天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

【相方たずねて三千里】懇親会でお勉強(第1歩/全3歩)

リアクション公開中!

【相方たずねて三千里】懇親会でお勉強(第1歩/全3歩)

リアクション

「うーん、三人ともいつの間にか契約してたからなぁ」
 と、神和綺人(かんなぎ・あやと)は言った。
 トレルはそれを聞いて、いつの間にか契約なんてこともあるのか、と感心する。
「気づいたら、あ、契約してたって感じだったんだよね」
 綺人はそう言って笑う。
「それに、クリスとユーリは地球、しかも実家で出逢ったからね」
「実家で?」
 トレルは目を丸くした。何て羨ましい人だろう。
「一年前になります。当時のことは、実はよく覚えてないのですが――」
 と、クリス・ローゼン(くりす・ろーぜん)が口を開く。
「気づいたら、アヤの実家の庭に浮かんでいたらしいのです。でも、この人です! と、強く感じたのは覚えています」
 パートナーとの出逢いには、やはり何かしら感じるものがあるらしい。
「その瞬間に意識を失ってしまいましたが……パートナー契約というものは運命なのです。いえ、宿命でしょうか?」
「宿命ねぇ」
「ちなみに、アヤと契約する前の記憶はありません。何か大事な使命があったような気もしますが、思い出せません」
「あ、クリスが僕のことをアヤって呼ぶのは、契約のショックで気を失ってる間に姉さんが、僕を『アヤ』って紹介したせいみたい」
 と、綺人。クリスの話が終わったのを見計らって、ユーリ・ウィルトゥス(ゆーり・うぃるとぅす)が口を開いた。
「二年前だったか、まだ霊体だったせいで屋敷に迷い込んだ幽霊その1扱いだったな」
 守護天使のユーリもまた、綺人と出逢った瞬間に契約をしたという。
「ちなみにあの屋敷には式神や使い魔、迷い幽霊が当たり前のようにいたからだろうな。契約するまで、パラミタの人間だと気づかれなかった」
 パラミタの種族は契約することで実体を得る。幽霊だと誤解されるのも当然だろう。
「補足すると、幽霊があの屋敷に入り込むと、問答無用で綺人の姉と兄に使い魔にされるらしい。……俺は、運が良かったな」
 そう言って、少し苦笑してみせる。
「あの兄妹には、契約後、思い出したくもない目に遭わされたが」
 どうやら、苦い思い出があるらしい。聞かないでおこうと、トレルは思った。
「わたくしは、元々、綺人の実家の蔵にあったのです。永い年月封印されていましたが、綺人の姉に発見されました」
 と、神和瀬織(かんなぎ・せお)
「とある図書館に寄贈するための絵本の中に紛れ込まされ、パラミタに送られました」
「魔力を帯びてて危険だってユーリは言ったんだけど、何があるか見てみようとして開いてみたんだ」
「その瞬間に封印が解かれ、それと同時に契約したようです」
 と、まとめる瀬織。
「そうか、魔道書か……」
 それなら本がたくさんあるところへ行けば出会えるかもしれない。まぁ、実家に蔵がないのが残念だ。
「そういえば、綺人の契約に何らかの形で神和兄妹が関わりますね」
 瀬織はふいにそう呟いた。
「いつか互いに引き合うものなんじゃないかな、パートナー同士って」
 と、綺人は言う。
「案外、すぐ近くにいるかもしれないよ。気づかないだけで」
 にこっと笑う彼を見て、トレルは少し希望を持つ。本当に、身近なところにいる可能性だってあるのだ。

 高峰結和(たかみね・ゆうわ)は、その会場で自分だけ浮いてやしないかと不安になっていた。思っていたよりも会場は広いし、ごちそうは並んでいるし、何より人が多い。
 一方、結和のパートナーであるエメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)は、目をキラキラと輝かせていた。好奇心旺盛な為に、わくわくしているのだ。
「……な、何て話しかけよう」
 自分と同じ年頃の人たちもいっぱいいるが、戸惑ってしまう。まだパラミタに来たばかりで知り合いも多くないから来たのに、これではどうしようもない。
 用意してきた名刺を取り出し、結和は決意する。あそこでご飯に夢中になってる女の子へ声をかけよう! 年齢近そうだし。
 しかし、最初に声をかけたのは、その女の子の方からだった。
「お友達になりませんか?」
 にっこり笑うミーナ・リンドバーグ(みーな・りんどばーぐ)
「え、え、あ、はいっ!」
 思わず戸惑う結和。エメリヤンはミーナの笑顔に気を許したのか、にこにこしていた。
「ミーナ・リンドバーグっていうの。よろしくね」
「よよ、よろしくお願いしますー」
「僕はエメリヤン・ロッソー」
 と、エメリヤンが自己紹介するのを聞いて、慌てて結和も言う。
「た、高峰結和、です……!」
 そして手にしていた名刺を一つ、ミーナへ渡す。
「あ、このクリップすごーい」
 と、ミーナは早速それに気が付いた。結和とエメリヤンの名刺を束ねるクリップには、リボンとレースの小さなコサージュが付いているのだ。
 褒められたエメリヤンは、嬉しそうにマフラーへ手を入れた。ごそごそと他の小物を取り出してミーナへ見せる。
 その様子に、結和の緊張も少しずつ解れ始めた。