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黒羊郷探訪(第1回/全3回)

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黒羊郷探訪(第1回/全3回)

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3-03 サーカス

 ……我々の旅は
 この細い綱の上を行くような旅
 一歩足を踏み外せば
 ナラカの底へ落ちてしまう
 切っ先を前に向け
 しかし我々は行かねばならぬ
 たとえ灯かりひとつともらない暗い道のりであったとしても
 いざ往かん 黒い都へ…… 

 巡礼の一行に組み込まれることとなってしまった、彼ら。
 しかし、ノイエ・シュテルンの中にあの男の姿が見えなかったことに、気付いた方もいるかも知れない。
 さて、ここはとある草原の村。
 この村をサーカスの一団が訪れ、今、サーカステントの中で演技が披露されている最中だ。
 剣を手に、詩吟しながら綱渡りをしているのは、シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)

 サーカスを見ているのは……
 そう。青 野武(せい・やぶ)だ。もちろん隣には、黒 金烏(こく・きんう)
 青は、先にも示された通りノイエ・シュテルンの一員としてクレーメックらと共にあったが、草原の村を通りかかった際、クレーメックの直観もあり、青の察知力もあり、これはどうも怪しいと見て、青は一時隊を離れここに残ることとなったのだ。このサーカス……何か、ある。
 それから、反対隣に見えるのは……
「おや。どこかでお会いしましたかな」
「こまけぇことはいいけどな」
 国頭 武尊(くにがみ・たける)も、サーカスに立ち寄ったのだった。
「サーカスなんて滅多に見れるもんじゃないし、結構楽しみだ」
 シーリル、又吉も彼の隣で見物している。
 続いては、
 動物芸だ。
 象にライオン、猿にクマ、
 自転車、三輪車、シーソー! 玉乗り、縄跳び、そして火の輪くぐり!
 注意深く観察する青、「ふむ。草原の民は気付かんようだが、あれはゆる族じゃな」
 剣の花嫁による、剣の投げ合い。
 黒、「光条兵器だから、相手を傷付けてしまう心配はないということでありますな」
 火を吹く機晶姫。
 いっとうじっくり見入る青、「ふむ……演出不足じゃの」(火力が足りん!!)
 ヴァルキリーと守護天使による空中ブランコ。
 黒、「翼がありますからな」
 魔女、吸血鬼。
 青、「……」
 黒、「何と言いますか、見世物小屋でありますな」
 最後は……英霊の槍回しだ。「はあっ、たあっ、くっ、……能力値が上がらん!」
 黒の隣に、シラノが戻ってきた。「あの英霊の名は曹豹というらしいです」
「なんだ、その面白くない芸は。舐めんじゃねーぞこの野郎」
 飛び出していく又吉。国頭も。
 まあ、でも楽しそうだ。
 二人も混ざって剣を投げ合ったり、玉乗りしたり輪くぐりしたり、火を吹いたりしている。
 シーリルが止めに入る。
「ハメを外さないようにって言いましたのに! わっ」
 又吉から投げられた剣をキャッチ、すかさず国頭に投げ渡す。さすが剣の花嫁だ。シーリルはこの後、サーカス団からスカウトを受けることになる。
 サーカスは終了した。
 客から盛大な拍手。
 しかし、青は、真剣な面持ちで、このサーカスを見終えた。
「これは、やはり何かある……!」



 さてサーカスが終わると青と黒はシラノを通し、サーカス内の外部応接担当者との面談を要望した。
 暗がりのバックステージ。
 先程の、魔女や吸血鬼やゆる族や曹豹らが、ぎらりと青らを睨みつけてくる。
 全く怖気づく様子もなく、その間を進んでいく、青、黒、シラノ・ド・ベルジュラック。
 三人は、直接座長と会うことになった。
 山高帽にちょび髭の男。
「サーカスはどうでしたかな?」
「ええ。素晴らしかったですとも。
 ときに、我々はシャンバラ教導団と申し、このほどのこの辺りの治安を担当することになったのじゃが……」
「何シャンバラ教導団!?」
 部屋に、剣を持った花嫁、ヴァルキリー、機晶姫、曹豹らが入ってくる。
「……むう?」
 シラノはエペをかまえ、青と黒の前に立ちはだかる。
「座長殿。教導団は、ヒラニプラに本部を持つれっきとした公然団体であり、地回りの類とは違います。ですが」
「これはどうしたことですかな? 何か、やましいことでもおありでしょうか」
 黒が冷静に言い放つ。
「いや。失礼した。わしらは、とある情報をつかんで北へ向かっておる。
 あなた方が教導団であるならば、協力して頂けないか?」
「では、このサーカス団というのは……」
 青が、座長に問う。
「わしらは、どうしても北へ行かねばならぬ。人の目を偽ってでもな。
 わしらのことを知ったからには、あなた方も今日からしばらく、サーカスの一員となってもらわねばならん」