校長室
大脱走! 教諭の研究室(ラボ)と合成獣
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第4章 おつかれさま 「さぁさぁミンナ、準備は良いかな〜?」 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)の声に、集まった生徒たちはグラスを持った。 「それじゃあ、いくよ〜! おつカレー様〜☆」 テーブルには彩り豊かな皿とグラス、そしてチキンカレーにナンとご飯が並んでいる。 ノーム教諭の研究室の修復は、概ね形には成った。しかし内装や細かな整理は教諭とアリシアでなければ分からない。無理に引っかき回す事もないかな、という判断のもと、イルミンスール魔法学校の食堂での打ち上げを考案し、主催したのはルカルカだったのだが。 「んぅ〜、はひぃ〜、美味しぃ〜、文句なし!」 自ら率先して料理に夢中になっていた。いや、料理を作ったのはパートナーのダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)だったが、セッティングから配膳までをこなしたのはルカルカなのですよ。お疲れさまなのです。 「辛い〜、でも美味しぃ〜」 「普通のも作ってきたぞ」 「何ぃ? 聞いてないぞ〜、あっ! チャナ豆とポークのカレーだっ!」 そんなに大きな声を出さなくても…… 生徒たちが集まって…… なるほど、そういう事ですか。 ダリルは食堂内に目を向けて、生徒たちの顔を一つずつ見た。カレーを口に運んだ後に歪む顔は見えなかった。会話に笑んでいるのかもしれない、それでも笑顔の一つの要因になれたと思うと…… いや、笑顔は見ているだけで心癒される。 部屋の隅に、カレー皿を手に持ちながら携帯を耳に当てている影野 陽太(かげの・ようた)の姿が見えたが、さすがに声までは聞こえなかった。 ダリルにも他の誰にも聞こえていない会話を少しだけお聞き頂きましょう。 「譜グの一匹の出力ですが、MAXで500Vです。やはり瞬間でしたが、データの裏付けは概ね取れました、信用しても良いかと」 「……………… そう………… 教諭にはこちらから連絡するわ、ごくろうさま」 「はい! ありがとうございます、環菜会長!」 陽太の満面の笑みを見て、ダリルも笑みを得た。笑みは笑みを伝える、気持ち良いものだ。 ナナ・ノルデン(なな・のるでん)、漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)と笑み笑んでいるアリシアを見つけて、ダリルはそっと歩みを寄せた。 「アリシア、これを」 「私に? ですか?」 そっと手渡したブルーローズブーケ。慰労の想いを込めて−−− 「ほう。アリシア嬢にブーケかね、剣の花嫁の陥落アイテム、ブルーローズブーケを手渡すという事は〜、良いのかな〜」 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)だった、満面の笑みで口に手を当てて笑いを堪えている。 「赤毛の彼女に知れたら、きっと泣く、泣くに決まっているのだよ」 「なっ! メシエが余計な事をしなければ−−−」 「余計なこと? おっと、彼女には内緒にしろという事ですかな? 秘め事ですな? 愛する2人の間に秘め事は良くないと思うのだがね」 「だっ、だからそういう事ではなく−−−」 「あの… お返しした方が… 良いですか? 」 「いや、それは違う、これは単に慰労の意を示したもので… 十二星華の事件から今までずっと気を張っていただろう、だから、今回のミスも仕方ないと言うか、気に病む事はない、と思うからであって」 本心であるのに、言えば言うだけ言い訳のようになるのは何故だろうか。ダリルの泳ぐ目を見て、アリシアはそっと笑みかけた。 「ありがとうございます。研究室に飾らせて頂きますね」 「アリシア嬢も受け取るのか? これはこれは、くくくくくっ」 「メシエ… いい加減になさい」 ダリルの目が笑ってない。怒りで動揺を押さえ込もうとしているのだろう。メシエの笑い声も教諭の様で腹立たしい−−− ? 当の教諭は? このやりとりを見ていたら激昂しそうなものだけど−−− 「ですから、世話する手が足りないんなら、俺や生物部の仲間で手伝いますよ」 教諭にもの申しているのは七尾 蒼也(ななお・そうや)だった。教諭は、笑顔でコーヒーを飲んでいるようだ 「…… 手が足りないように見えるかぃ?」 「見えますよ! アリシアさんの負担が大きいから、今回みたいなミスが起こるんです」 「くっくっくっ、今回はトランプ兵のミスだよ、檻の近くでは作業をするな、とも命じていたんだけどねぇ、まだまだだよ」 それだけじゃない! 実験動物に対する敬意と感謝も足りません! とぶつけようとしたのだが、教諭が消えた−−−思い詰めた顔をした清泉 北都(いずみ・ほくと)と共に壁際へと移動していた。 北都は周りを気にしながら声を潜めた。 「あの、教諭。これ……」 保管室で見つけた紙束を教諭に渡した。これこそ激昂されると北都は身構えたが、教諭は笑みを浮かべたままだった。 「読んだのかぃ?」 「あの……、はい」 「どうだった?」 「どう…… って。あの、戦争でもするつもりですか?」 「戦争? くっくっくっ、どうしてだぃ?」 「だって、武力や移動、輸送手段、通信方法の向上って…… それにどれも規模や想定が大きすぎます」 「それだけの力を相手にするって 「相手は? 時間と共に強くなるって」 「その可能性があるって事さ。まぁ、周期的にそろそろだからね、近いうちに君も目にするかもねぇ」 「教諭! 教諭! 教ぉ諭〜!」 チョコと紅茶を持ったルカルカが跳ねながら、水面張力に頼りきりながら跳ね寄り来た。 「何ひそひそしてるんですか? 混ぜてください! 食べてください! 合成獣で戦車を作ってください!」 戦車? 何? 聞かれてたのかなぁ? 「そいつは面白いねぇ。ドラゴンの鱗、ダイヤモンドの皮膚、麒麟の角なんてのが手に入ったら、ぜひ作りたいねぇ」 「かっこいぃ〜! 作りましょ、今すぐ捕まえに行きましょ、戦車を作りましょ〜」 「あ、ちょっと! 盛り上がってますけど、教諭はもう少し生き物に対する敬意と感謝の気持ちをですね−−−」 いても立ってもいられずに、というか追ってきたのか七尾 蒼也(ななお・そうや)、どうしても言いたかったのだな七尾 蒼也(ななお・そうや)。 「何を言ってるんだぃ? 私ほど生き物に敬意を払っている者は居ないじゃないか」 「そうよそうよ、教諭大好き〜」 酔ってる? いぇいぇ、そんな。ここは健全なお食事会、ソフトドリンクしか無いのです。 ワイワイワイワイとパーティは続く。 近いうちに目にする? だから知られても 構わないと? でも、それだと合成獣を生む理由は……。 北都だけは不安一杯に包まれていたが、教諭はこれ以上には語らなかった。 何はともあれ、教諭もアリシアもイルミンスールに戻ってきた。研究室も修繕された。元通りの日常が待っている のだろう、見た目だけは元通りの日常が。 ワイワイばたばたウキウキぱたぱたなマイニチがやってくるのです。です。
▼担当マスター
古戝 正規
▼マスターコメント
おかえりなさい。ゲームマスターの古戝正規です。 みなさまのご協力のおかげで、無事、ノーム教諭の研究室も直りました。ありがとうございました。 安心して「蒼空のフロンティアの1周年」を迎える事が出来そうです。 グランドシナリオでは【十二星華】編も正に大詰めになっておりますし、 「蒼空のフロンティア」2年目も新展開満載なようですよ(詳しくは、まだ言えないのでね、くっくっくっ)。 これからも、もっとずっとに面白い事を求めていきたいと思っておりますよ♪ ふたたびに、お会いできる事を楽しみにしております。
▼マスター個別コメント