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秋だ! 祭りだ! 曳き山笠だ!

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秋だ! 祭りだ! 曳き山笠だ!

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「さて、次は、カレン・クレスティア(かれん・くれすてぃあ)さんの深緑山笠です。こんもりとしています。怪植物のツタで被われた山笠は笹山笠の一種としていいのでしょうか……。見ようによっては、世界樹のようにも見えますが。なお、中には御神体としてイルミンスールのエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)校長とアーデルハイト・ワルプルギス(あーでるはいと・わるぷるぎす)様のお写真が入っているそうです。いったいどんな写真なんでしょうねえ」
「頑張って優勝狙うのよ!」
「やれやれ、こんな急ごしらえの山笠で優勝が狙えるとは思えぬが。まあ、我が後ろから押せば、そこそこの成績は望めるであろう」
 張り切るカレン・クレスティアに対して、ジュレール・リーヴェンディ(じゅれーる・りーべんでぃ)はあくまでも冷静であった。レールガンで敵を一掃してしまえば楽勝なのだが、さすがにそれはまずいだろうと今回は自重している。
 
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「さて、次はヴァイシャリーから参加のゴージャス山笠です。こ、これは大きい。今回最大の規模を誇るお城のような山笠です。しかも、金びかに彩られています。ま、まぶしい……」
「ほほほほほ、このわたくしに派手さで対抗しようなどとは、五千年早いですわ」
 山笠のてっぺんにしつらえた王座に優雅に座りながら、お嬢様が羽根団扇をゆっくりと動かしながら言った。
「お人形さん持ってきたです。かわいくなると思うんです。乗せてもいいですか?」
 山笠を作れないのでゴージャス山笠に加えてもらったヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)がお嬢様にお願いした。
「いいですわよ。もーっと派手に、もーっとゴージャスにお飾りなさい!」
「わーい」
 上機嫌のお嬢様の返事に、ヴァーナー・ヴォネガットは嬉々として山笠のあちこちに持ってきた人形を取りつけていった。ティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)セイニィ・アルギエバ(せいにぃ・あるぎえば)パッフェル・シャウラ(ぱっふぇる・しゃうら)、ろくりんくん、フロッギーさん、ルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)などの人形や、他にもいろいろな人形がさらに山笠を飾っていく。
「派手なのはもちろんいいが、優勝を狙うのなら、頑丈さも必要だぜ。少し補強しないとな」
 豪華になっていくのはいいが、それだけ脆いのではないかとトマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)が心配する。
「ですが、優雅さを失ってしまっては矜持がむだになってしまいますな。ここは、エレガントに、隠れた補強をするといたしましょう」
 魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)が進言した。
「そんなことだろうと思って、肝心要の台車の部分に余っている装甲板をつけといたぜ。これで重心も下がったから、かなり安定したはずだ」
 こんなこともあろうかと先に手を打っておいたとテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)が言った。
「さすがだな」
 トマス・ファーニナルが満足そうに言う。
「それにしても、ここのお嬢様って名前はないのかしら?」
 素朴な疑問をミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)が口にした。
「それは、ひ・み・つ・です」
 執事君が、チッチッチッと人差し指を振って言った。
「まあ、いろいろふざけた遊びばっかしてるから、半分勘当状態なんで家名を出せないってのがほんとなんだけどね」
 ああめんどくさいと、メイドちゃんが淡々と言う。なお、地球から来たこの二人にはりっぱな名前があったりするのだった。
 
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「さて、次は……。すいません、しばらくお待ちください」
 シャレード・ムーンが、マイクから顔をそむける。
「ちょっとお、またリストにないじゃない。どーなってるのよ。えっ? また乱入。まったくどいつもこいつも……。あっ、失礼いたしましたあ。次は、くうきょう山笠空京稲荷 狐樹廊(くうきょういなり・こじゅろう)さんです」
「どうして、飛び入り参加したのですかあ」
 大谷文美が、空京稲荷狐樹廊にマイクをむけた。
「それはもちろん、お祭りだからですよ。空京で行われるお祭りであるのに、肝心の地衣のくうきょうを祭らなくてはだめではないですか。本当は誰かがちゃんとお祀りすると思っていたのですが、誰も御神体にくうきょうを使っていないと分かったので、急遽参加したのです。稲荷としては、ちゃんと空京神社にくうきょうを奉納してみせます。たとえどんな手を使ってでも……」
 そう答えると、空京稲荷狐樹廊は扇子で口許を隠して思惑を秘めた表情を隠した。
 山笠は、くうきょうの人形を御神体して掲げた人形山笠だ。急ごしらえでは、これが精一杯だったらしい。
「あーあ、まったく、大丈夫なのかしら」
 そんな空京稲荷狐樹廊の様子を陰から見守りながら、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)が溜め息をついた。
 どうにも、嫌な予感しかしない。たぶん大曲で観客に突っ込んで華々しく自滅とかいうシーンしか頭に浮かんでこないのだ。
「というわけで不安がぬぐえないから、アレックス、サンドラ、もう一つの大曲の方をお願いね」
「師匠の頼みとあれば、大船に乗ったつもりで任せてほしいッス。ほんとはレースを全部見たいッスけど、曲がり角は轟雷閃を使ってでも守りまッスから」
 リカイン・フェルマータの言葉に、アレックス・キャッツアイ(あれっくす・きゃっつあい)がドンと自分の胸を叩いた。
「不安がぬぐえないって、なんだろうねー」
 何が起きるのかと気にしながらも、サンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)もうなずいた。
 さっそくキャッツアイ兄妹とリカイン・フェルマータはスタート地点から大曲の方へとむかっていった。
 
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「さて、次はサレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)さんのデコ山笠です。一人山笠なので小さいですが、これはきらびやかですね、キラキラと光っています。碁石やレッサースフィアや光条石を細かく全面に貼りつけた物のようです。しかし、どちらかというと山笠よりも曳き手の方に男性の視線が集まっているみたいです」
「愛と正義のヒロイン、ここに参上ッス。お祭りッスからね、やっぱり定番のサラシに褌、それに半被でしょう」(V)
 半被の裾から、プリンと引き締まったお尻を惜しげもなく顕わにしながらサレン・シルフィーユがマイクにむかって答えた。
 いや、お祭り用の格好と言えば聞こえはいいが、ハイレグ水着もかくやという赤褌に、たっゆんな胸を申し訳程度に巻いただけのサラシは半被がなければほとんど裸同然である。とはいえ、ひらひらする邪魔な物がないので動きやすいと、サレン・シルフィーユは優勝する気満々であった。