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彼氏彼女の作り方2日目

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彼氏彼女の作り方2日目

リアクション

「しかしまた、とんでもないことになったね……」
 講義の話を引き受けたときに想像した物とは大きくかけ離れた物へとなった最終日のスタイル。
 一体どこで何を間違えたのかと、直は苦笑する。
「こんなモンに答えなんざねぇだろ。あったら、恋愛講座自体必要ない」
「それはそうだけど……」
 着物を着たリーズ・ディライド(りーず・でぃらいど)が、大きく足を踏み出せない服に悪戦苦闘しているのを小尾田 真奈(おびた・まな)がサポートする。部屋のあちこちではそんな風に和服を着て歩いたり、畳の上で長時間の正座に苦しんでいたりお茶を淹れる生徒、執事服を着て凛々しくトレイを持つ女生徒や、スースーする足下が落ち着かず壁側で落ち込むメイド服を着た男子生徒など、色んな姿で練習に励んでいた。
 最終的に決まった最終日の内容は“可愛らしい内装で執事&メイド姿でおもてなし”を基本とし、和装がお好みの審査員に対しては、茶室も用意して和の心を存分に味わってもらおうということになった。
 さすがに全部の要素を取り入れるほど広いスペースは無いので、ここに集まったメンバーの意見から人気の物を選んだようだ。
 ポポガも、ハロウィンではバニーガールになったりと女装には何の疑問を抱かないことからメイド服を着用してはリアに着替えるように怒られていたり、好みの分野があることで張り切っている京子左之助を横目にと共に配膳指導にあたっている。その中に変熊の姿が見えないということは、また何かやらかしてに追いかけられているのだろうか。
 そんな騒がしい会場を離れ、七枷 陣(ななかせ・じん)仲瀬 磁楠(なかせ・じなん)は道連れだと言わんばかりにスパークから手渡されたメイド服に袖を通すことなく更衣室で見つめ合っていた。
「……っは、お前何言ってんねん」
 何となく気付いていた、だけど認めたくなかった。ざわざわする心を抑えるようにいつも通り振る舞う陣に、磁楠はぐしゃりと前髪を崩す。
「聞こえなかったのか。お前は、私の様にはなるなよと言ったんだ」
 パラパラと上げていた前髪が崩れ、陣の予想は確信へ変わる。
(髪も肌も色が違うし目つきはキッツイし、ちょい老けてるし……でもその顔は見間違えるワケ、あらへん)
「私の真名は……七枷陣。ここではない別の未来のな」
 激しい衝撃も走らなければ、やっぱりという言葉も出なかった。
 自分の身体に気持ち悪いくらい馴染むヒロイックアサルトに、自分と同じ「セット!」の詠唱文句、蒼紫の炎。
 ただ漠然と、そうなのだろうと思う節はあったので、磁楠を見る陣の瞳は穏やかな物だった。その目を見て、磁楠も落ち着いて真実を口にする。
「鏖殺寺院にパートナーと親友達を殺され、狂い、復讐鬼に身を堕とした末に寺院を滅ぼし、英霊へと祭り上げられた道化の成れの果てだよ」
「さよか、ほんなら全っ部辻褄合うわ」
 何で自分が最初から磁楠を毛嫌いしていたのか。正体が分かれば答えは簡単だ、人は自分を見るのが不愉快だから。“自分の中にもある相手の嫌な所”を見ていたに違いないと陣は笑う。しかし、それと同時に込み上げるイライラした気持ち。自分だと言うなら、こんな簡単なこともわからなかったのだろうか。
「お前、オレのくせにアフォちゃう? お前の世界に「仲瀬磁楠」つー英霊は居なかったんやろ?」
「どうだろうな。復讐鬼だった私に味方がいたかどうか……同じ未来にしないためにも、自らを引き替えにしてでも全ての元凶を祓――」
「だーから、それがアホやっつってんねん。お前がいることで、確実に違う未来になってる。仲瀬磁楠なんて英霊になってたまるか」
 自分の目を釣り上げて、自分の真似をしているつもりの陣に磁楠は驚きを隠せない。
「オレはオレのまま生きる。せやからお前が居た世界の結末になんてなるか。幾らでもオレらが幸せな世界を見せたる、せやから……」
 磁楠はこの世界を夢の続きだと言った。全てを失った彼にとって、少し違う幸せな時代に戻ったかのような感覚は、まさに夢のようだったのかもしれない。
 だけど、今この世界の大地へ立ち、控えめながらも感情の起伏だってある彼は、ここで生きている。
 やり直すことなんて出来ないのは陣にもわかってる。この世界の自分を幸せにしたところで、磁楠には何1つ戻ってこない。
「……赦してやれよ、自分の事を」
 時間は戻せないけど、これから過ぎる時間の中で変わっていくことは出来るはずだから。
 ここで別の幸せを掴むことは、絶対仲間の誰も怨みはしないと、陣は笑う。
(まさか自分に慰められるとはな……私も焼きが回ったものだ)
 多分、自分を赦す事は絶対出来ない。けれど、そう固く閉ざしていた心のどこかを、陣に砕かれた気がした。
「ちょっ……オレ今良い事言ったよね? こっ恥ずかしい台詞だったけどとっても良い事言ったよね!?」
「増長するな未熟者。私の何分の一の経験も無い癖に良くもまぁ大口を叩けたものだ」
 ばさりと自分の分のメイド服を陣に放り投げ、塞がれた視界にもがく陣を見て磁楠は笑う。
(ありがとう……とは、オレに言いたくないものだな)
 それでも、心が軽くなったのは嘘じゃない。素直に認めたくない磁楠は陣から飛び出る罵声にいつも通り返して悔しさを悟られないようにした。
「あー!! いつまでも出てこないと思ったら、磁楠の兄貴は何やってんだよ!」
 スパークがメイド服を着たまま更衣室に飛び込んできて、余計に空気は和やかな物になる。
 本人達は口論をしているつもりだろうが、それは仲の酔い男兄弟のような親友のような雰囲気だった。



 さて、衣装と内装が決まり贈り物はと言えば成果発表会という色んな人へ配ることを考慮してお菓子に決まったのだが、アクセサリーを押していた芳樹は残念な素振りを見せずにアメリアと包装紙などのデザインをまったり相談していた。
「講座の発表会は別の物に決まったけど、僕は色んな人の意見を聞いて参考になったよ」
 彼女に贈りたいと思う髪飾りや、花のモチーフを選ぶなら花言葉を気にしてみたりと勉強になる部分もあった。色んな意見が出たけれど、特別な人には形に残る物をあげたいという気持ちは変わらない。
「私ね、そうやって沢山考えてくれた物を貰えることが1番幸せだと思うわ」
 ニコニコと微笑み合う2人を邪魔出来ず『金烏玉兎集』の玉兎も、ラッピングの材料を見ながらそっと話が弾みそうな可愛らしい物を2人の方へおいてみたりと見守っているようだ。
 そのお菓子のラッピングには、1輪のプリザーブドフラワーを添えることになった。
 何か1つに絞るよりも、その人に合わせて変えられる何かがあるほうが喜ばれるだろうという意見が集まり、中のお菓子と花の組み合わせは無限大に広がりそうだ。
「それじゃあ、最終日についてだけれど……」
 なんとか話がまとまってきた中で、直が全員に告知する。
「成果発表会の審査員は、一般生徒などを呼ぼうと思ってる。客層の性別や年齢は事前にわからないから、恋愛に期待する人たちの好みの人が来店するかはわからないけれど……張り切って接客すれば、縁が生まれるかもしれないね」
「客じゃなくても、店員として共同作業して芽生える恋や友情もあるかもしれねぇなぁ。ま、頑張れ」
 恋愛講座らしくなかった、恋愛講座の最終日――実践。
 今日決まった内装と衣装で、前回の講座で学んだ話術やお茶で持て成しつつ出逢いを広げる。
 普通の恋愛講座だと信じ切っていたは、その言葉に考え込んでしまう。
「恋愛講座って言うより、執事喫茶とかホストとか……そんな感じなのだわ」
「そうだね、相手を口説き落とすとこを主体と考えるなら、ホストやキャバクラな感じだね」
 も京の意見には同意するけれど、なにせ決まった基本衣装は女性が執事で男性がメイド。元より京しか眼中に無いとは言え、その衣装では言い寄られることも無いだろう。
(……出来れば、女装しないで済むとありがたいんだけど)
「唯も、そういう……ことしたい?」
 ちょっと拗ねたように見上げる京に苦笑して、唯は目線を合わせて頭を撫でた。
「そうだね、京お嬢様のご機嫌が戻るまでお持て成ししてあげたいかな?」
 恥ずかしくなってポカポカと殴る2人は微笑ましいものだが、は少し青ざめた顔で話を聞いていた。
(恋愛講座だって言ってたけど、出逢いの場まで用意されたんじゃ……)
 横目に見たテディは、そんな場所に陽が行きたいと言ったならどうやって守るべきかと真剣に考えているのだが、その真剣な顔が余計に陽の心へ針を刺す。
(こんなに、恋愛に興味あるだなんて知らなかったよ。テディの容姿なら、すぐにでも相手を見付けて、ボクなんか……)
 単なるパートナーとして一緒にいるんだから、そんなこと当たり前じゃないか。少し前の自分ならおこがましいとさえ思ってしまいそうな言葉だけれど、裏切られるのならこの場限りの言葉が欲しいと陽は震える唇を開く。
「あ、あのさテディ……ボク達って……友達、だよね?」
 驚いたように見開いた瞳に、やっぱり図々しかっただろうかと陽は不自然なくらいに目を逸らす。
 否定的な言葉を聞くくらいなら、やっぱり何も言うんじゃなかったと頭を抱えてテディの言葉を待った。
「陽、僕は……」
 自分の気持ちの半分も届いてない、寧ろ嫌われていると思っていたテディにとって、友達として見てくれているのは嬉しい。
 けれど、もっともっと踏み込んだ存在になりたい気持ちを押し隠して、その言葉に同意することは出来ない。
「ごごご、ごめん! 変なこと言ったよね、本当に何でもない、から……」
 大げさなくらいに振る陽の手を捕まえて、テディはぎゅっと握りしめる。びっくりしたようにこちらを見る陽に何かを伝えようとしたけれど、思いとどまってその口は閉じた。
(え、えぇっ? テディ、どうしたんだろう。……お腹でも空いたのかな)
 そうじゃないことは何となく気付いていたけれど、否定されるよりはこのままがいいと、陽も手を握りかえした。

 新たなる恋人や友人を作るのチャンスがありそうな最終日。
 その日に絆を深めるか乗り換えてしまうのか……それは参加者次第となりそうだ。

担当マスターより

▼担当マスター

浅野 悠希

▼マスターコメント

この度はご参加ありがとうございます、GMの浅野悠希です。

体調不良により遅延してしまい、申し訳ありませんでした。
最近は気温の差も激しく、知らず知らず負担がかかっているものです。
そんな中、まだ涼しいから大丈夫と常温保存したり、逆に冷蔵庫に入れていたんだからちょっとくらい……
なんて油断すると、私のように体調を崩すので皆様お気を付け下さいませ。

さて、投票要素を用いた結果、
内装は可愛いと和風が1票差、贈り物は食べ物と花が1票差、さらに花と小物が1票差。
衣装はダントツで執事&メイドに集まりましたが、和服も健闘しました。
しかし、テーマは楽しくしか相談者がいないためほぼ無投票扱いという凄まじい結果になりました。

よって3日目はリアクションでも発表しました通り、以下に決定致しました。
・可愛い内装の執事&メイド喫茶、男装女装入り交じり
・和風へのお召し替え、部屋替え有りの楽しい雰囲気
・来店記念は小さな花を一輪添えたお菓子

前回の元に、相手を真面目に口説き落とすも喫茶店として店員らしく振る舞うも自由です。
恋愛講座の名に相応しく、やっと恋愛対象と絡むことが出来ますので、店員としてお客様として、色んなスタイルで楽しんで下さいね。

そんな最終日は4月下旬発表予定ですが、まだ残っているリアクションがありますので、そちらで発表させて頂ければと思います。
また、今回は都合により個別コメントは一部の方のみ配布となっております。
全員に配布出来ず、申し訳ありません。

それでは、恋愛講座の実践も是非お楽しみくださいね。