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「暗き森のラビリンス」毒草に捕らわれし妖精

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「暗き森のラビリンス」毒草に捕らわれし妖精

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第1章 幼き心の残酷さ・・・

 孤島の施設に捕らえたリヴァイアサンを各学園の生徒たちに救出され、さらに魔力タンクまで破壊されてしまった十天君・姚天君は、ウィルスを完成させることが出来なかった。
 彼女たちは次なるターゲットとして、今度はイルミンスール森の妖精アウラネルクの魔力を奪ってしまおうと考える。
 守護天使と剣の花嫁を葬るため、ウィルスを完成させるための道具として確保したのだ。
 全てはティセラを女王にすための計画なのだ。
 ウィルスはそれぞれ守護天使と剣の花嫁、別々の種族に効くようだ。
 シャムシエルが発症しないよう、姚天君は予防のために抗ウィルス剤を与えてある。
 姚天君の計画を再び阻止し、妖精を助けようと各学園の生徒たちが幻草陣の中へ入っていく。
 


「ありゃりゃ、陣くんたち先に行っちゃったねぇ。一刻も早く助け出してあげたいんだろうけどさ」
 突っ走る彼らを見て東條 カガチ(とうじょう・かがち)は、やれやれと頬を掻く。
「俺たちも行こうかなぎさん」
「うん、急がないと置いて行かれちゃ・・・う・・・・・・」
 カガチの傍へ駆け寄ろうとするが、柳尾 なぎこ(やなお・なぎこ)は足をふらつかせ、草の上へ倒れてしまう。
「なっなぎさん!?どうしたんだい急に!」
 急に倒れたなぎこの元へ走り寄る。
「もしかして・・・これが姚天君が作ったウィルスの効果なのか?」
 ぐったりと倒れる彼女を抱き起こし、手の平で額の汗を拭いてやる。
「―・・・カガチ、何か・・・体に力が・・・入らない・・・・・・」
 剣の花嫁にだけ感染するウイルスに感染してしまい、その影響で通常の能力からかなり減退してしまっている。
「そういやさっちゃんがウィルスがどうとか言ってたなあ。なぎさんは大人しくしてて。今、さっちゃんに連絡するから。―・・・もしもし、さっちゃん。あれ・・・?よしもう一度・・・。うーん、ここじゃまともに連絡出来ないか」
 携帯電話で連絡しようとするが電波が届きづらく、なかなかつながらない。
 一瞬つながってもすぐに切れてしまう。
「まともにつながるまで時間がかりそうだから連絡してないけど、さっちゃんがいる大学の方へ行こう」
 カガチはなぎこを抱えて空京大学へ向かった。



「ここが幻草陣の中ですかぁ・・・」
 メイベル・ポーター(めいべる・ぽーたー)は土の床から、棘が絡みついている緑色の壁へ視線を移す。
 フロア内には丸い小さな明かりが蛍のように舞い、淡く輝いている。
「うぅ・・・、なんか体の調子が悪いや。まさか、レヴィアさんを閉じ込めていたあの島で研究していたウィルスなの・・・?」
 足元をふらつかせ、セシリア・ライト(せしりあ・らいと)は壁に寄りかかる。
「セシリアさん、わたくしの手に掴まって」
 まともに歩けないセシリアに、フィリッパ・アヴェーヌ(ふぃりっぱ・あべーぬ)が片手を差し出して手を引いて歩かせる。
「棘だらじゃねぇか、これじゃあまともに進めやしねぇぜ。うし、俺が先に進んで歩きやすくしてやる」
 ドラゴンアーツのパワーでラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)が、棘を素手でブチブチッと引き千切る。
「ありがとう・・・」
「礼なんていいって。まぁ、あれだな。細かいことは気にするな!」
 小声で言うセシリアにニカッと笑いかける。
「かなり茂っているな。棘を踏まないように気をつけろ」
 天城 一輝(あまぎ・いっき)が地面を覆い侵入を拒む棘を睨む。
 ポリカーボネントシールドを持ち、彼の左右にローザ・セントレス(ろーざ・せんとれす)ユリウス プッロ(ゆりうす・ぷっろ)が、タワーシールドを持ち守りの壁を作る。
「さっきから棘ばかりだなっ。おっ、何だこれ?」
 ラルクは棘が絡まっている直径1mくらいの大きな円型の装置を見つけた。
 棘を退かせてみると、それは土の上に設置されている。
「これに雷術で電流を流せばいいんですねぇ」
「じゃあまず僕とメイベルちゃんが起動させるよ。これくらいやらなきゃ、来た意味がないもの」
「同時に術を発動しないといけないんですよね。私たちなら1度で成功させられますぅ!」
 メイベルはセシリアと顔を見合わせて頷き、ワープ装置に電流を流す。
 バチチィイッ。
 青白い雷光が発生し、ワープ装置が雷の気を吸収する。
 円型の部分は赤色から緑色へと変わった。
「成功しましたぁ〜、進みましょう!」
「んじゃあ俺は黒牌を探しに行くから、ここでいったん別れるか」
「分かりました、行ってきますね」
 装置に乗ったメイベルたちは2階のフロアへ向かう。
 土の通路を進んでいると、誰かがワープ装置を使い、円状の装置が光った。
「あれ?誰か来たんでしょうかぁ」
 メイベルは後ろを振り返ってみるが誰もいなかった。
「いませんね・・・。気のせい・・・でしょうか」
 気になりながらも仲間の後を追いかける。
「へぇーここが幻草陣の中か。これを持ってれば敵対してるヤツが来るかもって言われたけど、本当に来るのかなー?」
 起動された装置に乗り2階へ移動した女は、シリンダー型の容器を片手に、メイベルたちが進んでいる別の通路を進む。



「見つからないわね、そっちにない?」
 フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛い)は授業で使う素材の採集をしようと、イルミンスールの森へ来ている。
「ないわね、こっちかしら」
 素材探しに集中するあまり、幻草陣の中へ入ってしまった。
 ワープ装置に乗り、2階の毒草フロアへ進んでしまう。
「ねぇルイ姉、あった?ねぇっ聞いているの!―・・・ルイ姉!?どうしたの!!」
 土の上に倒れているルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)の姿を見て、何事かと慌てて彼女の元へ駆け寄る。
「どこかに安全そうな場所は・・・」
 休めそうな場所を探してみるが、なかなか見つからない。
「なっ、何こいつ。足に絡みついてきた!」
 の蔓がフレデリカに絡みつき、ギリギリと締めつける。
「このぉおっ」
 火術で蔓を燃やし、ルイーザを背負って走る。
「うーん・・・ここじゃ、信号弾は無意味かな。試さないよりかマシかしら」
 探している途中で再びクリーチャーと遭遇するよりかと思い信号弾を上げる。
「こんなところに面白そうなの見っけ」
 ぐったりと倒れているルイーザの目を覚まそうと、必死に呼びかけていると背後から1人の女が近づく。
 救助を呼ぶために上げたのだが、厄介なやつが来てしまった。
「―・・・誰」
 フレデリカは警戒するように女を睨む。
「ボク?ボクの名前はシャムシエル」
 メイベルたちと別の通路を進んでいるシャムシエルと遭遇してしまったのだ。
「この毒草を噛み合わせると面白いよ。ほーら、手品みたいで面白いー。何か素材を探しているようだけど、これ使ってみたら?」
 紫色の毒草同士を噛ませて増やす。
 明らかに危険な植物を何かに使えるかもと言うシャムシエルを、ルイーザが訝しげな顔をして睨む。
「そうなの?」
 フレデリカが試してみると2匹の毒草が4匹に増えた。
「よしなさいよ!」
「あれ、その子・・・剣の花嫁だよね?ちょうど暇だったから、それで遊ぼうかな」
 シャムシエルはフレデリカを片手で突き飛ばし、ルイーザの腕を掴んで視線を合わせる。
 彼女が手を離すとルイーザはふらふらと立ち上がり、その視線の先はどこを見ているかまったく分からない状態だ。
「これと遊んでみてよ」
「えぇ・・・、分かったわ・・・」
 命令されたルイーザは毒草と戦い始める。
「どうしたの、やめなさいよルイ姉。そんな弱った身体で戦ったら・・・。よしなさいったら!私の声が聞こえないの!?」
 必死に止めようとするが、まったくいうことを聞かない。
 シャムシエルが光条兵器を介し、剣の花嫁であるルイーザを洗脳してしまったのだ。
「あはは、キミの声なんてもう届かないよ。その子はもう、ボクの玩具なんだからさ」
 その光景を見てシャムシエルは可笑しそうにケラケラと笑う。



「今・・・何か聞こえたような」
 フレデリカが必死にパートナーに呼びかける声を聞いた道明寺 玲(どうみょうじ・れい)は、その通路の方へ向かう。
「そうどすか?」
 玲と共に2階のフロアでワープ装置を起動させたイルマ・スターリング(いるま・すたーりんぐ)が首を傾げる。
「行ってみますかな」
「止まりはなれ、何かいるようどすぇ」
 進もうとする彼女を止め、通路の奥を睨む。
「あら、侵入者さんですかー?」
 1人の女が鞭を片手に、イルマたちの方へゆっくりと近寄ってくる。
「姚天君さんのデータによると、玲さんとイルマさんのようですねぇ」
 カルテのようなシートに書いてある彼女たちについてのデータを見て確認する。
「ふむ・・・十天君のどちらかですかな?」
「申し遅れました、あたいの名前は張天君。フロア内の虫さんたちを排除に参りました♪」
「ほぉ〜わざと挑発しているようどすなぁ〜。麿たちの判断力を乱そうとしても無駄どすぇ〜」
 イルマは平常心を保とうとするが、心中ではかなり苛立っているようだ。
「毒草さんたち、あの生意気な小娘どもをやっつけちゃってくださぁ〜い♪」
 幼い子供が言うような雰囲気で、張天君はクリーチャーに命令してイルマと玲を襲わせる。
「どちらか片方を倒せば、この陣を解除出来ると思いましてな」
 尖った猛毒の牙で噛み砕こうと、奇声を上げながら迫る毒草を玲が三日月型の刃で斬り裂く。
 ズシャァアッ。
 ベチャチャッと汚らしい音を立て、土の上へ残骸が飛び散る。
「くふふっ、毒まみれにしてあげますよー♪」
 張天君は口元に片手を当て笑いながら、深緑の毒草クリーチャーを呼び出して玲を狙わせる。
「―・・・くっ、こんなもの・・・!」
 足に絡みつき噛みつこうとする毒草を火術の炎で焼き払う。
「背後を狙うとは、相変わらず姑息なやつらどすなぁ〜」
 玲を守ろうと紫の毒草の口を真っ二つに斬り、チェインスマイトの連撃をくらわす。
「むうぅーっ、よくもあたいの可愛い毒草さんたちを!こうなったら・・・毒虫さんたち、やってしまいなさい!!」
 バシィイイッと鞭を振るい、張天君が毒虫の群れを呼び出す。
 耳障りな羽音を立て、玲とイルマに襲いかかる。
「意地でも直接攻撃をしかけてこないつもりですかな」
 刺されたり噛まれたらたまらないと、必死に斧を振り回す。
「そぉーんなの当たり前じゃないですかぁ〜。まだ嫁入り前ですし、お肌を傷つけたくないですから♪それそれ〜行くですよ毒虫さん!」
「うぐっ!」
「玲!!」
 毒虫に刺されてしまい、土に膝をつきそうになる玲の元に、慌ててイルマが駆け寄る。
「麿が治してあげますぇ」
 刺された部分をナーシングで治療してやる。
「早く立ち上がってくれないと倒しちゃいますよぉ?」
「それがしたちを倒すなどと・・・簡単に言ってくれますな」
「データによると、それほどたいした子じゃないようですからねぇ」
「―・・・データ・・・ですと?」
 玲は歯をギリリッと噛み締め、斧の柄を握り締める。
「そうです。他の子たちと比べると・・・ですね。何かを成し遂げようとする意地も執念も欠けているんです。そんな人に計画の邪魔なんて出来るはずがないのですよぉ〜」
 小ばかにしたような口調で言いながら、張天君は鞭をフリフリ寄っていく。
「さっさと・・・無様に跪きなさぁあいーっ!!」
 ヒュッ、ビシィイッ。
「な・・・」
「自分の方が優位に立ったと油断したようですな!」
 音速を超える刃風で張天君の胴体を狙う。
 ドシュァアアッ。
 地面へドスンと胴体が転がり落ちる。
「きゃぁあー!―・・・なぁんちゃって♪くふふっ」
 野性の蹂躙で魔獣を呼び出し、玲に攻撃をしかけさせ、結果的に盾として利用されたのだ。
「消耗させることが目的だったようですけど。そぉんなことしたらどのみち、先に終わっていたのは小娘ちゃんたちの方ですよぉ♪」
「―・・・なんですと」
「SP切れでなぁんにも出来なくなっちゃうかもしれなぁーいことを、ちゃーんと理解した上で仕掛けたんですかぁ?」
 睨む玲に向かって、小ばかにしたように言う。
「そこで毒草さんたちの餌にでもなってしまうといいです。あたいは忙しいので、ばいばぁーいです〜♪」
「玲・・・この場に留まっていては、毒草の餌食になってしまうどすぇ!」
 イルマは玲の手を引き、毒草たちから逃れようと必死に走る。
「へぇー・・・向こうは片付いたようだね」
 シャムシエルは張天君の笑い声を聞き、玲とイルマに勝ったことを知る。
「さて、こっちもそろそろ終わらせようかな」
 ミセリコルデの形をした飛翔剣のように、光条兵器を毒草に投げつけるルイーザを見てニヤリと笑い、なにやら遊びを思いついたようだ。
「それをあいつに投げてみてよ」
 フレデリカに投げつけるように命令する。
「や、やめて。何するのルイ姉・・・。私が分からないの!?やめてぇえっ」
「ぴーぴー騒ぐ的って面白いねぇ♪」
「えぇ・・・本当に・・・フフフッ」
「きゃぁああーっ!!」
 光条兵器がフレデリカの身体を貫く。
 あまりの激痛に土の上へ倒れてしまう。
 通常の武器なら致命傷になっていたところだ。
「―・・・フ・・・フリッカ?私・・・私がこの手で・・・?」
 倒れている彼女を見下ろし、大切な人を傷つけてしまったショックのあまり、正気を取り戻したルイーザはトスンッと地面に膝をつく。
「私を騙しただけじゃなくって・・・。ルイ姉まで・・・」
「騙す?あっはは、なぁにそれー。玩具を見つけたから遊んでみただけ」
「玩具・・・私たちが玩具ですって?」
「そう♪でも飽きたから、他のやつ見つけにいこっと」
「この屈辱・・・いつか必ず、倍にして返してやるわ」
 フレデリカはパートナーを洗脳されたあげく、玩具扱いされたことに怒り、その場から離れていくシャムシエルを憎い敵として睨んだ。



「いた・・・・・・ここで何してるのかしら・・・・・・」
 光学迷彩で姿を隠しながら、アリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)はシャムシエルの行動を見る。
 何かを入れた容器を手に持ち、物珍しそうに辺りをキョロキョロと見回している。
「―・・・何かを探してるようにも見えるけど、こういうところは初めてきたような感じね」
 誰かを探しているように見えるが、幻草陣の中の探検を楽しんでいるようにも見えた。
「どこへ行くの?」
 急に走りだしたシャムシエルの後を追ってアリアも走る。
 分かれ道の右の角を曲がると、相手はピタッと足を止めた。
「(―・・・止まった・・・どうしたのかしら)」
 背を見せたまま止まる彼女を、じっと見つめる。
 もと来た道を戻ろうとしてるのか、こちらへ振り返り歩き始める。
「(こっちに戻ってくる。まさか・・・気づかれたの!?)」
 ゆっくり歩いていたかと思うと、いきなり走りだしアリアが隠れている方へ駆けてくる。
「どうしてボクの後つけてくるのかな?」
「ばれていたようね・・・」
 自分の目の前で足を止めたシャムシエルの前へ素直に姿を現す。
「あなたに聞きたいことがあるの」
「なぁに?」
 突然質問されたシャムシエルは笑顔で首を傾げる。
「セイニィやパッフェルは十天君を知っているの?」
「ううん知らないよ」
「(知らない・・・?十二星華の間でも知らされていないこともあるのかしら)」
 アリアはしばらく考え込み、質問を変える。
「あなた、他の十二星華とは何処か雰囲気が違うけど、他の十二星華をどう思っているの?」
「ティセラとセイニィ、パッフェルは仲間だと思っているよ。他の子たちもボクたちの元に戻ってきて欲しんだよね」
「(どういうこと・・・敵とは思っていないということなの)」
 あとで考えをまとめようと、他の質問をしてみる。
「十天君と何を企んでいるの?貴方とあの人たちの組み合わせだから、ろくなことじゃないと思うけど」
「結果的にミルザムを葬れればいいし、その周囲の取り巻きも葬っておきたいから。妖精はそのための囮でもあるんだよ」
「囮・・・?」
「そう、お・と・り♪取り巻きの魔力もついでに奪っちゃおうかなーと思っているんだよね」
 利用できればなんでもいいと、道具のように扱う彼女の言葉に、アリアは眉を潜める。
「邪魔なのをいっきに始末できれば楽だからねぇ」
「―・・・目的のためなら何をやってもいいことかしら」
「うん、そーいうこと♪」
「そんな強引なやり方・・・、認められないわ!」
 無邪気な笑顔であっさりと言い放つシャムシエルを睨む。
「じゃあどうする?ボクと戦って降参させる?」
「残念だけどそれはまたの機会にするわ。1人でどうにか出来ると思えないし、ここで無茶をするつもりもないから」
「懸命な判断だね」
「だから・・・ここはいったん、退かせてもらうわ」
 彼女から離れようと、ずりっとすり足で後ろへ退く。
「ふ〜ん、で・・・せっかく見つけた獲物を逃がすとでも思ってるわけ?」
 シャムシエルは光条兵器を手にアリアの首元を狙う。
 姿を隠そうとアリアは光学迷彩で周囲の景色と同一化する。
「上手く姿を隠して避けたつもりなんだけろうけど、ボクから逃げられると思っているのかな!」
「(―・・・やっぱり、姿を見られてから隠れたんじゃ、あまり効果ないようね)」
 光条兵器で首筋を掠められ、痛む箇所を片手で押さえながら、逃れようと必死に走る。
「(下の階に降りる装置・・・、もう・・・あれに乗って逃げるしか!)」
「玩具のくせに、何逃げてるんだよぉっ」
 逃がしてたまるかとアリアに向かって、アルティマ・トゥーレの冷気の剣風を放つ。
「―・・・ぁっ、くぅ!」
 アリアは転びそうになったが心頭滅却で絶え、なんとか踏み止まる。
 冷気によって植物の蔓が凍りついたのを見て、シャムシエルはニヤリと笑う。
 凍りついた蔓を蹴り、破片をアリアへ飛ばす。
「あぁっ!」
 悲鳴を上げそうになるものの痛みを堪え、装置がある場所へ走り、アリアは1階へ逃げる。
「フンッ、いいもん。新しいやつ見つけに行くし!」
 幼い子供のようにべーっと舌を出して、シャムシエルは新たなターゲットを探しに行く。