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それぞれの里帰り

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それぞれの里帰り

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 黄金色に輝く寺を見つめた瞬間から、ルーフェリア・ティンダロス(るーふぇりあ・てぃんだろす)は自分の口が力なく開いてゆく感覚を味わった。雲一つない快晴だった事も影響しているのかもしれない、それでも、話しに聞いていたよりもずっともっとに輝いていた。黄金色に輝く小さな山にも見えた。
 沸き上がる感動をそのままに、僅かに力を込めれば叫べてしまえるのだが、ルーフェリアは我慢した。それは、パートナーの月谷 要(つきたに・かなめ)から「叫ばないように」と念を押されたから、だったのだが……。
「ぅわお。ホントに金ぴかだよ金閣寺。おもしれー」
 が叫んでいた。{boldルーフェリアの口が開いたままになったとしても、誰がそれを指摘しよう。指摘するなら、先程からルーフェリアの腰に抱きついているマリー・エンデュエル(まりー・えんでゅえる)の方だろう。
「くぅ〜ん、やっぱり、腰のくびれに顔を埋めて見る金閣寺は、格別よね〜」
「そこっ! むやみやたらと、ひっつかない!!」
 おぉ、さすがは悠美香マリーへの注意と指摘は任せれば良いな。ん、ならオレは。
「うおー、池に映ってる金閣寺も金ぴかだぜー」
 の奴、叫びながら柵から乗り出してやがる。人に抑止かけといて、自分は叫ぶって…… まぁ、気持ちは分かるがな。
 水面に逆さに映っても、その輝きは衰えない。虚構やファンタジーの世界で異世界への入り口に用いられてきた事も納得できる。瞳を離せない、思考速度も遅くなっている、背筋もゾクゾクとして−−−
「人目があるって言ってるでしょ」
「あぁぁ〜、お尻まで続く曲線美も世界遺産に匹敵するのに〜」
 悠美香がサイコキネシスでマリーを引き離していた。
 ワクワクが止まらないは、瀬蓮を掴まえて一緒にキャッキャッしようとしていた。
 金閣寺に歩み近づくにつれて、高まる鼓動と、果たしてこのまま歩み寄ってよいものなのかという疑問を感じる事となった。それは幼き頃より何度も足を運んだ瀬蓮においても例外では無かった。
 聖域に近づいているような、己の存在や価値といった哲学的な倫理螺旋の一端に踏み入ってしまったかのような、恐怖にも似た感覚に足が重くする。 それでも魅かれ、寄せられる。
 引き締まる身体で、一行は金閣の寺へと歩み触れて行った。



 静かなる面持ちで、エース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は『八坂神社』を訪れていた。祇園祭の盛況からしばらくが経っているからだろうか。エースが見上げた社は、すっかりの静寂に包まれているように見えた。
 目を閉じて、お参りをした。
 社に背を向けて共に歩みながら、エオリア・リュケイオン(えおりあ・りゅけいおん)は温和な口調で訊ねた。
「何を、願われたのです?」
「………… 少なからずの加護を、俺に下さいってな」
「おやおや、以前に聞いたものとは、大分違ってますねぇ」
「あれは……、都合の良い言い訳だ」
「…… そうですか」
 この先、瀬蓮はきっと激動に巻き込まれてしまうのだろう。八坂の神社、日本の八百万の神々ならば、自国の民である彼女に加護を与えてくれるのではないか。
 自身の転校により、彼女に会う機会も減ってしまう。すぐに駆けつける事は難しいかもしれない、だから。
 瀬蓮の安全を願ってか、はたまた神々への祈りを続けているのだろうか。エースは非常に穏やかな表情をしていた。
「それはそうと、エースの信仰する神様は日本の神様ではなかったと思うのですが、違う宗派の方の願いも聞き入れてくれるのですか?」
「…………日本の神は心が広いんだ」
「それは素晴らしいですね」
 物体に魂が宿る、そして人々はそれらに近づき崇め、神と呼ぶ。素晴らしきは日本の人々の心、和心の方かも知れませんね。
 瀬蓮たちとの合流は明日。時間が許すまで、五社廻りを楽しむとしましょう。