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クリスマス…雪景色の町で過ごすひととき…

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第11章 スターチス〜変らない誓い〜

「プレゼント配っている人がいるわね、行ってみよう紗月ちゃん」
「お、何くれるんだろう?」
 来場者にプレゼントを配ってアルバイトをしてる由宇を見つけ、ルカルカ・ルー(るかるか・るー)椎堂 紗月(しどう・さつき)が列に並ぶ。
「ルカたちにもくださいー♪」
「はーい、2人分ですね。アレンくん、どれがいいかな」
「荷物にならないように、小さいのを渡そうか」
「そうですね。あ、それなんてどうですか?」
「うん。そうだね」
 アレンは袋の中から瓶と箱を取り出して由宇に渡した。
「何かなぁ〜?―・・・ルカのはお酒じゃないシャンパンね!」
「俺は砂糖をまぶしたクッキーだな」
「ありがとう♪じゃあねー」
 お礼を言うとルカルカたちは由宇とアレンから離れる。
「面白そうなアトラクションがいっぱいあるね!」
 マップを見ながらルカルカは金色の双眸をキラキラと輝かせせる。
「絶叫系とか面白そうね」
「フードショックマンションとかはどうだ?」
 イブの日にもかかわらず園内を案内してくれる友達の紗月に、明らかに恐ろしい何かが潜んでいそうなアトラクションを勧められる。
「行きたいっ♪」
「おっし、じゃあ行くか」
「ショップじゃなくてショックだなんて、ネーミング的にわくわくするわね〜」
 紗月に案内され、危険ゾーンにチャレンジしようと走る。
 列に並び1時間待った後、モードを選ぶ。
「難易度のリイシューとシュタルクどっちかに決めた後、アオスシュテルベンとシュレッケン、ヴァイネンの3種類の中から選ぶんだ」
「うぅ。ルカ、ドイツ語分かんないよー」
「んーまぁ、俺も地元だから分かる程度なんだけどさ。えーっとこの難易度は、英語でいうイージーとハードだな。3種類のメニューは滅亡、恐怖、泣くだったけか」
「め、滅亡!?」
「どうする?やめとくか」
「ううんっ。せっかく並んでやっと順番が来たんだもの、行くわっ。シュタルクのシュレッケンにする!」
「じゃあそれにするか」
 ギィイィイッと不気味な音を立てて開くドアが開かれ、2人はその中へ入っていく。
 席につくと“本日はご来店いただき、ありがとうございます。まもなく料理が運ばれますのでしばらくおまちください。”とアナウンスが流れる。
 メイドの格好をした従業員たちが、トレイに乗せた料理を運びテーブルの上へ並べると、さっと部屋から出て行く。
 その数秒後、“それでは皆様、ごゆっくりと料理をご堪能されてくださいませ”と再びアナウンスが流れた。
「堪能するっていうのは分かるけど、されるってどういうことなの?」
「ルカちゃん、今に分かるぜ」
 ハテナと首を傾げる彼女に紗月がニヤッと笑う。
「ふっ、蓋が勝手に!?きゃぁあーっ、パスタが動いてる!」
 料理が盛られている皿に被せてある蓋がポーンッと吹っ飛んだかと思うと、その下にあったすいとんのようなパスタがうねうねと蠢いてる。
「―・・・何?パスタから何か聞こえるみたい・・・って、喋ってるの!?」
 ぶつぶつと呟くような声音が聞こえ、驚きのあまりルカルカは目を点にする。
「食べてよぉお、食べておくれよぉお」
「しかもどう見ても普通のトマトスパなのにっ」
「なぁ食べておくれってばぁ」
 しゅるると触手のように伸び彼女へ迫る。
「うぅん、遠慮しておこうかな」
「―・・・さっさと、食べろっつてんだぉおおっ」
「ひっ、きゃぁああーっ!?ふむぐっ」
 突然乱暴な口調へ変わり、ルカルカの口の中へ突撃してきた。
「うわぁあぁん、美味しいよぉお」
 無理やり喰わされた恐ろしさと美味しさで泣き出してしまった。
「どう?客の口の中にとっこんでくる料理、面白いだろ?昼食を食べる感じで来るやつもいるんだよルカちゃん」
 泣くほど楽しいのかと思った紗月は笑顔で教える。
「デザートもあるんだぜ」
「えっ、デザートってまさか・・・」
「生クリームたっぷりのケーキやプリンだな。まぁ、遊んでいるうちに消費するから気にするほどのものじゃないからさ」
「紗月ちゃん、それは気にしようよ!―・・・うっ、まさか・・・」
 甘い恐怖の香りを察知したルカルカが、スローモーションで振り返る。
「よぉ、そこのねぇちゃん。食べろやオイ」
「ひぃっ」
 真後ろでケーキたちが彼女に食べられようと迫っている。
「いやぁあっ、来ないでー!この時期はやめてぇえ!!」
 部屋の中をどたばたと走り、甘い物たちから必死に逃げ回る。
「いくら生クリームがあるからって、一応控えめだぜ?だいたい1個100キロカロリーだな」
「だって10個以上に追いかけられているのよっ。10個食べちゃったら1000よ、1000ーーっ!紗月ちゃん助けてぇえ」
「んー、後2分くらい耐久すれば自然消滅するから大丈夫だって。あ、食べたのは消滅しないで残るけどさ」
「ひゃぁああっ」
 誰も助けてくれない現状にルカルカはもはや発狂寸前だった。
「おっ、時間だ。扉が開いたぞルカちゃん、出ようか。もしもーし?ルカちゃーん。あぁ〜こりゃショックが大きすぎたかな?」
 涙を流して放心状態になっている彼女をおぶってアトラクションから出て行く。
「うぅ〜怖いよぉ。甘い物怖いよぉ〜。―・・・っ!紗月ちゃんごめんねっ、今降りるから」
 やっと正気に戻ったルカルカが紗月の背から降りる。
「これくらいいよ。あれはちょっと刺激が強かったかもな」
「あははっ♪でも面白かったわよ。あのデザートは本当に怖かったけどねっ」
「そっか。じゃあ、次はプレゼントを選びにいこうか」
「うん!お互いの恋人のためにね」
「確かこの辺りに・・・あったあった!屋根にプロペラがついている店が洋服とかを売っているショップなんだ。まぁ、あれはただの飾りで飛ぶわけないけどさ」
「可愛い感じのショップね♪」
「町のクリスマスマーケットにあるクリスマスタワーのちっさいバージョンな感じの店だな」
 扉を開けると中は玩具箱のようなファンシーな雰囲気の店だ。
「一見、女ものしかなさそうに見えて男物の服もあるんだぜ」
「へぇーそうなの!ねぇ、中がもふもふしてるのはどう?襟に朔ちゃんのイニシャル入れるとか?」
 マネキンに着せてある服を指差して紗月に勧める。
「うん、いいなそれ!じゃあちょっと買ってくるよ」
「行ってらっしゃい。(フフッ♪この隙に)」
 会計している間にそれとお揃いの服を掴み、別のレジへ並んで買う。
「あれルカちゃん、それは?」
「ナイショ♪後で教えてあげるね」
 何を買ったのか知れないように、さっと買い物袋を後ろ手に隠す。
「うーん、気になるなぁ。後で教えてくれるっていうからいいか。俺のは選んでもらったからルカちゃんの彼氏のプレゼントを選ばないとな」
「彼、背が高いから。ほら見て、大っき〜い。これにする!」
 フォーマルコートを選ぶと彼氏のために買い、紗月とショップから出るとすっかり日が暮れていた。
「金団長がジェットコースターに乗ってるわっ」
 垂と一緒に乗っている彼に、遠くから敬礼して挨拶をする。
「なぁ、あれって空大の校長じゃないか?」
 紗月の視線の先を見ると、ジョットコースターのアトラクションから出てきたアクリト・シーカー(あくりと・しーかー)の姿を見つけた。
「こんにちわ!こんなところまで研究をしに?」
「あれだけのスピードがあるにも関わらず、しかも安全性を考えられていて子供でも乗れるようだぞ。ジェットコースターとは一般的に、身長制限があるものだがあれはなかったな。あの構造は実に興味深かった」
「そうなの・・・?」
 冷静な口調で淡々と話す彼を不思議そうに見つめる。
「他の乗り物も研究してみるつもりだ。では、私はこれで失礼する」
 そう言うと別のアトラクションへ移動して行く。
「遊園地なのに面白さを求めたりしないのかしら。変わった人ね」
「ルカちゃんゴンドラに乗らないか」
「うん、乗りたい!」
 2人はゴンドラに乗り、園内の夜景を眺める。
「凄いね、氷のアトラクションが青く光ってるわ」
「あのでっかい観覧車は淡いクリーム色っぽい感じだな」
「プレゼント交換しよう。これでペアルックかな?かな?」
 昼間、ショップでこっそり買った服を袋から出して見せる。
「ペア!?何か恥ずかしいな〜、ありがとうルカちゃん。俺からはこれを」
「コート?」
「大人な落ち着いた雰囲気がいいかと思ってさ。ルカちゃんのと、もう一着あってもいいんじゃないか。あげたのはルカちゃんが選んだことにしてもいいしさ」
「緑なイルミンカラーね♪教導団で来ている服と被っちゃうとつまらないからその方がいいかも。あ、そうだ。チョコ作ってきたの。あーん、もぐもぐして、えへっ♪」
 もらったコートを袋にしまい、料理特訓中のルカが作ったカカオを沢山使った甘くないチョコをカバンから取り出し食べさせる。
「んむぅっ!?苦いよっルカちゃん」
「ありゃ?入れすぎちゃったかな、ごめんね」
「昼間に行ったフードショックマンションで食べたケーキとかの甘さが残っている影響かもな」
「うっ、それを言わないで!」
「あはは♪冗談だって」
「だったらいいんだけどね。ここって、ダブルデートで来てもいいかも〜」
「なぁルカちゃん。学校は違うしあんまり頻繁に会えもしないけどさ、大切な友達なんだし俺の力が必要な時はいつでも呼んでくれよな。いつだって、応えてみせるからさ」
 橋の下を通り過ぎ様に近いの言葉を言い、爽やかな笑顔をルカルカへ向ける。
「ありがとう紗月ちゃん」
「はっ、あぁあっ!しまった、シュヴール橋は遊園地の外にあるんだった」
「ううん。それでもルカには伝わったから嬉しいよ♪」
 いつまでも友達でいてくれようとする紗月に、ルカルカもずっと仲良しの友達でいたいと思いニッコリと微笑んだ。