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謎の古代遺跡と封印されしもの(第2回/全3回)

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謎の古代遺跡と封印されしもの(第2回/全3回)

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・『封印』への道

「あれから地下へ向かったのは二人だけですか」
 地下へのエレベーターがあるへ通じる通路をすいかとイーヴィは歩いていた。
「そうよ。他には特に誰も通らなかったわ。無線では最上階へは人が入ったって連絡は来たけど、大変な状況みたい」
 イーヴィはすいかにガーディアン出現の事を話す。
「むむ、守護者といいこれは遺跡が本格的に動き出したみたいですね。とりあえず上は他の人に任せるとして、こっちは進んでいきましょう」
 二人は前進していく。
「そういえばさっき無線で『封印された五体の兵器』の話があったわ。あの地図の五ヶ所と関係あるんじゃないかしら?」
「数は合いますね。それにもしここで造られれているとしたら……その技術が眠っているかもしれません。もっとも、それだけではない気もしますが」
 いろいろと思考を巡らせる。そうこうしているうちに小部屋に辿り着く。
「なるほど、エレベーターというわけですか。その前に」
 イーヴィから無線を受け取り、伝達する。
「地下ではもしかしたら通じなくなるかもしれません。今のうちにこの事を知らせておきましょう」
 すいかが地下への行き方をトランシーバーで流す。実際彼女の推測は当たっていた。リヴァルトが使ってなかったのは、地下まで電波が遮断されていたからである。


「ここはやっぱり研究所なのかしら?」
 月実は周囲を見渡しながら呟く。無菌室のような部屋を出た後、いくつかの扉が通路の両端にあった。それがオートロックのスライド式のものであったために、ここがかなり発達した施設である事が窺えた。
「でも普通、これって閉じてるもんじゃない? なんでほとんど開いてるのか……」
 リズリットは訝しんでいる。
「先に通った人が開けたんだろうよ。ピッキングとかで」
 日和が言う。
「そう簡単に開けられるとは思えないが。念のため中を調べていくか」
 悠姫が一室に足を踏み入れる。中には用途不明の道具がいくつも置かれていた。
「拘束具、かしらこれ? まさか人体実験を?」
「そのようね。非合法な実験をする際に、被験者を抵抗させないように……って月実、着ようとしない!」
 リズリットが怒鳴りつける。
「向こうの部屋も似たようなものだった。ここは研究所、もしくは実験施設なんだろうな」
 日和とマールが戻って来る。
「ここが控室だとすると、手前の部屋はほんとに消毒するか何かをするための施設だったのだろうか?」
 と、悠姫。研究者が純粋な結果を必要としたなら、一切の細菌の侵入さえも許さなかった事だろう。
「何にせよまだ奥がありそうだ」
 通路はまだまだ先まで通じているようだった。


「ここです。間違いありません」
 リヴァルト達は封印の扉の前まで来ていた。ここに来るまでの間、リリエを中心に守護者との対話を続けてきたため、この遺跡の事がある程度判明した。
 ここは兵器開発を行う研究所で、古王国の女王所属の開発部とは異なる独自の施設であること。曰く、自分自身もまたここで造られた『成果物』であると。魔導力連動システムによってこの遺跡を守る力を得ていたが、出力デバイスが消失したこと。
「この先に隠された何かがっ?」
 ひなが口を開く。
「間違いないでしょう。ここで造られた成果か、あるいは……結局あの地図の事は分からず仕舞いでしたね」
 緋音としてはその事が気がかりだったようだ。いくつかの小部屋を守護者に開けてもらい、中を調べたが手掛かりは掴めず仕舞いだった。
『この扉は……この大陸で生まれた者には開ける事が出来ない。主がそのように造ったのだ』
「本当ですか、ノインさん」
 ノインというのは、名もない守護者を呼ぶ際にリヴァルトがつけた呼称だ。無貌――Nein Gesicht。厳密に言えば表現としては間違っているのだが、ノインというのが女性の名前っぽいからという事らしい。当の守護者は無言のうちに受け入れているようだ。
『貴様にはどうやらその資格があるようだ』
 リヴァルトが近づくと、静かに扉が開き始める。
「危ない!!」
 クライスの反応は早かった。扉の光の先から波動砲のようなものが飛んでくる。
「クライス、1人ではきついだろう。わたしも援護する」
 ローレンスもまた前に出る。
 二人の力でそれを弾き返す。
「おい、俺達を嵌めたのか!?」
 レイディスがノインに向かって怒鳴る。
『言ったはずだ。扉の先は知らぬと』
 封印の扉は開いたが、通路はまだ続いているようだった。そして正面には三体の機械仕掛けのガーディアンらしき影。
『試作型機甲兵ドゥーエ、セッテ、トレンタ。機甲化兵計画の初期ロットだ』
 ノインが説明する。
「これが封印されしもの?」
 終夏が疑問形で呟く。
「まだ通路みたいだぜ。大物は一番奥ってことだろ? ってことはコイツはさながら魔王の手下一、二、三だな」
 光条兵器を構える周。
『その装甲は退魔の力を有している。さらにここで開発された特殊な素材が使われてる。並みの武器や魔法ではびくともしないだろう。だが機械だ、電気を浴びせれば動きは鈍るはずだ』
「ならば……」
 ローレンスが轟雷閃を一体に放つ。その攻撃に続いてクライスが踏み出す。
「く、硬い!!」
 渾身の一撃を持ってしても受け止められてしまう。
「クライス君ファイトー、おー!」
 クライスのパートナー、サフィ・ゼラズニイ(さふぃ・ぜらずにい)が声援を送る。
 他の二体はそれぞれリアトリス、蘭丸、周、レイディスらが接近戦で、後方からひなや緋音、梓が魔法でサポートしている。
「く、電撃が効いてる今のうちになんとかしないと」
 ガーディアンはなかなか倒れない。だが、相手に反撃の隙を与えないほどの猛攻を見せる。
「く、もう少し攻撃に徹する時間があれば」
 その時、ついにサフィが動く。
「えーい、まどろっこしいわね」
 雷術で応戦する。そこにローレンスの轟雷閃が。
「……って、え、サフィさん?」
 一瞬気を逸らしてしまう。そのせいで止めを刺し損ねる。
「ん、知らなかった? こう見えてもあたし、ローレンス君くらいには強いのよ? でも雷術じゃちょっと威力が弱いわね」
「なら普段も戦ってよ」
 絶える事のない猛攻によってクライス達はなんとかガーディアンを撃破する。
『トレンタが破壊された、か』
 ノインはそれを静かに静観していた。出力デバイスがない以上、自分は下手に魔力を使えない。そもそも、守護者たる彼女には手を貸す義理すらない。
「後はこいつらか。しっかし光条兵器すら効かないとは……っておい!」
 周は思わず飛び退く。敵の頭部の兜のような部分が開き、先程の波動砲が放たれる。
「こんなん当たったらシャレになんねーぞ!」
「しかも電撃以外の攻撃はほとんど効果なし、ですか」
 ウイングもまたあらゆるスキルを駆使するが、効果は今ひとつだ。

 封印を目の前にして、地下の一行は苦戦を強いられている。


        











             ***



 封印の扉で戦闘が行われている時、「それ」は静かに目を覚ました。

「……迎えにきたのね。ジェネシス」

 『研究所』の最も深い場所で、それの意識は鮮明になっていった。

「ふふ、ふふふふふ。あはははは。ようやく、ようやく『自由』になれるのね」
 
 鎖に縛られた身体を動かそうとする。


 その時は刻一刻と近付いていた。




To be continued……