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クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…

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第10章 寂しいイブでも傍にいるのはやっぱりパートナー

「はぁ~こんなクソ寒い日に、アイスなんて食べるやついるのかよ。魔法学校の校長と一緒にいた生徒が買ってくれたけど、あれっきり誰もこないじゃんか」
 イブの日で熱々のカップルがいたとしても、熱すぎるからってアイスを買いにくる者は1人もいない。
 カセイノはブツブツと言いながら、目の前を行き交う人々を睨むように眺める。
「もしかたらアイツがここに遊びにきたり・・・するかもな」
 そんなことを考え、ぼーっと往来を見て呟く。
「あれって・・・どうしてここでバイトしているんですの?まぁいいわですわ、ちょっと行ってみましょう」
 見知った顔を見つけた女子がニコッと笑いアイス屋へ行く。
「って・・・、いたし・・・。はぁ、なんだおまえか」
 客かと思って椅子から立ち上がるが、よく見るとそこにいるのは見知った女子生徒だ。
「先約があるってアルバイトだったんですの?」
 リリィ・クロウ(りりぃ・くろう)は眉を潜め、椅子に座っているカセイノを見下ろす。
「(もしかしたら会うこともあるかもって、さっき考えてたけどよ・・・・・・。ほんとに出るとは)」
「しかもアイス屋の・・・」
「いーだろ!日雇いのバイトでも、ちゃんとそれなりにクリスマス手当てが出るんだよ!こんちくしょうっ」
 からかうように言われてムッとしたカセイノはプイッとそっぽを向く。
「ひとつおごってくださいな?」
「はっ、なんで・・・」
「あら、ひとつおごってくださったら。2つくらい買ってもいいですわよ。だって・・・他に来る人なんていないのでは?」
「うぐ・・・。仕方ないな・・・どれがいいんだ」
「そうですわね、リンゴのアイスにしますわ」
 彼から受け取ったアイスをスプーンをすくって食べる。
「ところでわたくし以外に、誰か来ました?」
「来てくれたな、いっぱいな」
「いっぱいって、本当ですの?」
「う・・・・・・魔法学校の生徒が1人・・・買いに来ただけだな」
 疑いの眼差しを向けるリリィに白状する。
「フフッやっぱりそうでしょうね」
「だぁあもう、バイト代がもらえればいいじゃんか」
「ほぼただ働きでもらおうなんて甘いですわ。そんなに売れ残ってしまったら、まともにもらえるかどうか怪しいですわね」
「うぐ・・・それはっ」
 スズメの涙ほどもない給料になってしまうのかと思い、売れていないアイスたちへ視線を移す。
「冗談ですわよ、冗談・・・」
「当たり前じゃんか、もらえないわけないし」
 カセイノはからかわれているのに気づかず、一応売ったんだからもらえるはずと言う。
「冷たーい。食べるのに時間がかかっても溶けないから良いですよね。真冬のアイスって」
「なぁ、実際寒いだろ。無理してねぇか?」
 ふるふると振るえ始める彼女を見上げる。
「寒いですわよ~。でもたまの贅沢ですから。大丈夫なんです」
「もうよしたほうがいんじゃないか?」
「後少しですわ。ごちそうさまでした」
 やっと食べ終わったリリィはカップとスプーンをゴミ箱へ捨てる。
「(誓いの言葉・・・ここで言うのは恥ずかしいですね。でも・・・直接いいませんと・・・)」
 言おうかどうしようか、カセイノを見つめて考える。
「素敵な絆よ永遠に。あなたと出会う偶然は愉しむことと誓います。エス イスト シュヴール イン リューゲ ニヒト」
「それって町の橋の下で言うんじゃないか?しかも口に出して言うんじゃなくって、心の中でさ」
「ありゃ?間違えちゃいましたか」
「さては、パンフレット無くしたのか?」
「縁に縛られるのも、縁で縛られるのも趣味ではありませんし。別に良いのですわ」
「こら、誤魔化すんじゃねぇよ」
 目を逸らすリリィを見てカセイノがけらっと笑う。
 彼女はどこで誓うか知っていたが、あえてそうせずに直接言わないと意味がないと思い、彼の前で誓ったのだ。