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【海を支配する水竜王】孤島からの救出手段を確保せよ

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【海を支配する水竜王】孤島からの救出手段を確保せよ

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第9章 硫酸を撒き散らす生物兵器

「レヴィアさんを捕まえたやつ、どこにいるんでしょうか」
 敵に気づかれないように緋音とシルヴァーナはブラックコートを纏い、周囲を警戒しながら慎重に道を進む。
「―・・・敵に気づかれてしまったんですか!?」
 禁猟区が反応し、気配を察知した緋音は慌てて辺りを見回す。
「後ろにいるわ!」
 空飛ぶ箒に乗っているシルヴァーナたちの背後を狙おうと兵が銃口を向けていた。
「気配を隠していても、影で丸見えだぞ!」
 兵に機関銃を乱射され、バランスを崩した彼女たちは床へ落ちてしまう。
「これでもくらいなさいよ!」
 シルヴァーナは兵に弾幕ファンデーションを投げつけ逃げようとする。
「くそ、何も見えん!追え、追うんだぁあー!」
 ゴースト兵は怒鳴るように言い、侵入者してきたシルヴァーナを探す。
「いったかしら?」
 壁際に身を潜めている彼女は離れたか確認する。
「ふぅ、いったようね」
「みぃつけた」
 安心して箒を乗ろうとするシルヴァーナたちを、侵入者たちを探している別の兵が見つけた。
「しまった・・・!」
 手足を拘束され簀巻きにされてしまった。
「オメガさんの友達を捕まえて何をしようとしているんですか・・・」
 緋音は兵を睨みつけて問いかける。
「教えて欲しいか?」
 ニヤリと笑う兵が目的を喋るのを待った。
「やっぱやーめた」
 小ばかにしたように言われ、緋音は悔しさのあまり怒りの表情になる。
「(絶対に目的をつきとめてやります)」
 目隠しをされた彼女は企みをつきとめようと決心した。



「任せてくださいねアウラさん!オレらがキッチリ守らせてもらいますんで」
 地下1階にいる七枷 陣(ななかせ・じん)はアウラネルクに向かって自信満々に言う。
「―・・・守る・・・?そなたがわらわをか?」
「守れんかった人がいるんですよ・・・ヘルドさんっていう人ですけど。ま、アウラさんが嫌がっても徹底的に護衛しますよ」
 妖精は不思議そうに眉を潜める。
「そなたは自分が傷つくのを恐れないのかぇ?」
「考えついたことは絶対やるだけやらんとね。・・・後悔だけは、したく無いんで」
「覚悟あってのことなのじゃな」
「もぉ、何落ち込んでるんだよ陣くん!ボクたちがアウラさんを守ることに変わりないんだから、沈んじゃダメだってば!」
 気落ちする陣に向かってリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)が横から口を挟む。
「ゴースト来た時くらいはシャンとしてよね、無能くん♪」
「じゃかしいっ」
 陣はムスッとした表情でリーズのもみあげを引っ張る。
「そういや、その捕まってる人・・・ってか水竜さん?どんな人なんです?外見とか、人柄とか」
「リヴァイアサンは深い海の色、10mくらいの巨大な水竜じゃ・・・。口数は少ないのだが・・・困っている者を放っておけないやつじゃな」
 静かに話しを聞いていた彼は良き友を放っておけないというこの妖精も、困っている誰かを見捨てられない性格だと感じた。
「ボクも護衛させてもらうよ」
 エル・ウィンド(える・うぃんど)もアウラネルクの護衛役をしようと頼み込む。
「―・・・ボクのことを覚えているかな?」
 忘れていないか不安そうな口調で言う。
「そなたはたしか・・・病気の者を助けたいからマンドラゴラを分けてくれといってきた者かぇ?」
「あぁそうさ。どうしても助けてあげたい人たちだったから」
「無謀にも武器を捨てるとは・・・。わらわがそなたを殺そうとしたらどうするつもりだった・・・」
「ちゃんと伝えれば分かってくれると信じていたからさ」
「そなたたちがいてくれれば安心じゃな」
 ニカッと笑う彼につられて妖精も思わず微笑んでしまう。



「凄い水しぶきね・・・大丈夫?」
 リーズはニヤッと陣の方を見る。
「これくらいのしぶきでオレの炎は消えんから。なんやこの霧・・・この程度の水蒸気で術は・・・わぶっ!」
 白い霧を吸い込まないように、陣はとっさに両手で口を塞ぐ。
「こいつら・・・病棟にいたモンスター!?何でこんなとこに!」
 漂う硫酸の霧の発生源へ顔を向けると、病棟で遭遇した生物兵器、ヒューマノイド・ドールたちが酸を撒き散らしながら接近してくる。
「煙は絶対吸うな、血ぃ吐くぞ!」
 陣の声にエルたちも服の袖で鼻と口を塞いだ。
「霧・・・だったら凍らせてしまおう!」
 硫酸の霧を凍らせようとエルが氷術を放つ。
「セット!ファイアーストーム・・・ん?それなら別のやつを!・・・・・・セット!クウィン・・・・・・あ、あれ!?」
 指先に纏った火術の炎が水しぶきでプシュンと消されてしまった。
「む〜のぉーう♪」
 ぷふっと笑うリーズの方を陣がサッと振り返ると少女は目を逸らした。
「え、何・・・。不発!?」
 氷術で酸を防いでいるエルが、しょんぼりする陣を見る。
「あれだね、犬の悲しい鳴き声みたいに聞こえるよ」
「そりゃ、くぅーんや!オレの術はそんなんじゃないっ」
 2人のショートコントにアウラネルクは後ろを向き笑いを堪えた。
「相変わらず面白いやつらじゃのう」
「ち・・・違っ、これはちょっとしたハプニングですって!」
 慌てて言う彼の姿がさらに面白かった。
「えーっと・・・こういう悪条件の時ってどうしたらいいんスッかね」
「炎の外側を包むように雷系の術を使うとかはどうじゃ」
「そんな手段があるんスッね」
 陣は納得したように頷く。
「ボクがサポートするから大丈夫だよ」
「―・・・わらわも陣の手助けをしよう」
「じゃあボクは酸のガードだな」
 ゴーストの心臓部の裂け目から発生する硫酸をエルが凍らせた。
 陣が巻き起こす炎の嵐に向かってリーズは轟雷閃を放ち、妖精の雷術で雷の気を制御する。
 凄まじい電撃が地下内を走り、死者の身体が赤々と燃える。
「これだけ炭にすれば大丈夫なんかな。ちっとしたら再生するんスッけどね」
「それなら再生し始める前に行こう」
 エルたちは階段を降り、地下2階へ向かった。