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ブレイクタイム


 エリア1以外では、もう捕まらなかった人が移動し終えて、それぞれ休息に入っていた。各エリアごとの、捕獲者ゾーンがそのためのスペースとなっている。

 エリア2。
「まさかあんな風に捕まるとは思ってませんでしたね」
 が呟いた。
「エリア3の方もダメだったようだ。合流して他のエリアも仕留めるというのは失敗してしまったな……」
 ベアトリクスがそれに応える。
「どこのエリアも守りは堅かったようですね……そこまで本気だとは」
 気軽に出来るという触れ込みではあったが、ここまで壮絶な戦いが繰り広げられるとは考えていなかった。

 エリア3。
「お疲れ様ですぅ」
 メイベルらが戦いを終えたエリアの人達に軽食と飲み物を振る舞っていた。
「サンドウィッチと紅茶、コーヒーがあるから、適当に摘んでね」
と、セシリア
「せっかくですから、わたくしは最終戦の様子を撮ってきますわ」
 フィリッパは最後の攻防が行われるエリア1の撮影のため、一足早く移動しようとした。
 
「ねえ、カガチ。煮干しなくなっちゃったよ」
「まさかあんな勢いで缶を蹴るなんて思ってもみなかったからねぇ……まあ、あれには及ばないけど、別の煮干しがあるからあげるよ」
 カガチとみわは缶について話しているようだった。
(参ったねぇ、今更ほんとの事は言えないよなぁ……)

 エリア4。
「飲み物くらいならあるから、自由に飲んでいいよ」
 久我 グスタフ(くが・ぐすたふ)が、ティータイムでドリンクを用意した。彼は守備側のアリーセにパートナーであるが、直接今回のゲームに参加していたわけではない。アリーセ達の様子を見に、保護者の立場で参加していたらしい。
 なんだかんだで大半の人が捕まり、時間を考えると二巡目もなさそうな感じなので、このまままったりするのも悪くはないといったところだ。
「終わるまでまだあるし、腹ごしらえでもしとくか」
 垂は持参したおにぎりを食べ始めた。夜通しではお腹も減るだろうと、作って来たのだった。
「おお、朝霧。用意がいいじゃねーか」
 カオルがやってきた。
「食うか?」
 顔見知りだし、せっかくなので分けてやろうと差し出した。
「お、サンキュー」
 カオルがおにぎりを受け取り、口に入れた。見た目には普通のおにぎりだが……
「むぐ……」
 そのまま顔を青くして彼はどこかへと去っていった。
「一体どうしたってんだか」
 彼女のおにぎりの味が、それほど壮絶だったのだろう。
 なぜおにぎりをそこまで絶望的な味に出来るのかは、おそらく誰にも分からない。

 エリア5
「うーん、ちょっとだけ入れ過ぎたかなぁ」
 弥十郎は頭を抱えていた。すぐに酔いが冷めるように薬を調合したものの、多少のアルコールは残っているらしい。
 短時間とはいえ酔っ払いに扮していたのだから、薬を飲んでも多少は回復に時間がかかる。
「実はずっとゴーストに後をつけさせてたんですが、一般人だと思ってマシタ」
 守備をやっていたジョセフが弥十郎に話しかける。
「頑張ったからねぇ」
 禁猟区にかからない――つまり、演技でない事が肝心だったのだ。缶を蹴る、という気持ちがあっては察知されていただろう。
「それにしても、駅の中から一人でぶつぶつ喋りながら出てきた時は、変な人だと思ってしまいマシタ」
 弥十郎がきょとんとする。
「あれ、ワタシは構内にいた人と一緒に出て来たはずだけど……」
 だが、自分以外にその人が見えてる者はなかったらしい。
 目の前にはジョセフのゴーストが浮いている。こちらはネクロマンサーが従えているものであるが……
「まさかねぇ……はは」
 どうやら空京にも、天然ものは存在するらしい。


 それぞれの時間を過ごすなか、いよいよ最終決戦の火蓋が切って落とされる。