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【海を支配する水竜王】孤島からの救出手段を確保せよ

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【海を支配する水竜王】孤島からの救出手段を確保せよ

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第7章 慈悲無き亡者の兵

「なんとかここまでこれたね・・・」
 他の生徒たちがゴーストを引き付けてくれているおかげで、北都と昶は中央扉の前へたどりついた。
「たしかこれを叩けばいいんだよな?」
「そうだね」
 ドォンッダァンッ。
 2人がティンパニーを叩くと扉が開いた。
「先に行かせてもらうわね」
「ありがとうございます」
 扉が開いている間に、美羽とベアトリーチェが通り抜ける。
「けっこう凄い音だよね。兵たちが来たりしないかな?」
「今のところは大丈夫みたいだけどな・・・」
「俺たちが代ります」
 後からやってきた陽太とエリシアが交代しティンパニーを叩く。
「おー、ありがと」
 昶はニカッと笑い北都と奥へ進んだ。
「それがしたちも通させてもらう」
 鍵探しを手伝おうと道明寺 玲(どうみょうじ・れい)イルマ・スターリング(いるま・すたーりんぐ)も扉の向こうへ駆け込む。
「代わるから先に行っていいよ」
 茜 星(せん・せい)鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)が代わりに叩き始める。
「まるでからくり屋敷みたいな設計だな・・・」
「交代するよ」
 さらにミサと水海が叩き役を代わる。
「一応、全員通ったようなのだな」
 水海は叩く手を止めた。
「やばいね・・・兵たちが来ちゃったよ」
 音に気づいたゴースト兵が機関銃を手に階段を駆け上がる。
「邪魔な手から凍らせてしまえばいいのだな?」
 精神を集中させて水海は氷術を放ち、銃を撃とうとする亡者たちの手を狙い凍らせる。
 ミサは雷術を使い、彼らの凍てついた腕を砕く。
「鍵を探して戻ってくるまで、ここを守らなきゃ・・・」
 侵入者を排除しようとやってくる兵たちを通すまいと、扉の先にいる生徒たちを守るように立ちはだかった。



「台はあれか・・・。動かすためにはまず、水路の水をなんとかしないとな」
 激流の中に沈む台を見つけ、水を止めようとアシャンテがポンプを探す。
「あれがこの階を流れる水を止めたりする装置かな?」
 ラズは兵がポンプを操作しているところを壁際に隠れながら確認する。
「離れたね・・・」
「完全にこの場を離れるまで待とう」
 ポンプの傍から兵たちが離れた数分後、アシャンテとラズはポンプを止めた。
「先に誰かポンプを止めたか」
「私たちは台を動かしましょうか?」
 虚雲と星は水路へ下りて足場となる台を動かす。
「この辺かしら?」
 疲れてしまった星は、中途半端な位置で台を動かすのを止めてしまう。
「ギリギリ落ちないか」
 左右を壁に遮られ後30cmは台を動かさないかぎり通れない。
「これを飲んでもう一頑張りしてみてはいかがですかな」
 玲がティータイムの紅茶を星に差し出す。
「ふぅ・・・温まるわね」
 やる気を取り戻した星はもう一度台を移動する。
「うぅ、わりと大変だね・・・」
 北都と昶も台を動かそうと奮闘していた。
「背で押してみるか?」
「そうしようか」
「私たちも手伝うわ」
「せーの・・・。結構力がいりますね・・・」
 美羽とベアトリーチェも協力して移動させる。
「まずいですよ、兵が戻ってきました!」
 台を動かしていた陽太が怒りの形相で戻ってくる兵の姿を見つけた。
「いったいん水路から上へ上がりますわよ」
 エリシアも急いでハシゴを登った。
「なんで水が止まっているんだ?」
 再び水路に水を流そうと兵がスイッチを押す。
「はぁわぶっ」
 登り遅れた虚雲が水路に流されていく。
「ん?今・・・誰かの声が聞こえたようだが」
 スイッチを入れたとたん、何者かの声が聞こえたと兵が周囲を見回す。
「・・・・・・」
「そりゃこんな声か?」
 彼の振り向き様に、オゼトに睨ませ梓が恐れの歌を歌う。
「く・・・侵入者か・・・」
 なんとか平静を保とうと両手で耳を塞いだ。
 隙をついて待機していたアシャンテがポンプを止めた。
「スリリングねぇ〜あらっお化け!?きゃー怖いー。きょんーコレ本物かな?どうしよう、私興奮してきたわ!」
 空気を読まず星は写メ取りまくる。
「星伯母さんっ呑気に写メってる場合じゃない!殺されるって!」
 ハシゴを登りびしょ濡れになった虚雲が離れるように言う。
「このクソアマがぁあっ」
 足元に機関銃の銃弾を撃たれた星は、濡れた靴を床に滑らせて転んでしまった。
「何するのよ、危ないじゃないのっ」
 星が国語の教科書で殴りつける。
 まったく痛覚のない兵は苛立ち、彼女を今すぐ殺したいような目つきで睨む。
「痛み感じないの・・・?ならどうして貴方たちは私たちを襲うの?貴方たちには私の言葉、通じてるわよね?」
 侵入者を殺すか捕獲しろと言われている兵にとっては理解不能の言葉だった。
「センセイがちゃんと聞いてあげるから、悪いことはやめましょう?おいたがすぎるとオシオキしちゃいますよ?」
 説得しようとする彼女の言葉は、逆に兵の神経を逆撫でし、彼の怒りが頂点に達する。
「こちら54番、侵入者を発見した。捕縛せよ!」
 応援を呼び大勢の兵どもは、生徒たちが通った道とは違う別ルートからやってきた。
「ほないきますぇ」
 敵兵に向かってイルマがアシッドミストを放つ。
 怯んだ隙に玲は雅刀で斬り払う。
「数が多いですな・・・」
 他の生徒を守りながら戦う彼女にとって分が悪い。
「・・・。(消耗戦になりそうか・・・?)」
「後30体くらいか。こんなところで捕まったらどんな酷い目に遭わされるやら」
 オゼトに火術で武器を破壊させ、梓は氷術で兵を氷漬けにする。
「まずいな・・・。葛葉・・・」
「ん・・・」
 天 黒龍(てぃえん・へいろん)は兵の注意を逸らそうと紫煙 葛葉(しえん・くずは)に筆談で、メモ帳を使って紙飛行機を作るように伝えた。
 飛ばしてみるが一瞬見ただけで興味がないのかまったくの無視だった。
「・・・反応が、ない・・・」
 葛葉は虚しく飛ぶ紙飛行機を見上げる。
「心臓を貫いても動けるのか・・・」
 光条兵器で斬りつけてみても怯む様子はまったくない。
「はぐぁっ!」
 天井から這ってきたキラーパペットが黒龍の頭部を掴み、首に手をかけて捻り切ろうとする。
 彼を助けようと葛葉はゴーストの頭部を光条兵器で真っ二つに切り裂く。
 黒龍はバスタードソードに持ち替えて兵の群れに突っ込む。
「まだやるのか・・・?」
 鮮血にまみれた切っ先を兵に向けた。
「く・・・。ククク・・・あぁやるとも」
「―・・・・・・なに・・・?」
 怪しげに笑う相手を黒龍は不愉快そうに眉を潜める。
「―・・・・・・・・・・・・っ!?なん・・・・・・だと・・・」
 倒したはずのキラーパペットが彼の脇腹を鋭い爪で貫いた。
「捕らえろー!」
 あっとゆう間に黒龍は簀巻きにされてしまい、助けようとした葛葉も捕縛されてしまった。



 遠くで台を動かしていた生徒たちが、急ぎ駆けつけてきた時にはすでに黒龍と葛葉は捕縛されてしまっていた。
「捕まってしまったようですね、大丈夫でしょうか・・・」
 陽太が心配そうに言う。
「追っていってわたくしたちまで捕まってしまう可能性がありますわ」
「そうね、今は鍵を確保しましょう」
 少なくともまだ命を取られることはないと思ったエリシアと美羽は足場となる台を動かす。
「これからまだ捕まってしまう人がいるかもしれませんな」
「そうどすな・・・」
 犠牲者がでないように玲とイルマは周囲を警戒する。
「これ持っていっていいですか?」
 幸が動かなくなったキラーパペットをつつく。
「え、いいと思うけど・・・。(もしかして解剖する気か?)」
 いつものことだと虚雲は諦めモードで言う。
「ではいただいていきますよ」
 嬉しそうな顔をして幸は検体をガートナ・トライストル(がーとな・とらいすとる)に運ばせ、ずるずると引きずっていった。



 確保した検体を幸が食堂に運び込んだ。
「調理台に乗せてください♪」
「この辺ですかな?」
 ガートナは検体を台の上に乗せてやる。
「包丁がありますね」
 検体解剖ように使おうと手をかけたとたん、料理以外で使うなと弥十郎の念の籠もった声が聞こえたような気がした。
「冷気で作ったメスにしておきましょう・・・」
 アルティマ・トゥーレの冷気で作ったメスを使うことにした。
 検体の身体にメスをズブリと、入れるとメガネに返り血が飛ぶ。
「何か分かりましたかな?」
「えぇ中身に継ぎ目があります」
 覗き込むガートナの方を見て検体から肝臓を取り出す。
「姚天君の仕業ですね・・・」
 幸は憎らしそうに亡者の内臓を見つめて拳を握り締めた。
「そこにいるのは誰だ!」
 侵入者を探し食堂にやってきた兵たちが幸たちを見つけてしまう。
「―・・・迂闊でしたね。集中するあまり気配を察知できませんでした。ここは大人しく捕まりましょう」
 大勢に銃を向けらては分が悪く、ここを出たとしても重症を免れないと思った幸はガートナと捕まった。