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踊り子の願い・星の願い

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踊り子の願い・星の願い 踊り子の願い・星の願い

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【3・非難する人、される人】

 現在メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)は、パートナーのセシリア・ライト(せしりあ・らいと)フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)と共に空京の街を探し回っていた。
 実は彼女らはホイップと待ち合わせをしていたのだが。
 肝心のホイップはいつまで経っても現れず。
「どうしたのかなぁ……」
「もしかして、まだぐーぐー寝てるとか?」
「何か来られない事情があるのかもしれませんわ」
 心配になった三人は、彼女が宿泊している筈の宿屋を訪れたのだが。
 その部屋の前ではエル・ウィンド(える・うぃんど)高月 芳樹(たかつき・よしき)アメリア・ストークス(あめりあ・すとーくす)伯道上人著『金烏玉兎集』(はくどうしょうにんちょ・きんうぎょくとしゅう)らが何やら話をしていた。
 彼らから話を聞くと、それぞれデートの誘いだったり、石化の後遺症を心配で来たりしたらしいのだが。肝心のホイップは留守とのことで。
 それでますます心配度は深まり、メイベルはその場の全員と手分けして探すことにしたのである。ちなみにちゃんと別れ際に携帯番号を教えあうのも忘れていない。
 そういうわけで彼女らは心当たりを片っ端から探していき、今は空京デパート前にいた。
「はぁ。ここにもいないですねぇ」
「今日はヒーローショーもやってないみたいだしね」
「あと考えられるとしたらどこでしょう……」
 と、そのときメイベルの携帯が鳴り響いた。
「もしもしぃ?」
『もしもし、ボクだ』
「あ、エルさん。どうしたんですかぁ?」
『見つけた。でもなんだか怪しい連中に追われてるみたいなんだ、それも結構な数』
「え。そ、そうなんですかぁ? それで、今どこですぅ?」
『空京病院の近くだ。とにかく一旦切るからできれば応援に来てくれ!』
 そして、電話は切れた。

「あっ、すみません!」
「ああっ! せ、せっかくの特売品が……」
「シリウスさん、はやく!」
 通行人とぶつかりながら路地をひた走るシリウスと、それに続くホイップ。
 ふたりは先程の騒動のあと、またも現れた追っ手を撒こうとしていたが。
 やはり彼女らが目立つのに加えて、相手も追跡術を多少学んでいるらしくまるで振り切れる気配がなかった。
 どうしたものかと思考を巡らす彼女らの前に、誰かが立ちはだかった。回り込まれたかと緊張するふたりだったが、
「ホイップちゃん!」
 それは、ようやく追いついたエルだった。
「エルさん!」
 その姿を見て顔を明るくさせるホイップだったが。
 すぐに喜んでる場合じゃないと顔を引き締め直し、
「と、とにかく、話はあと! こっちへ!」
 エルの手をとって、空京病院の駐輪場へと駆け込んだ。
 そこは無駄に強固なコンクリートで四方を囲ってあるせいか、昼間でも少し薄暗く、隠れるには都合がいいと言えた。
「いたか?」「いえ、こっちへは来てないです」「くそ。どこへ行った!」
 シリウス、ホイップ、そしてエルは並ぶ自転車やバイクの陰に身を潜めて、追っ手の声が遠ざかるのを待った。
 一度誰かの靴音が響いてきて身体を強張らせたものの、すぐにそれも遠ざかり怒声もいつしか聞こえなくなった。
「行ったみたいですね」
 シリウスは軍用バイクの間から立ち上がり、衣装の埃を払う。
「ふぅ、危なかったぁ」
「ホイップちゃん、それであいつらは一体?」
「あ、うん。実はね……」
 ホイップとエルも立って事情説明を始めようとしたが。
 ふと、シリウスがチラチラとこっちを見ながら、なぜか居心地悪そうに頬を染めているのに気づいた。
 ? と意味が解らず首を傾げたホイップとエルだったが、そこでやっと自分達が手を繋ぎっぱなしだったことに気づいて、慌ててぱっと離れて急激に染めていた。
「……えーと、その。いいんですよ? いっそ私はいないものと思ってください」
「い、いえ、そんな違いますよ!? あ、でも全く違うわけじゃなくて! こういう状況でこういうの不謹慎っていうか、ああでも手を繋ぎたくないことはないのむしろ嬉しい気もあるかもって何言ってるの私!」
 気を使い始めたシリウスと、取り乱す純情娘ホイップに、エルは益々赤くなり耳まで染めてしまっていた。
「ねぇ」
 そこへ突如声をかけられ、色んな意味でビクウッ! と動転する三人。
 そんな過剰反応に、声をかけたリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)と、アリス・レティーシア(ありす・れてぃーしあ)の方が逆にちょっと驚かされた。
 彼女らとしては、ただ買い物途中にホイップを見かけて、誰かと一緒に逃げてるらしいのを気にして追いかけてきただけだったのだが。
 なんだかヘンな雰囲気を感じ取り、困ったように肩をすくめた。
 その後。
 場の空気が戻るまで一分ほど費やし、
「それでホイップちゃん、一体何が起こってるの?」
 リースの問いに、ホイップがこれまでの経緯をかいつまんで説明するまで更に数分を要した。
 それを聞く最中、エルはシリウスが一緒にいることでおおよその見当はついていたのか、ただ頷くだけだったが。リースの表情は、徐々に怒りを含んだものへと変わっていた。
 ただし怒りの矛先が向けられているのはホイップではなく。
(ミルザムさんの身勝手な行動でホイップちゃんが危ない目に……これはちょっと見過ごせないかも)
 話が終了する頃には、リースは怒りの視線をシリウスへ突き刺していた。
 シリウスはそれを感じつつも、気づかない振りをして顔を俯かせていた。
「話はわかった。そういうことなら、ボクに護衛を任せて欲しい。ホイップちゃんがこのままシリウスさんに付き合うつもりなら、また連中が襲ってくるだろうからな」
「いいの? それはエルさんに迷惑じゃ……」
「いいんだって。それを言うなら、ホイップちゃんだってシリウスさんを放っておけなくて一緒にいるんだろ?」
 図星をつかれたホイップは、もうそれ以上の反論はしなかった。
「私もホイップちゃんを放ってはおけないよ。ホイップちゃんは、ね」
「あたしも一緒に守るよ! このまま見て見ぬふりなんてできないもん!」
 リースとアリスも護衛を申し出ていく。もっともリースとしては、ホイップをこれ以上危ない目に遭わせたくないという想いもあったが。
「見つけたっ! おい、こっちだ!」
 と、そうした彼女らの葛藤を敵さんもいつまでも待ってはくれなかった。
 発見の声を受けて、ドタドタとやかましい足音が近づいてくる。
「とにかく、一箇所にとどまってるのは危険だしさっさと逃げるとしようか。皆、目をつぶって!」
 いちはやく動いたのはエル。
 味方が全員声に応じたのを確認すると、連中に向けて光術を発動させ目を眩ませる。
「走って!」
 そこから間髪を入れず指示を出すエルは、追っ手が迫りくる通路の地面へと向けて氷術を放って氷づけにしていく。
 目が眩んだ状況でも果敢に走ってきていた連中は、足元の滑りトラップにまんまと滑って転んでしてしまう。
 それを尻目に、エルはシリウス達の後に続いた。
 そのまま路地をひた走るシリウス達五人は、エルのおかげで後ろの連中からは楽々逃げおおせたかと思ったが。
「おっと。そう甘く見てもらっちゃ困るじゃんよ」
 路地の出口に、五人の鏖殺寺院が陣取っていたことでその楽観は吹き飛んだ。
 更に後ろからも、ところどころ転んで汚れた黒ずくめの衣装(大半はスーツだったが、中には何を勘違いしたのか黒い和服を着たのもいた)を纏った三人が追いついてきた。
「いけない、挟まれた……!」
 焦りを見せる彼女達と対照的に、連中はじわじわと嬲るように距離を詰めていく。
「ふふん、そっちは五人。こっちは八人やね」
「これなら楽勝で殺っちゃえるってカンジぃ?」
 連中のほとんどは覆面で顔を隠していたが、話し方や身体のラインから全員が女性であることがわかった。
 女性を傷つけるのは個人的に若干抵抗があるエルは、ラウンドシールドを構えつつどう切り抜けるかを考えるが。
 ふと、あることに気づいて口元に笑みを浮かべた。
「それはどうかな。こっちの味方も到着したみたいだぜ」
「え?」
 訝しげに思う五人側の更に後ろ、
「あれ。一緒にいるのはシリウスさんこと、ミルザム・ツァンダさん? 一体どういうことなんですぅ?」
「わからないけど、どうやらいいところへ到着できたみたいだな」
 メイベル達と芳樹達、計六人がそこにいた。
「これで十一対八。数の上でもこっちが勝ってるぜ?」
「く……戦闘ってのは数で決まるもんやないやろがぁ!」
 自分で数の利を喜んでた女は、勝手にキレながら腰の小太刀を抜き、他の連中もそれぞれメイスや短剣、薙刀など己の獲物を構えて。
 戦闘が始まる。
 芳樹は自分のライトブレードを抜き、横ざまに払われた薙刀の刃を止める。
「芳樹に手を出すなら、容赦しないわよ!」
 それを見たアメリアが機関銃を構えるが、薙刀女の方は小馬鹿にした笑みを浮かべる。
「ばぁか。そんな武器使ったら、流れ弾が味方に当たっちゃうわよー」
 が、それはほぼ無視される形で銃口からは火が吹かれ。思い切り右足首に五発ほど銃弾をもらうこととなった。
「ぎゃっ! あ、い、がああああああ!」
「バカはそっちよ。シャープシューターを活用すれば、機関銃でだってこうしてピンポイント射撃はできるんだから」
 のたうち回る薙刀女を、少し同情の篭った目で見るアメリア。
 それに今度はメイスの女が殴りかかろうとしていたが、
「そなた、わらわの存在を忘れてもらっては困るのじゃ」
 芳樹のもうひとりのパートナー、玉兎の放った雷術が思いっ切り背中にぶちあたり感電させられていた。
 芳樹はそんなたのもしいパートナー達に少し笑みがこぼれたが。
 ホイップがなんだか苦しげに足を押さえているのに気づいて、すぐに表情を一変させた。
「どうかした? まさか、石化の後遺症が?」
「え!? ホイップちゃん。そうなの?」
 それを聞きつけ慌ててエルも駆け寄ってくるが、
「あ、違うの違うの。後遺症とかは全然ないから安心して。これは、足の疲れがまた襲ってきて思うように動いてくれないだけだから」
「な、なんだ。心配させないでくれよ」
「そうだよ。もし万一のことがあったら、ボクは……」
 ほっとする芳樹とエル、そしてそんなふたりの気遣いが嬉しく同時に少し気恥ずかしくもあるホイップであった。
「おいこらぁ!! 戦闘中に、イチャイチャしてんなや!」
 そこへ小太刀の女がなぜか猛烈に怒りながら、ホイップめがけ一気に直進してきた。
 エルは相手の何だか異常な気迫をその身に感じながらも、躊躇することなく彼女の前に回り、女の小太刀をラウンドシールドで受け止めた。
 だが、間髪入れずに女は、背中に隠すように挿していたもう一本の小太刀を左手で引き抜き、即座に振りぬいてきた。
(小太刀の二刀流!? やばっ……!)
 気づいて反応しようとしたエルだったが、脳に避けろという命令がいくころには、右の脇腹に小太刀が突き刺さってしまっていた。
「あぐっ……」
「エルさん!」
 声をあげるふたりに対し女はニヤリと邪悪に笑うと、すぐさまその小太刀を引き抜く。
 血が一気に溢れ出し。エルは痛みに呻きながら膝を折り、ホイップは衝撃のあまり思わず言葉を失った。
 しかし女の方はそのまま容赦なく、もろともに始末すべく右の小太刀を振り下ろした。
「やめろ! それ以上手を出すな!」
 だがその攻撃はすんでのところで、芳樹のライトブレードによって止められる。
 小太刀女はチッと舌打ちしつつ間合いを計りながら、芳樹と切り結んでいく。
 一刀対二刀の戦いではあったが、戦闘というのは数で決まるものではない。
 女はその自分自身の言葉を裏付けさせられるように、徐々に芳樹の剣に押され、じりじりと後退する羽目になっていく。
「なんだ。得意なのは奇襲だけみたいだな」
 冷静に感想を述べてきた芳樹に、女はあからさまに怒りを顔に出しつつ、
「なんや、悪いか? ウチはそういう戦法が性に合っとんのや!」
 履いていた靴のつま先から、シュカッ、と太い針のようなものを突き出した。
「!」
 芳樹が目をむくのと同時に、針つき靴による蹴りが左の脛、いわゆる弁慶の泣き所に突き刺さった。
「「芳樹!」」
 即座に銃弾と雷術が飛んできたが、小太刀女は蹴りの勢いを利用して後ろに跳びそれを回避する。どうやらニンジャ系のスキルがあるらしい。
「芳樹、芳樹! 平気っ!?」
「大丈夫、傷は浅いですじゃ」
 脛を押さえる芳樹と、それを介抱していくアメリアと玉兎。
 そうして傷ついていく彼らと入れ代わりに、今度はリースがホイップを庇う位置に立ち、小太刀女と向かい合った。
(色んな人が傷ついてく……それもこれも、みんなミルザムさんが……!)
 リースは膨れる苛立ちを感じつつ、目線だけをまた当人へと向ける。
 そのシリウスはというと。
 先程からメイベル達が彼女を逃がすことを優先し、立ち回ってくれているのだが。
 敵の内の三人がつかず離れずの距離を保ったまま、時折軽く足元に銃撃を放つなどしてジャマしてくるせいで逃げるに逃げられないでいた。
 そこに黒い和服の女が一歩前に出て、シリウスへと言葉をぶつけてくる。
「抵抗しないで、さっさと死んだほうが楽じゃんよ」
「そんなわけには、いきません。私には、やらなければならないことがあるのですから」
「ふぅん? それって女王候補としての使命? それとも踊り子としての道楽?」
「…………あなたに、教える義理はありません」
「ははっ、返しに困ってる時点で覚悟の度合いが知れるってものじゃん」
 言葉による恥辱を受け、うっすら頬に朱がさすシリウス。
 場には様々な思いが渦巻いていく。
 そんななか、
「あたしはどうしよう。えーっとえーっとえーっと」
 アリスはひとり、おろおろと戸惑っていた。
(とりあえず、何かできること……できることを……あっ!)
 そのときふいに気づいた。
 襲ってきた連中の数は八人。
 アメリアにやられた薙刀がひとり。
 玉兎の雷を受けて倒されたメイスがひとり。
 リースと向かい合っている小太刀がひとり。
 メイベル達と牽制し合っているのが三人。
 そしてシリウスに暴言を浴びせている黒和服がひとり。
 合計七人。ひとり足りない。
 そして。アリスは、シリウスの後ろに忍び寄る、短剣を持った影を確かに見た。
(ひらひらの服を来たお姉さんが危ない!!)
 他の皆は、敵に対していたり怪我をした味方に気を取られたりで気づいていない。
 唯一気づいている自分がなんとかしなきゃと、急いで駆け寄るアリス。
 だが、影はもうシリウスのすぐ後ろまで迫っていて。今から武器を構えて、攻撃をして、という行動を起こしていたのでは間に合わない。
(うーん……これしかないか!)
 アリスの決意は、早かった。
 シリウスが背後に気配を感じて振りかえったのと、
 短剣女がシリウスめがけて武器を突き出したのと、
 アリスが勢いよくシリウスの前に飛び込んだのは、
 ほぼ同時だった。
「おねーちゃん!」
 はじめに絶叫したのはリースだった。
 アリスにはその声がやけに遠くに聞こえて。
 自分の胸元に突き刺さった短剣がぼんやりと見えた。
(あ〜あ……。ほんとは、なにかできればよかったんだけど……あたしには身を挺して守るくらいしか今は出来ないからなぁ)
 ぐらりと身体を傾かせ、
(リースを悲しい目にあわせるのは本望じゃないんだけどなぁ……やっぱり……あたしももっと強くならなきゃだめか……昔みたいに……)
 心の中でそう思いながら、アリスは意識を失った。
 そのまま地面に倒れる前に、猛スピードで走ってきたリースが彼女の体を受け止める。
「おねーちゃん……」
 リースはキレそうになっている頭を必死で押さえながら傷を確認する。
 見れば、短剣はちょうどアリスの両胸の谷間に刺さっていた。
 あまり血も出ていない。冗談のな話だが、どうやらアリスの大きめ胸が刺す際に邪魔になって、さほど深く刺さらなかったようだ。
 気を失ったのも、傷のせいと言うよりは刺されたことに対するショックのせいだったのかもしれない。
 ひとまず安堵をするのと同時に、リースはエンシャントワンドを思い切り握り締めた。
「チッ、余計な邪魔をしてくれたな、このガキャ……ぁ、え?」
 アリスを刺した女は、一度まばたきをした。
 する前はなんでもなかった両手が、した後には二本の氷柱が深々と突き刺さっていた。
 もういちどまばたきをした後、襲ってきた猛烈な痛みで絶叫した。
「よくもやってくれたね。あんた達なんか、死んじゃえばいいんだよ!!」
 リースはそう宣言するや否や、四方八方に氷術と雷術をぶちこんでいく。
 それはほとんど敵も味方も見境無く、暴走する勢いで放たれ続ける。
「な、なんかヤバイじゃんアイツ……仕方ない。皆、ここは一旦退くじゃんよ!」
 黒和服がそう指示するなり、連中はそれぞれ負傷した仲間を背負いながら、散り散りになって逃げていった。
 全員が逃走した頃には、リースのSPも底をついていた。 
 だが。その怒りはまだ収まってはいなかった。
「……何でこんなことになったの」
 睨む先は、当然のようにシリウス。
「それもこれもあんたが勝手に抜け出して踊りに行こうとするのが悪いんだよ!!」
 まぁまぁとホイップが仲裁に入ろうとするが、リースの怒りはそれでも止まらない。
「自分の立場もわきまえずにふらふらした結果がこれだよ? ちょっとは責任感じなさいよ。こんなことばかりする女王候補なんかより、よっぽどティセラさんのほうがましね」
 シリウスの方もさすがにそれには言い返そうと口を開かせたが、開いただけで言葉は出てこなかった。
 何を言っても言い訳にしかならないと、自覚したのかもしれない。
「……女王候補を辞めるならそれでよし、やめないなら私は貴方の敵になるから。覚悟しておけ……この傀儡が!」
 後半かなり暴言になりながら、言いたいだけ言い終えたリースはアリスを連れてその場から離れるのだった。
 結局最後までシリウスは、ミルザム・ツァンダは、何も言えなかった。