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ドーヅェ・カエリマス出現! 戦え、倒せ、偽ドージェ!!

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ドーヅェ・カエリマス出現! 戦え、倒せ、偽ドージェ!!

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5.ドーヅェ、立つ

 巨大な炎の弾丸と化したたき火の一撃からから太郎を救出したのは伏見 明子だった。空飛ぶ箒で上空から急降下し、反転しながら地上の太郎を拾い上げたのだ。
「やっぱり一人では無理だと思ってついてきてしまいました」
 地上に目を転じると、明子のパートナーのフラムベルク・伏見(ふらむべるく・ふしみ)がドージェに対して散発的に攻撃を仕掛けながらじりじりと後退していく。
「通りすがりのクラマ仮面だ……く、九條静佳とは全く関係無いよ? 無いからね?」
 狗面をかぶって颯爽と登場するのはだれがどうにみても明子のパートナーの一人、九條 静佳(くじょう・しずか)だ。正体を隠すも何も、数秒前まで明子の箒に分乗していたのだ。
 サーシャ・ブランカ(さーしゃ・ぶらんか)は、砂漠に罠を仕掛けていく。バイクで移動する蛮族を警戒したものだ。
「今はまだ下準備……さあ、偽ドージェ楽しもうよ!」
 ドーヅェは、空中の太郎たちからは視線を外し、地上の静佳とサーシャを見つめる。
 ふと、背後の採水場を振り返る。
 ここを守らなければならない。ドーヅェは自分を見つけ出してくれた仲間達のためにも、ここから先、鬼となることを決意して砂漠に踏み出した。

 桜田門 凱は、コードの上に飛んだ火の粉を払っていた。
「やれやれ……あついことで」
 蛮族たちも、ドーヅェに付き従って出撃したようだ。凱もドーヅェとともに戦ってアピールするつもりだが、保険は打っておくつもりだ。
 強いことは最低条件、したたかでなければ生きていけない。
「さて、金目のものを拝借していきますか」
 凱はハンチング帽をかぶり直すと、事務所へと続くドアを蹴り破る。
「ひやっ!」
 ドアの向こうには、凱のパートナーであるヤードが床に四つん這いになっていた。
「何やってんだ、おまえ」
「主任サンをさがしていまシタ」
 四つん這いなったままヤードは応える。彼女は机の下や、書類棚の裏側まで調査していたようだ。
「見つかったか?」
「イイエ」
「そうだろうな」
「……質問がありマス」
「あん? なんだ」
 凱は書類棚を思い切り蹴り倒す。ドーヅェが留守の間に何者かが暴れたことにすればよいだろう。
 金目の物、何だろう。貴金属や宝石のたぐいは、ない。配管の補修パーツなど小遣いにもならないだろう。
 ドーヅェがいつも座っていたデスクの上のPCが凱の視界に入った。事業所内のPCは暗号化していないことが多い。凱は携帯とPCを接続する。
「で、質問とは?」
「一つ、そのようなことをしてあなたの良心は痛まないのデスカ? 二つ、オルタナティブは、人間から憎悪される存在なのデスカ?」
「最初の質問の答えは、そういうモンは母親の腹の中に忘れてきた。次の質問は、意味がわからんな」
「ドーヅェは、ドージェの偽物故に憎まれていると判断しマス。ワタシのような機晶姫や、剣の花嫁が誰かの代替品……オルタナティブだと認定されたその瞬間、私たちはヒトから激しく憎悪されるのデスカ」
「しらねぇよ。おまえは俺が拾ったんだ。他人に口出しされようが、知ったことか」
 ごく短いつきあいであったが、偽ドージェが一度も自分からドージェ・カイラスだと主張しなかったことは印象的であった。また、ドージェという存在の特殊性を、ヤードに理解させることは困難だろう。
凱は、PCと携帯電話を切り離す。
「さて、それじゃあ、そのオルタナティブを見に行くか……ヤード、おまえはどうする」
 四つん這いになったままのヤードは、数秒間放心したように考え込んだ後、頷いて立ち上がる。
「ワタシも見届けたいと思いマス」

 事務所でそのような会話が交わされているとは知るよしもない泉 椿と緋月・西園は採水場の中心部、地下二階にある水源に進入していた。
「さてさて、何が出るかしらね」
「照明が生きていてよかったですね」
 地下であるせいか、ここが砂漠の真ん中であることを忘れてしまいそうなほどに涼しい。
「……見たところ、怪しいところはないかしら」
 椿が念のために事務所から持ち込んだ懐中電灯で辺りを照らしてつぶやく。
 床の上には、いくつかの真新しい靴跡が残っている。作業靴とは思えないドレッドパターンも残されていることから、やはり蛮族がこの場所に立ち入ったことは間違いないようだ。
「いや、何か、ある……」
 緋月が水源を指さす。
 水をくみ上げるポンプと、二人の息づかいのほかには何も聞こえない。椿は懐中電灯の灯りを水源の方へと向ける。
 椿も、何度も危険をくぐり抜けてきた。何かあれば、感じ取れないはずはない。はずなのだが。
「魔力を感じる……」
 緋月が水源をのぞき込む。魔女である彼女だからこそ感じ取れるごくわずかな魔力なのだろう。
 二人の視線の先、水底には自然物とは思えない、直方体の黒い石が沈んでいた。