死者が潜んでいないか周囲を見回す。
「たとえ腕が折れても襲ってくるんだろうな」
「生者を自分たちと同じようにナラカへ引きずりこもうとしているのかしら?」
ジィーン・ギルワルド(じぃーん・ぎるわるど)とサフィ・ゼラズニイ(さふぃ・ぜらずにい)も、食材探しの生徒たちを守ろうと辺りをクリーチャーを警戒していた。
「パラミタの植物についてよく知らないから図鑑も持ってきたけど・・・有毒と紛らわしいのは避けようかな」
「間違って毒のあるものを採っては洒落にませんな」
クリーチャーたちを警戒している生徒たちの近くで、葉 風恒(しょう・ふうこう)とダレル・ヴァーダント(だれる・う゛ぁーだんと)が料理の食材を探していた。
「あっ!あれ竹の子じゃないかな」
風恒が人差し指で示す方向に、細く青い木々の中に竹の子が生えていた。
「ほう・・・このような所に・・・」
土の中からダレルが掘り起こし、カゴの中に入れる。
「これはキャベツ・・・かな?」
緑色の葉っぱが折り重なった丸い野菜を採取し、竹の子を入れたカゴの中へ放り込む。
「その野菜・・・大丈夫なのですな?」
「大丈夫だよ。(たぶん・・・)」
図鑑に載ってなかったが、害はないだろうと自己判断する。
「こんなところにキノコがあったよ」
「それは毒キノコですな」
「うーん・・・あっ、こっちが椎茸か・・・。草むら中にも何かあるかもしれないね」
「あんまり離れると危ないですぞ」
採取に夢中になり始めた風恒の後を追い、ダレルも草むらへ向かう。
ハスの葉を見つけ手を伸ばすと、ガササッとどこから音が聞こえてきた。
地中から亡者の腕が現れ、風恒の腕を掴む。
「なっ・・・何!?」
振り払おうとするが、なかなか離そうとしない。
ジィーンが駆けつけ亡者の腕へランスを突きつけた。
ダレルは風恒の身体を抱え、なんとかクリーチャーから引き離す
「いくらでも相手になってあげるよ!」
地面から這い出てきた亡者に、クライスがエペの切っ先を向ける。
彼の声を聞きつけた森林の中から数体の亡者どもが現れた。
「もっとこ・・・・・・いや、ちょっと多い・・・・・・いいや、こい!」
「四肢を叩き斬れば動けなくなるはずだ!」
ローレンスはバスタードソードの柄を握り、襲いかかる亡者どもを叩き斬っていく。
「傷が浅かったかっ!」
エペで首元を狙うが、数匹クリーチャーを逃がしてしまった。
「まだ誰かを狙いにいったのかもしれないわよ」
「早く後を追わないと!」
クライスたちは亡者の後を追い、森林の中へ駆けていく。
「(見つけたわ!)」
リュシエンヌ・ウェンライト(りゅしえんぬ・うぇんらいと)は身を屈めて、慎重に間合いを詰める。
「1匹ではないようでございます」
木々の間に潜む2匹の亡者を見つけ、セーネ・アンジェリック(せーね・あんじぇりっく)が指差す。
身の丈よりも大きい黒い大鎌の形状をした光条兵器を手に、地面を蹴ってリュシエンヌが亡者に斬りかかる。
背にズブリと刃が刺さるが、痛覚の感覚のない亡者が大鎌の刃を掴まれて振り回され、大木の方へ投げつけられた。
「あぁああー!」
体勢を立て直そうと起き上がるが、すぐそこまで亡者が迫っていた。
クリーチャーの背骨へ藍澤 黎(あいざわ・れい)がエペで斬りつけ、引き抜くとそこから大量の赤黒い血が噴出す。
フィルラント・アッシュワース(ふぃるらんと・あっしゅ)は氷術でクリーチャーを凍らせる。
「もう1発くらいなさい!」
無理やり動こうとしている標的に、再び氷術をくらわす。
エディラント・アッシュワース(えでぃらんと・あっしゅわーす)は小弓の弦を引き、ターゲットへ3本の矢を放つ。
亡者にドスドスドスッと矢が命中し、粉々に砕け散る。
「―・・・危険」
女王の加護で空気の淀みを察知し、ヴァルフレード・イズルノシア(う゛ぁるふれーど・いずるのしあ)が森林の中へ駆けていく。
「―・・・こっち」
ヴァルフレードの眼の前には、クライスたちが仕留め損ねた亡者がいた。
小弓の弦を引き、ヴァルフレードが亡者の手足へ弓を放った。
黎とフィルラントが氷術を放ち、止めの弓矢で砕く。
「片付いたようだな」
「(どうやら無事だったみたいだね)」
様子を窺っていたクライスは、ほっと安堵する。
「もしかしてクリーチャー全部・・・粉々になっちゃったの?」
コクリと頷く黎に、倒した亡者の亡骸を調べようとしていたリュシエンヌは、力なくヘナヘナとしゃがみ込む。
「これじゃあ調べられないわー」
リュシエンヌはダダを捏ねてジタバタし、そんな彼女の頭をセーネが優しく撫でてやる。
「食べられそうな果物があるといいですね。たとえば山葡萄とか・・・」
「ひょっとしたら木になっているかもしれないわね」
菅野 葉月(すがの・はづき)とミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)の2人は、森の中へ食材を探し歩いていた。
「あれなんかいいんじゃないの?」
蔓になっているベリーのような果実を、ミーナが見つける。
「けっこう高いところになっていますね。僕が採ってきましょう」
木の上によじ登り、紫色の小さな果物へ手を伸ばす。
「30粒くらいあればいいんでしょうか」
「パイやタルトに使うなら、もうちょっといるかもしれないわよ」
「これくらいにしておきましょうか」
カゴに入れ木から下りる。
「あなたたちも食材を探しにきたの?」
アーデルハイトたちのために食材を探しに来たアピス・グレイス(あぴす・ぐれいす)とロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)に偶然出会った。
「えぇそうですよ。どんな食材を探しにきたんですか?」
「私たちはクルミとかかな。キノコ類は毒あるかもしれないから」
「一応・・・植物図鑑を持ってきたんですけど」
「たしかにそうですね」
「あれは木の実かな」
木になっている松ぼっくりみたいな木の実を、ランスを使って土の上に落とす。
殻を割ってみるとクルミのような実が出てきた。
「図鑑に載ってますね。食べられますよ」
「それじゃあ試しに食べてみるね」
試しに一口食べ食べてみると、クルミと同じような味がする。
「美味しい!これにしようかな」
「デザートにピッタリですね♪」
「もう少し何か探してみない?」
「そうですね・・・これだけだと足りないかもしれませんし」
「あっ、あれなんかどうですか」
食材を探し歩いていると、タンポポの花のような黄色い果物を見つけた。
「花じゃなくて果物なのね」
手で軽く潰してみると甘酸っぱいレモンのような香がする。
「料理に使えるかもしれないから、少し採っていこうかしら」
土の上に育っている果実を摘み、カゴの中へ入れていく。
「いい香ですね」
「そうね、これだけあれば美味しいデザートが出来るかもしれないわね」
葉月たちはイルミンスールの学園へ、果物を届けに向かった。
「ヨモギやシソがあるといいんだが・・・ワラビもあるといいな」
弐識 太郎(にしき・たろう)はアーデルハイトたちのために、森の中で薬草を探していた。
「これは大丈夫だろうか?」
毒のない葉か、1枚採って形を確認する。
「シソ・・・みたいだな。こっちはヨモギ・・・だろうか」
1枚ずつ確認しながらカゴの中へ入れていく。
「これも大丈夫そうだな。ずっと屈んで採っていると、さすがに疲れてくるな・・・」
地面から立ち上がり、ぐーっと背伸びをする。
「これくらい採れば足りるだろうな」
「伏せろ!」
どこからか声が聞こえ、とっさに伏せると頭上をランスが通過した。
ドスッと木に刺さり、亡者の身体が串刺しになっていた。
「危うく襲われるところだったな」
ウェイル・アクレイン(うぇいる・あくれいん)は刺さったランスを抜きながら、驚きのあまり腰を抜かしている太郎の方へ顔を向ける。
「ど真ん中に刺さったわね・・・」
眉を潜めてフェリシア・レイフェリネ(ふぇりしあ・れいふぇりね)が遠くから見る。
「こいつ・・・まだ動けるようだな」
ウェイルとフェリシアは亡者の四肢を光条兵器で斬り裂く。
「―・・・こうなってもまだ動けるのね」
「まぁ・・・こうしておけば誰かが襲われることはないだろう」
「食材を届けに行くのか?」
「あぁ、そうだ」
「気をつけてな」
「助けてくれてありがとうな」
薬草の入ったカゴを抱えて、太郎はイルミンスールの学園の家庭科室へ向かう。
「食材として鮎がほしいよね・・・」
「なかなか見つからないな。クマとかでもいればいいんだが」
料理に使う食材を探して黒乃 音子(くろの・ねこ)とニャイール・ド・ヴィニョル(にゃいーる・どびぃにょる)が、鬱蒼と覆い茂る森を探し歩いていた。
「そういえばイノシシとかもいそうだね」
「たしかにいるかもしれないな。食人植物がいる森だから、かなり凶暴かもしれないが」
「それなら・・・違うのがいいかもしれないね」
「他の人に聞いてみればいいんじゃないか?」
ニャイールがエルたちの姿を見つけた。
「ねぇー猛獣と魚、どっちが無難かな?」
「獣は危なそうだから、魚のほうがいいかもしれないな・・・」
「そうか・・・」
「魔法草でさえ体長6メートルのがいるしな」
「何も準備してこなかったから無理そうだね。それじゃあ・・・湖を見つけたら魚でもいいかな」
「そのほうがいいだろうな」
エルの説明に頷くと、音子たちは別の食材を取りに行くことにした。
「あっ!湖があったよ。できれば鮎がほしいけど・・・時期的にどうなんだろうね」
「ミーが獲ってこよう」
ニャイールは湖に入り、手頃な魚を探す。
「見つけた!―・・・これはなんだ?」
「フグ・・・?」
「大丈夫なのか?」
「刺身にできる部分だけなら・・・大丈夫かもしれないよ」
「そうか・・・じゃあこれを持って行こう・・・か!?」
湖から出ようとすると、何者かに足を掴まれた。
死者がニャイールを引きずり込もうとしているのだった。
音子はアサルトカービンのトリガーを引き、亡者の頭部へ銃弾を撃ち込む。
諦めたのか死者は湖の中へ去っていた。
「今のうちに戻ろう・・・」
クーラーボックスの中に入れ、イルミンスールの学園の方へ届けに行く。
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