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秋だ! 祭りだ! 曳き山笠だ!

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秋だ! 祭りだ! 曳き山笠だ!

リアクション

 
 

第一直線

 
 
「さあ、レースは現在第一直線を突き進んでいます。早くもデコ山笠が姿を消し、順位は雪だるま山笠、パラ実山笠、それに続く各山笠となっています。最下位は出遅れたゴージャス山笠です」
 シャレード・ムーンが現状をレポートする。
 
「大丈夫か、あちこち壊れかけてきたみたいだぞ」
 後ろから雪だるま山笠を押すコルセスカ・ラックスタインが叫んだ。先ほどパラ実山笠に追突された衝撃で、山笠に相当無理がかかったらしい。
「このままではジリ貧でござるな。大丈夫でござる。なんとか修理するでござるよ」(V)
 童話スノーマンが、雪だるまのハリボテの弱くなった場所を氷術で凍らせて補修しながら叫んだ。
「ならば、突っ走るだけです」
「ははははは、燃えてきました。加速します!」
 クロセル・ラインツァートの言葉に、ルイ・フリードが速度を上げていった。
 
    ★    ★    ★
 
「ふふふ、よく燃えそうな山笠があるね。燃えちまえ〜」
 深緑山笠に目をつけたブルタ・バルチャが、ワイバーンに命じて火を吐きかけさせた。
「きゃあ、火はだめなんだもん」
 あっと言う間に燃え移る炎に、カレン・クレスティアが悲鳴をあげた。
「大丈夫なのだ。我に任せるのだよ。五秒で終わらせる」(V)
 オートバリアで炎を弱体化させながら、ジュレール・リーヴェンディが火のついた葉を刀で切り落としてなんとか鎮火させた。被害は、外の葉っぱが黒こげとなり、多少中の御神体が焦げた程度だ。だが、それを知ったらブルタ・バルチャは卒倒していただろう。
「おしい、もうちょっとだったな……」
 そうジャジラッド・ボゴルが言ったとたん、パラ実山笠の突き出た角の一本が爆発して吹っ飛んだ。
「道をあけよ。さもなくば、薙ぎ払うぞ」
 ビシッと前方を指さして叫ぶ悠久ノカナタを乗せた白熊山笠が、一気に加速して追いかけてくる。
「どけどけどけー。おらー! ぶっ飛びやがれ!」(V)
 雪国ベアが、前方を走るお月見山笠を避けようともせずに加速する。
「あっぶない!」
 あっけなく撥ね飛ばされそうになって、笹咲来紗昏のお月見山笠があわててコース変更して横へ避けた。あわや転倒しそうになるが、なんとかサイコキネシスで立てなおす。だが、衝撃で、ばらばらと月見団子や干し首が道路に散乱していった。
「あんな美的感覚のない山笠など不要。粉砕せよ」
「はーい」
 悠久ノカナタの命令で、ソア・ウェンボリスが容赦なくパラ実山笠にむかって白熊山笠の目からビームを発射して攻撃していく。
「いいですね、そのままもっと潰し合うがいいのです」
 いい感じの展開だと、空京稲荷狐樹廊がほくそ笑んだ。
 
    ★    ★    ★
 
「きゃー、なんか変なのがいっぱい転がってきます!」
 お月見山笠が転がってきたいろいろな物を見て、後ろを走っていた百合園山笠の姫宮みことが悲鳴をあげた。なんだか、あんまり触りたくない物も混じっている気がする。
「任せておくのじゃ。ほれほれほれ」
 本能寺揚羽がディフェンスシフトをしいて、転がってくる物を華麗に避けていく。
 小型の山笠だったことが、幸いした。大型の山笠では、飛んでくるような物は簡単には避けられない。
 それをもろに実感していたのはドラゴン山笠であった。
 なぜか、突然沿道から投石を受けたのである。
「きゃあ」
「ジーナ、危ない……いてっ、いてっ」
 七尾蒼也が、身を挺してジーナ・ユキノシタを投石から守る。
「おうおうおう、てめえら、いきなり何をしやがる。か弱い女子や動物を狙うなんて、人様の風上にもおけねえ外道だぜ。そんな奴らは、他人は許したとしても、この桜吹雪が許しゃしねえんだぜ」
 ガイアス・ミスファーンが肩から腕にかけて貼りつけた桜吹雪を見せて怒鳴った。今日は、いつもと違って時代劇ノリノリである。
 その声に、石を投げたパラ実生たちが一瞬怯んだ。
 
    ★    ★    ★
 
「もしもし、空京警察ですか。沿道に変な者たちがいます。テロリストかもしれません」
 空中からレースを見守っていたヨハン・サンアンジュが、すかさず空京警察に連絡した。だが、その者たちが彼のパートナーの笹咲来紗昏が事前に妨害を頼んでいたパラ実生の手下たちだったとは知るよしもなかった。
 だが、空京警察が駆けつける前に地上では動きがあった。
「観客席から邪魔をするのはひきょーです。成敗!」
 ヒーローのお面を被ったミニ浴衣の女の子が、石を投げたパラ実生にむかって山ほどかかえていた水ヨーヨーを次々に投げつけて追い払っていったのだ。もちろん、その正体はミーナ・リンドバーグである。
「今のうちです。急ぎましょう」
 妨害がなくなったのを察知したユイリ・ウインドリィに急かされて、ジーナ・ユキノシタたちはスピードを上げて遅れを取り戻しにかかった。
 
    ★    ★    ★
 
「激しいぜ。こりゃ、よっぽどしっかり準備しておかないと、あっけなくやられちまうかもしれないな」
 様子を見つつ安全なルートをとりながら、雪の下山笠の雪ノ下悪食丸はつぶやいた。
 その後方からは、やっと態勢を立てなおしたゴージャス山笠が遅れを取り戻すべく一丸となって走ってくる。
「焦らずに。先頭に立つのが安全とは限りません」
 魯粛子敬が、全体を引き締める。
「今度攻撃を受けたら、絶対に守ります」
 メジャーヒールで全員の軽傷を治したヴァーナー・ヴォネガットが叫んだ。
「おらおらおら、一気に挽回だぜ」
 テノーリオ・メイベアが、力任せに後ろから山笠を押した。
「いや、ここはお嬢様に合わせて、もっとエレガントに……」
 トマス・ファーニナルがそう言いかけたのだが。
「ゆけー、すべて踏みつぶせー!」
 山笠の上では、お嬢様が手摺りに片足を引っかけて叫んでいた。
「えっと……。行っけー!!」
 一瞬考えてから、トマス・ファーニナルはお嬢様に合わせて叫んだ。