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【怪盗VS探偵】闇夜に輝く紫の蝶

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【怪盗VS探偵】闇夜に輝く紫の蝶

リアクション


■事前準備


―探偵サイド―



 愛美とマリエルの依頼があった翌日。
 探偵事務所に乗り込んできた者がいた。
「愛美さんを盗もうとしていると聞きましたー! 私、ソア・ウェンボリス(そあ・うぇんぼりす)も協力させてください!」
 応接室の扉を勢いよく開けて入ってきたのはソアだ。
「それは歓迎しやがります……ですの」
 反応したのは橙歌だ。
「またですか……そんなにオレの信用はないんでしょうか……」
 自分の机でがくりと肩を落としたのは火焔だ。
「え、えーと……信用してないわけではないんですよ……? そ、そうだ! 私のペットのベアが見当たらないんですが探してもらえませんか? それで信用を回復するというのはどうでしょう?」
 ソアは持っていた雪国 ベア(ゆきぐに・べあ)の毛を火焔の元に持っていく。
 あと少しで火焔の側というところで、手で制された。
「ソアくんのペット、ベアくんはこの部屋に一緒に入って来てますよね?」
 火焔の言葉にソアは尊敬のまなざしを向ける。
「ちっ! こんなに早く見つかるなんてな」
 そう言って、ベアは光学迷彩を解いた。
「その鼻の良さを使えばきっと怪盗も捕まえられますよ!」
「そ、そうかな?」
「はい!」
 ソアの言葉に一瞬喜びかけたが、また落ち込んだ。
「どうしたんですか?」
「オレは……オレは……頭脳を使って解決したいんですよー!」
「もういい加減自分を知ったらどうなんですか、この野郎……ですの」
 火焔を橙歌の冷たい眼差しが突き刺さった。
「う……はい……」
 しょんぼりと火焔は頷いた。
「お前らの関係って……どっちが上かはっきりしてるのな」
 ベアの言葉に火焔はグサリときたのか、更に落ち込みを増した。
「べ、ベア! 失礼ですよ!」
 それを咎めるソアだったが、内心はちょっとだけ同意していた。


 空京のとあるネットカフェでは七尾 蒼也(ななお・そうや)がパソコンで情報の収集をしていた。
 取ってきていたソーダの氷が融けて、カランと音を立てた。
 蒼也の横ではペルディータ・マイナ(ぺるでぃーた・まいな)が冷たい緑茶を美味しそうに飲んでいる。
「どう? 何か情報はありました?」
 ベルディータが聞くと蒼也は被りを振った。
「ダメだな……どうやら、ネットで怪盗のお手伝いを募集してる奴がそうみたいだが……それ以外の情報は無さそうだな。今までの活動記録がない……新しい怪盗か?」
 その情報を聞いて、ペルディータは目を輝かせた。
「まだ誰も見た事も聞いた事も……捕まえた事もない怪盗! これは楽しみですね!」
「……ベルが言うなら付き合ってやるか」
 2人は作戦会議へと移行していった。


 同じく、ネットカフェの中の一室では2人用のスペースに3人がぎゅうぎゅうと詰めている。
「これでよし。依頼に答えるぞ」
 二色 峯景(ふたしき・ふよう)が開いているのは怪盗のお仕事募集ページ。
 そこで、怪盗とコンタクトを取り、仕事の時間と場所をゲットしたのだった。
 どうやら、他の人から何か依頼をされているようだ。
「お仕置きが見られるんですね」
 アレグロ・アルフェンリーテ(あれぐろ・あるふぇんりーて)は熱いほうじ茶と懐にいつも忍ばせている芋けんぴを食べながら、そう言った。
「楽しみだァ!」
 エリシア・ブレイロック(えりしあ・ぶれいろっく)は拳を突き上げ、嬉しさを表現した。




―怪盗サイド―



 同日、空京の某所。
 怪盗のアジトは今は使われていないプレハブだ。
 大きさは普通の家とそう変わらない。
 怪盗のアジト内では芦原 郁乃(あはら・いくの)の進言により作戦会議が開かれていた。
 当日怪盗側で参加する人は全員到着している。
「私は地上で撹乱するね!」
「そう、頼むわ」
 郁乃の申し出に【紫水 蝶子(しすい ちょうこ)】は力強く頷いた。
(通った! やった! 計画通りね)
 郁乃が十束 千種(とくさ・ちぐさ)に目配せすると、千種はその視線を受け止め、目で肯定した。
「ボクはもう準備しといたよ。シャンバラ匿名提示板の出会い系板で大量の人と会う約束をこぎつけたから」
「それでどうするの?」
 桐生 円(きりゅう・まどか)の言葉にキョトンとする蝶子。
「ふふふ……大勢の人の中に紛れればこちらの動きを読まれない!」
「おおーーー! それ採用ね!」
 円の自信満々の提案に蝶子が目を輝かせる。
「我は愛美から目を逸らさせる為に、他の娘を盗む事によって連中の目を逸らして見せよう」
「なるほど! それも良いわね!」
 毒島 大佐(ぶすじま・たいさ)は蝶子に許可をもらったので、もうどうやって盗もうか検討を始めたようだ。
「もう……蝶子お姉ちゃん。他の人にあまり迷惑かけちゃダメだよ……」
 今まで大人しく会議を聞いていた【紫水 青太(しすい せいた)】が見兼ねて声を出した。
「あら、もうこんなに協力者がいる時点で迷惑なんて掛けまくりじゃない。そんなの気にしてたら怪盗は務まらないわよ!」
「はぁ……」
(迷惑かけてる自覚はあったんだ……)
 青太の溜息と同時に会議に出席している皆の心の中が一致した。
「私はロキくんと狼のゲリとフレキで警戒と囮役を立候補します」
 気を取り直して、月詠 司(つくよみ・つかさ)が提案を続けた。
 司の言葉にウォーデン・オーディルーロキ(うぉーでん・おーでぃるーろき)が賛成の意を表した。
「そうだ! 連携して動くんだし、携帯の番号くらい交換しておこうよ!」
 ウォーデンがそう進言すると、蝶子は少し考える。
「そうね……その方が効率がよくなりそうね!」
 蝶子が受け入れたので、会議参加者は全員携帯番号を交換することとなった。
 勿論、蝶子と青太も教えている。