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闇世界の廃校舎(第3回/全3回)

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闇世界の廃校舎(第3回/全3回)

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第8章 橋を渡って旅立つ死者

-AM4:40-

「そろそろ謎が解けそうか?」
 石をどの場所にはめ込んだらいいか謎解きしようとしている生徒たちにユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)が声をかける。
「うーん・・・もうちょっとで分かりそうだよ」
 美術室に書かれているカンバスの謎の言葉について考え込んでいる綺人がユーリの方へ向いて言う。
「数時間前に血まみれで運ばれてきた連中もいるしな・・・。ゴーストに対する警戒を続けなきゃな」
 キュアポイズンとヒールで治療してやり、眠っている陣たちを見下ろしてユーリは冷静な口調で呟く。
「向こうから誰か来ますよ」
 ゴーストに襲撃されないかドア付近に待機していたクリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が天の姿を見つけた。
「―・・・あ、人だ!人がいる!」
 校舎内で迷子になっていた天が生物室にいる生徒たちへ駆け寄っていく。
「今まで1人で探索していたんですの?」
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は床に転んだかすり傷しか負っていない天を、じぃっと眉を潜めて見つめる。
「さて・・・そろそろ意見をまとめてみよう。まずカンバスのだが1行目の月は星を見る・・・これは向かい合ってお互いが直接見ることができる位置だと思う。だから2階に上って2つ目の教室の天井に月・・・床に星。それで2行目の水辺に生える草とは・・・水の傍に緑を置くと言うことだろうから美術室の床に水色と緑色。続けて3行目の土と水で青々と草が茂る・・・この言葉から推測すると、水と一緒の空間に置くことと考え蝋燭たてを外した裏側に土色。最後に4行目の大雨の後、現れる七色の橋・・・これは何も理由がなく、あまったからと言う結果になってしまったが、生物室の天井に虹の石をはめ込むということじゃないか」
「私も考えついたのでいいますね」
 龍壱の推理に続けて空菜 雪(そらな・ゆき)が言う。
「この謎の言葉はこの廃校舎を使って一つの世界を作ろうとしているのではないのでしょうか。月は星を見るの星とは星空の星ではなく、私たちが住まう様な星を指しているのではないのでしょうか。ですから生物室に月・・・教室の床に星・・・」
 テーブルの上に石を並べ再現してみる。
「水の下には土がありますので教室の天井に土色。水辺に生える草、水の傍に緑を置く必要がありますので美術室の床に水色と緑色。橋が架かる時は端から端へ架けるものです。この場合ははめ込む場所が真ん中ではない・・・蝋燭たてを外した裏に虹の絵柄の石をはめるのではないしょうか」
「たしかに・・・星が月を見上げる・・・ていうとことかそうかもしれないね」
 参考に聞いていた綺人がなるほどと頷く。
「僕の考えだと2階の教室の床には月の絵柄、その天井には星。美術室の床に水色と緑色、蝋燭立ての裏側には土色の石・・・最後に4階このには虹の絵柄の石があてはまるんじゃないかな?」
 雪に続けて綺人も石の配置について案を出す。
「俺もちょっと考えついたので・・・」
 意見を聞きながら椅子に座り考え込んでいた陽太が片手を上げる。
「星を見る・・・という言葉ですが、それと月は同じ場所の床と天井だと推測して2階教室に配置します。土色・水色・緑色はひとくくりだと思われるので、美術室にセッティング。他と独立している虹は残った生物室にはめ込むと思います」
「うーん・・・僕の考えだと、星と月は2階の教室あたりかな?星の石は天井で、月の石は床。水辺に生える草て言葉は水気のある場所を示しているのかもしれないね。そうすると生物室の天井に緑色の石があてはまるのかも」
 北都は石を手にとり、考えながら言う。
「やはり色だけの石・・・これは草は緑色、水は水色、土は土色ということでしょうか」
「草の下に水と土がある・・・これは美術室の床に水色と土色の石をはめ込むのかな。それで大雨の後、現れる七色の橋は虹の絵柄の石のことだと思うんだ」
 クナイが説明する石の色と、カンバスに書かれている言葉の意味に頷き推理を続けた。
「これで全部意見がでましたね」
「皆の意見を参考にもう一度考えてみようか」
 6つの石をテーブルに置き、生徒たちが出した案をまとめようと龍壱が並べ替えてみる。
「解けそうなのか?」
 見に行こうとすると突然、片足が動くなくなってしまう。
「どっかひっかけたか・・・」
 はみでている釘が服に引っかかったのかと思い、天はズボンの裾の方へ手を伸ばすと、氷のように冷たい手に掴まれた。
「な・・・なんだ・・・!?」
 床から現れた死者たちの手が天をナラカへ引きずり込もうとする。
「ゴーストが出たアルカ!」
「ちっ・・・あれじゃあ銃で狙えねぇ・・・」
 ラルクは銃口をターゲットへ向けるが、ミスしてしまったら天に当たってしまう。
「い・・・今のうちに早く!」
 亡者の手から少しでも引き離そうとレキは彼の腕を掴み、チムチムは足の方を持つ。
 ダンッダァンッ。
 校舎内に2発の銃声が轟く。
 千切れた手は床へ溶けるように消えていった。
「大丈夫か?」
「あぁ・・・」
「酷いあざね・・・」
 くっきりと残った亡者の手形があざとなって残っていたが、リーンのヒールで治すことができた。
「またゴーストに襲撃されないうちに考えをまとめてしまおう」
「そうだね・・・まずここの天井にはめる石がどれか考えてみようよ」
 生物室にあるくぼみに当てはまる石から決めてしまおうと、綺人が天井を見上げて言う。
「月は星を見るという言葉から推測すると、もしかしたら星の絵柄かもしれませんね」
「じゃあ見るって意味は、見上げているということであっているのかな」
「えぇたぶんそうですね」
 確認するように言う北都に雪は軽く頷いた。
「その月の位置はどうなるんでしょうか・・・」
「んー・・・もしかして美術室の床かな?その隣には草・・・つまり緑色の石があてはまるかもね」
「となると草の下には土や水がありますよね、水の方が上で土が下になるんでしょう。雨が降ったあと虹が出ている時って水溜りがありますし、それを考えるとこの位置でしょうね」
 綺人の考えにつけ加えるように、陽太が言葉を続ける。
「虹が出ている時間ってちょっと誤差があるけど結構短いし・・・水溜りがあってそしたに土があるっていうならそういうことなのかな」
 彼らの説明に北都は納得したように言う。
「普段は見えない・・・と考えると、蝋燭たてを外した所に虹の石をはめるんだろうな」
 最後の虹の石の位置について龍壱が提案する。
「それじゃあまず最初に僕がやるよ」
 綺人はテーブルに上り、天井のくぼみに星の絵柄の石をはめ込んだ。
「次は3階の美術室だね」
「あぁ・・・どこからゴーストが襲ってくるかわからないから気をつけないとな」
 生徒たちは石を手に持つと、生物室を出て美術室へと移動する。



「ここだな・・・」
 龍壱は床の埃を靴で払い、丸いくぼみに月の絵柄の石と緑の石をはめ込む。
「蝋燭たての裏・・・あった、ここだね」
 壁から錆びた蝋燭たてを外し、北都が虹の絵柄の石をはめた。
 2階の教室へ移動すると陽太はテーブルに飛び乗り、天井のくぼみに水色の石をはめたその瞬間。
 蛇のように身体をくねらせ、天井を這う女のゴーストが襲いかかる。
「あぶねぇ!くっそ・・・間に合ってくれ!」
 ゴーストの頭部をラルクが狙い撃り、ターゲットの脳漿がビチッビシャァッと辺りに飛び散った。
「炎の弾丸をぶち込んでやるぜ!ボルカニックバレット!」
 爆炎波の気を纏った銃弾を標的に撃ち込み、亡者の身体がゴォオオッと燃える。
「こいつら・・・俺らを引きずり込もうっていうのかっ!」
 無数の死者の手が天井や床、壁から現れ生徒たちを捕まえようとし、指先でズズズと壁や床を撫でて彼らの位置を探ろうとしていた。
「陽太早く、今のうちに!」
「―・・・っと、あわわ!?」
 エリシアに急かされ慌ててテーブルによじのぼり床に土色の石をはめ込むと、校舎全体がガタガタと揺れだし始め、死者の悲しい声が響き渡る。
 亡者の手が灰のように崩れ落ち消え去っていく。
「死者たちは・・・成仏したのでしょうか・・・・・・」
「まだそうじゃないのもいますわ」
 校舎を徘徊している悪霊と死者の手、ベックォンは成仏したようだったが、病棟で作られたゴーストはまだ動いていた。
「ボクたちがひきつけてるから、他の人たちは先に行って!」
「さぁ行くアルヨ〜♪」
 レキとチムチムは病棟で作られたゴーストたちに向かって弾丸の雨を降らせる。
「早くこの場から離れましょう!」
 陽太たちは廃校舎の外を目指して駆けていく。