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【怪盗VS探偵】闇夜に輝く紫の蝶

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【怪盗VS探偵】闇夜に輝く紫の蝶

リアクション

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「ふっふっふ……今宵もお茶の間のヒーローの活躍の時間がやってきましたね。さあ、愛美さんを拉致……もとい! 保護させていただきます!」
 満月を背景に、街頭の上から叫んだのはクロセル・ラインツァート(くろせる・らいんつぁーと)だ。
 白い仮面に黒いマントのいつもの出で立ち。
「来ましたね……ダークヒーロー、クロセル・ラインツァート! このミオセルがお前の悪事を潰します! 探偵さん、ここは任せてしっかり警護お願いします」
 クロセルとは違う街頭から声を張り上げたのは赤羽 美央(あかばね・みお)だ。
 黒い仮面と白いマントが印象的だ。
「わかりました! そちらはお任せします!」
 火焔は言うと、木の側にどっしりと構えた。
 その側には女装した神代 正義(かみしろ・まさよし)の姿があった。
 シャンバランの仮面に赤いマフラー、そして蒼空学園女子の制服を着用している。
「きゃー、助けてー」
 かなり棒読みだが、心底楽しんでいるように見える。
「今、保護させて頂きます!」
 ……クロセルは気が付いていないようだ。
「させません!!」
 美央は街頭を素早く下り、戦闘態勢に入る。
「愛と情熱と可愛い者の味方のダークーヒーロー! 月光蝶仮面参上! クロセルと手を組ませて頂く!」
 そこへ名状しがたき獣に跨ってやってきたのは鬼崎 朔(きざき・さく)だ。
「月光蝶仮面様の助手の揚羽蝶仮面もいるであります!」
 後ろに乗っているスカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)も名乗りを上げた。
「わ〜ん、降ろしなさいよ!」
 名状しがたき獣の首に縄でぐるぐる巻きになっているのはブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)だ。
 カリンは朔達が出かけようとするのを目撃し、止めようとしたのでこうなってしまったようだ。
「どこかに紛れている怪盗パープル・バタフライに告ぐ! 怪盗風情が蝶を名乗るなど許せん! この月光蝶仮面が蝶の名の重み、我が力を持って示してくれるわ! はーはっはっは!」
 隠れている蝶子は飛び出そうとしたが、円になんとか押しとどめられた。
「食らって下さい!」
 朔の言葉が終わると、クロセルは光術を発動させた。
 辺りが光に包まれる。
「くっ……目が……」
 美央は目を押さえる。
 それと同時に朔がしびれ粉を巻いた。
「そうはさせません!」
 それには美央が爆炎波を放ち、上昇気流を起こして、しびれ粉を上へとやってしまった。
「隙ありなのであります!」
 美央が爆炎波を放つと同時にスカサハは加速ブースターを使用して、正義へと近づくと抱き上げ、名状しがたき獣へと乗せてしまった。
 愛美に扮した正義を確保したのを確認すると、クロセルは正義に近づき、毛布と登山用ザイルで簀巻にして動けないようにしてしまった。
「愛美さんは頂いていきます!」
 クロセルや朔達はさっさと引き上げてしまった。
「だから降ろせって……テメェ! 朔ッチ!! 後で覚えてろよ! ゴラァ!!」
「見たか? 『蝶』を名乗るのなら、これくらい派手に! 華麗に! やり過ぎなくらいでないといけないのだよ! これに懲りたら、先輩である私の前で『蝶』を名乗るのはやめたまえ!」
 ブラッドクロスと朔の叫びを残して……。

 そして、広場から少し離れた場所。
 4人は固まっていた。
「…………明らかに正義さんですよね? シャンバランさんですよね!?」
「やだー。マナミンだもんー」
 クロセルの言葉に正義は棒読みでまだ演技を続けていた。
「…………どうするでありますか?」
 スカサハが言うが、誰も口を開けないでいる。
 少しして、とりあえず怪盗のアジトに簀巻のまま投げ込む事が決定したようだ。

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「わっしょい! わっしょい! どっちも頑張れ負けるなよー!」
 広場の外れでポップコーン片手に観戦しているのは赤城 長門(あかぎ・ながと)だ。
「お前さんもどうかのぅ?」
「あ、えっと……ありがとう!」
 長門は近くでハングライダーを見ている青太にポップコーンを勧めた。
 青太は嬉しそうにポップコーンを頬張る。
「ところで、あのハングライダーはどうやって乗るんかのぅ?」
「これはね……」
 食べ物をもらって、警戒していないのか、青太は細かく教えていく。
「ほぅ……このムキムキでも飛べるんかいのぅ……」
「うーん……どうだろう?」
 長門は自分の体を眺めて、ハングライダーを見る。
「試してみるか!」
「えっ!?」
 長門の言葉にぎょっとする青太。
 そんな青太にお構いなしに、青太を担ぎ、ハングライダーを1つ持って、校舎の中へと入っていってしまった。
 暫くすると、屋上に青太と長門の姿があった。
「ダメだよ! 僕、蝶子お姉ちゃんに怒られちゃう!」
「そうなったら一緒に怒られてやるから!」
「えーー!?」
 長門は青太をハングライダーに乗せると自分も背後から棒に掴まって準備OK。
「行こうかのぅ!」
 長門は助走を付けると屋上から飛び立ってしまった。
「わーーーっ!」
 青太の悲鳴が響く。
「何やってるの!?」
 声を聞いて、上を見上げた蝶子は唖然としてしまっていた。
 ハングライダーは重みに耐えきれていないらしく、どんどん落ちてくる。
「ジュレ!」
「ああ!」
 それを見たカレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)は走り出していた。
 小型飛空艇をジュレールが操作し、その後ろにカレンが素早く乗る。
 上昇すると、すぐに青太と長門の乗っているハングライダーへと近付いた。
「今助けるからね!!」
 カレンは安心させようと笑顔を向ける。
 青太は今にも泣きそうだ。
 ジュレールはハングライダーのすぐ下に付けると、カレンは青太の足をしっかりと持った。
「手を放して!」
「でも!!」
「大丈夫だから!」
 カレンの言葉に躊躇していたが、意を決して手を放す。
 カレンは青太をしっかりと抱きかかえ、無事にハングライダーから救出することが出来た。
「オレは一体どうすれば良いんかのうーーー…………」
 ハングライダーに乗ったままの長門はそのまま夜の闇の中へと消えてしまった。
「ありがとう! ……あの人大丈夫かなぁ……落下しても死なない感じはしたけれど……」
 青太の思った通り、長門は少し先で落下しており、ハングライダーは大破しているのに、長門はぴんぴんしていた。
「ううん。無事でよかったよ!」
 カレンは笑顔を向ける。
「しかし……お互い、無茶する相棒を持って大変だな」
 ジュレールは広場で安心した表情をしている蝶子を見ながら言った。
「うん……そうなんだよ! 蝶子お姉ちゃんももう少しまともになってくれれば……はぁ……」
「うんうん」
 青太の言葉にジュレールは深く頷いた。
「意気投合出来そうなのに……すまない!」
 ジュレールが謝ると、カレンが背後から青太の両手首を後ろで縛ってしまった。
「ええーーーっ!?」
「ごめんね! お姉さん見えてるー? 人の大事なものを盗むなんてもうやめて! そうじゃないと……えいっ!」
 カレンは青太の上半身を肌蹴させた。
 和服なので簡単に肌が露わになってしまう。
 青太は声も出ず、ただ真っ赤になってしまっていた。
「うーん……まだ反応がないなぁ……」
 カレンはそう言うと、今度は青太に頬ずりを始めた。
「助手さんが取られるの嫌だよねー!? だからもうこれ以上はダメだよ!!」
 カレンは大変満足そうだ。
「あ、別にボクはそういう趣味があるわけじゃないから安心してね」
「えーと……」
 青太はカレンがささやいた言葉にどう返して良いかわからないようだ。
 やることをやったから満足したのか、カレンとジュレールは先ほど青太が待機していた場所まで行くと、解放してやった。
「青太!」
「蝶子お姉ちゃん!」
 そこへ蝶子が駆け寄った。
 ぎゅっと抱きしめる。
「もうこれに懲りたら怪盗は――」
「そうはいかないわ! それにやるならもっと徹底的にやるべきよ! 甘いわね!」
 カレンの言葉を遮り、蝶子は青太を抱きしめたまま広場へと走り出してしまった。
 2人はその逃げ足の速さに唖然とし、追いかける事は出来なかった。