天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

「封神計画」邪なる魂たち

リアクション公開中!

「封神計画」邪なる魂たち

リアクション


第6章 十天君の命じるままに・・・封神台破壊命令

-PM12:40-

「次の工程は境ね。明珀石を溶かしてっと・・・」
 歌菜はバケツに石と熔鉱水を入れ、コテで混ぜるように溶かす。
「力仕事は任せるアル」
 バケツを抱えてチムチムが足場を登る。
「型枠出来たアル?―・・・レキ、糊付けし直しアル」
 厚みをつける枠の端が曲がっていることを指摘し、レキにやり直させる。
「あれ!?糊付けしたばかりだからはがせるかな・・・うーん出来た!―・・・もういいかな」
 完全に糊が乾くまで10分待ち、溶かした明珀石を型枠に流し込む。
「ボルトが固まったわよ、そっちに持っていくね」
 先に型枠を作って固めておいた明珀石のボルトを箱に入れ、足場をよじ登っていく。
「了解!こっちも固まったアル。慎重に外すアルヨ、レキ」
 チムチムが指でつつき確認し、レキと一緒に型枠を外す。
「破けそう・・・えいっ。きれいにとれたよ!」
「じゃあ固定しようか」
 歌菜たちはドライバーを使って固定する。
「で・・・この周りを外壁用のやつでペタペテっと」
「固めた明珀石に模様を描くんだよね?」
「設計図だと対極図だったわね」
「彫刻等でやろうかな」
「待つアル!まずはチョークで図を描くアルッ」
 チムチムは慌ててアテも描かずに、いきなりやろうとするレキを止める。
「―・・・こんな感じアル?」
「そうね」
「じゃあ今度こそこれでっ。図工みたいで面白いね」
 熔鉱水につけてレキは楽しそうに対極図を描く。



「もう半分くらい出来たのかな。―・・・ところで、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
 神和 綺人(かんなぎ・あやと)は封神台を作っている光景を見ながらルフナに質問する。
「なんどすか」
「十天君たちって・・・どういう集団なのかな」
「自分たちが気に入った者に協力しとったり、個々で実験を楽しんだりしとる集団やな。目的のためなら誰が傷つこうが、平気でいろんなもんを利用したりもしとるようどすなぁ。恨みのある相手に復讐しようとすることもあるようやし」
「(いろんなもの・・・それってゴースト兵の遺体や、オメガさんの能力のこと?)」
 しばらく考え込み綺人は質問を続ける。
「どうしてルフナさんたちは彼女たちと敵対しているの?」
「あのお嬢はんたちの行動が気に入らへんからどす」
「(気に入らないって・・・やっぱり死者を使った実験のことあたりかな)」
 彼女たちが今までしでかしたことを思い出し、何が気に入らないのか考える。
「そういえば幻草陣の中にいったとき、十天君のアナウンスでルフナさんに兄弟がいるって知ったんだけど、どんな人たちなの?」
「プライベートなことまでよくもまーべらべらと、お嬢はんたち・・・。まぁ隠す必要もあらへんけどなぁ。うちはこのとおり人畜無害やけど、一言で言えば弟はアホやね」
「(アホ・・・?)」
 ため息をつく彼を見て、その一言と態度にはたから見れば不仲なのかと思える。
 不仲ではないが血の気が多い困った人格なのだ。
「乱暴者とか言われてたけど、いったい十天君に何したの?」
「実験用の生き物の死骸を大量に集めとったから、ぶっとばしてやったんどす。ちと仕置きした程度で呪ってやるとかギャーギャー騒ぎよって、えろーうるさかったどすなぁ〜」
「―・・・そ、そうなんだ。(どんな風にやったんだろう・・・ちょっとどころじゃない気がするよ)」
 へらっと笑う温和な感じに見える彼が、恨まれるほどどんな仕置きをしたのか綺人にはまったく想像がつかない。
「(似た者同士ってわけじゃないみたいだけど・・・)」
 死者を冒涜するようなことを嫌う彼らとは似てないにしても、力加減を知らない度合いは同じかもしれないと思えた。
「そいえば・・・ケレスさんって何か戦いに使える魔法とかあるんですか?」
 クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が遠慮がちにケレスに問う。
「魔法・・・ですか?悪霊を抑えたりするなら。あまり死者を攻撃してしまうような魔法は・・・。皆さんが襲撃者を倒してくださっているのにごめんなさい・・・」
「いえ、いいんです。ケレスさんは魂をナラカへ連れて行く方ですし、ゴースト兵や悪霊でも死者が相手ですから攻撃を躊躇してしまうんですよね・・・」
 彼女に精神的負担になってしまうなら、無理に戦わせないほうがいいようだと判断する。
「あっあの・・・本当にごめんなさい・・・・・・」
「謝らないでください。その変わり・・・ちゃんと死者をナラカへ送ってあげてくださいね」
「―・・・はい」
「アヤ・・・」
「うん、分かっているよクリス」
 カンテラを抱きしめるように抱える彼女の姿を見て、なるべくゴースト兵たちを葬る瞬間を見せないようにしようと、綺人とクリスは顔を見合わせて頷く。
 生きていた人を葬ってしまうことは、いいことだとは思っていないからだ。
 命令に従うだけの人形として扱われている彼らを止める手段が1つしかないと分かっていても、それを見せるわけにはいかない。
「あ、いました。探しましたよ」
 一緒に材料置き場を守ろうと、幸がルフナとケレスに声をかける。
「私たちと材料防衛してくれませんか?」
「メガネのお嬢はんどすか、えぇよ」
「はい・・・私で皆さんのお役に立てれば・・・」
「あの幸さん・・・」
 2人を連れて行こうとする幸をクリスが呼び止める。
「どうしたんですか?」
「あまり見せないようにしてあげてください」
 クリスはケレスを横目で見て言う。
「―・・・そうですよね。一応、気をつけます」
 彼女に分からないように簡単な言葉で互いに確認し合い、幸は2人を連れて材料置き場がある方へ行く。



「この辺りにいましょうか。ところで・・・ルフナさんの兄弟の名前って?」
 材料置き場についた幸は遠慮がちに彼の兄弟の名前を聞く。
「あー・・・そういうの、勝手に言うとキレるやつらやからなぁ」
「たしかに知らないところで勝手に名前出されるのいやな方もいますよね・・・。―・・・それじゃあ、今までどうして偽名だったんですか?姚天君はわかりますが・・・。貴方たちまで偽名を使わせる理由が分かりません・・・」
 一番気になってたことを問いかける。
「メガネのお嬢はんたちに聞かれへんかったのもあるんやけど。うちと何か裏で工作しとるお嬢はんがおると、すぐに素性がバレかもと思ったんちゃうか。それにうちらが本名を名乗ったら、計画に気づかれると思って逃げてしまうかもしれへんし」
「何をしているのか暴く前に逃げられてしまわないようにですか」
「そうどすなぁ」
「―・・・廃校舎とかに来る前は、どんな日常だったんですか?」
 質問を変えて素性を聞いてみる。
「せやなぁ面白そうなことがあらへんか、探したりとったかなぁ」
「(どこかの黒子部隊と被る感じがしますね)」
 面白そうなことに遭遇して見物したり、それをさらに面白くしようとした過去がありそうだが、死者が出るようなまねはしていないように思えた。



「敵・・・?皆さんに早く知らせませんと」
 封神台の近くを見回りしているソニア・アディール(そにあ・あでぃーる)が、森の方からやってくる兵たちの姿を見て生徒たちに知らせようと走る。
「皆さん敵が来ます!」
 ソニアの声に封神台を守る生徒たちは持ち場へつく。
「材料よりも先に、こっちを破壊しちまえっ」
 いっそのことぶっこわしてしまおうと、ゴースト兵が封神台に向かって機関銃を撃つ。
「わぁああっ」
 銃弾を避けるために支えから手を離してしまったレキが落ちそうになる。
「レキ!」
 彼女が落ちる寸前、チムチムは手を掴み引き上げようとする。
「クククッ落としてやる」
 別の兵がスナイパーライフルで2人を狙う。
「兵が森の中からこっちを狙っているの!?」
 ふよふよと人魂のように浮かぶ偵察用のゴーストに知らせてもらい、綺人とクリスはその場所へ急ぐ。
 妖刀村雨丸からアルティマ・トゥーレの冷気を放ち、ライフルごと兵の身体を凍てつかせる。
「はぁああっ!」
 クレセントアックスを振るい、クリスは容赦なく破邪の刃の聖なる刃で斬り伏せる。
「封神台を作っている人が襲われているかもしれません戻りましょう」
 クリスたちは封神台の方へ走る。
 そこへ戻ると銃でレキたちを撃ち落そうと兵が狙っている。
 土の壁を利用しコウが死角から機関銃で反撃している。
「痛覚がないというのは厄介なものだな・・・」
 なかなか諦めない兵たちを睨んでコウは顔を顰めた。
「ちっ、こっちにもいるのか。―・・・なっ!?」
 兵がショットガンの銃口を向けてクリスを撃とうとした瞬間、突然腕が千切れ飛ぶ。
 穴の中に身を隠し、シートと穴の間からローザマリアが兵を狙って撃ち抜いたのだ。
「悪いけど・・・相手がどんな境遇の者でも、この戦いに負けるわけにはいかないの」
 そう呟き銃弾をライフルに詰める。
「くっどこから銃弾が!?」
「余所見をしているとあっとゆう間に終わってしまうぞ」
 高周波ブレードの刃をグロリアーナが地面へドンッと突き、遠当てで兵の身体を吹っ飛ばす。
 柵の内側にいる菊が体勢を立て直す前に仕留めようと、リカーブボウの矢で頭部を射抜く。
「調子に乗りやがってぇえっ」
 別の兵が怒鳴り散らしライフルで菊を狙う。
 ガツンッとローザマリアにライフルで銃弾を撃ち落され、的確に撃ち落すエイミングに阻まれる。
「終わりよ」
 トリガーに指がかったままの相手の頭部を撃ち抜く。
「そなたたちには守ってくれる目がいないのであろう?」
 グロリアーナは刃の切っ先を向けて見下ろすように睨む。
「―・・・いったん退くぞ!」
 兵たちは悔しがりながら退いていく。

-PM16:00-

「大丈夫?うーん・・・っ、ふぅ・・・。とりあえず退いていったでよかったわ」
 歌菜がチムチムに手を貸し、足場へレキを引き上げる。
「怪我はないみたいね」
「作業出来そうアルカ?」
「うん・・・とりあえず大丈夫そう」
 レキは手首を傷めていないか触れて確認する。
「えっと、ここはどうすればいいのかな?」
 図面を見ながら彫刻刀で描く。
「あんなに遠くから狙ってくるなんて思わなかったね」
「ライフルはある程度の距離なら狙えるから、気をつけないといけないアル」
「余計な時間とられちゃったね。今日の作業はここまでかな」
 境を作ったところでレキたちは作業を中断して休むことにした。

-PM20:00-

「今日は私たちが見張りをする番ですね」
「あー・・・いや、今日もオレたちがやるよ」
 陣は見張り役をやろうという幸の変わりにやろうと言い出す。
「えっでも・・・」
「封神台が出来そうな時にでもお願いするかな」
「じゃあ私たちと交代でやりますか?深夜2時になったら起こしてください」
「そうすっか」
 今日はメイベルと交代で見張りやることにした。
「それじゃあ私たちはほとんど何もしてないことにならないですか?」
「幸さんたちの思いをここで決着つけられれば、それでいいんですぅ」
「ありがとうございます・・・」
 今度こそ姚天君を倒したいという気持ちに気づかれ、優しい仲間たちに感謝し戦いに備えて休むことにした。

5Day

-AM1:58-

「午後に襲撃があったから今日は来ないのか?」
 ゴースト兵たちが迫っていないか、陣は周囲をキョロキョロと見回して警戒する。
「どうかなぁ、ここんとこずっと深夜に来てたから」
「そろそろ交代の時間です、ご主人様」
「あぁっもう2時か・・・起こしてきてくれ」
 携帯で時間を確認して、リーズに起こしにいってもらう。
「時間だよ、起きて」
 メイベルたちの身体を揺すって起こす。
「ん・・・はい。―・・・ふぁっ」
 起こされた彼女は小さく欠伸をして、ぐーっと背伸びをする。
「んむっ・・・もう時間か」
「だいたい6時間睡眠ですわね」
 寝袋から出て見張りを交代する。
「海風でちょっと寒いね」
 セシリアは寒さにぶるっと震える。
「それにしてもあまり人数いなかったよねゴースト兵」
「わたくしたちが見張りをした時は10人くらいですわね」
「孤島よりはいないみたいですけど。かなりの人数が残っていれば100人以上はいるでしょうし」
「見張りをしている人数で想定て、全然いない・・・って断言できないからね。―・・・銃声!?どこから!」
 突然の銃声に驚きセシリアが周囲を見回す。
 超感覚で静まり返った森から葉音を聞き、飛び起きた幸がケレスの盾となる。
 すぐに気づけたのと強化装甲のおかげで片腕を掠った程度だった。
「やっぱり狙ってきましたね」
「向こうの方から気配がしました、見つけたら倒しちゃってください」
 メイベルは野性の蹂躙で魔物たちを森に向かって走らせる。
 ダンダンッと銃声が2発聞こえ、その後何も聞こえなくなった。
「もう大丈夫みたいです」
「ぁ、あの・・・ありがとうございます」
「いえ無事でよかったです。それではお休みなさい」
 安心した幸はもう一度眠りに入る。
 数時間経過し結局明け方になっても、その夜の襲撃はその1度だけだった。