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【2021正月】羽根突きで遊ぼう!

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【2021正月】羽根突きで遊ぼう!

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第14章 閉幕「報酬の清算お願いします」

 ハイブリッド羽根突き大会は終わった。だが、物語はまだ終わらない。むしろこれからが本番の者がいるのだ。
 そう、ハイブリッド羽根突き勝者による「バツゲームの支払い」である。

「いいぞー、セーフェルー。その調子でゆっくりとなー」
「なに、落ちたらその時は我々で受け止めてやるから安心しろ」
「……気をつけてね」
 和原 樹、フォルクス・カーネリア、ショコラッテ・ブラウニーが見守る中、セーフェル・ラジエールが4枚の絵馬を、世界樹イルミンスールの枝に吊るそうとする。高さがあるため空飛ぶ箒を使っているが、落ちてしまってはシャレにならない。
「まあ、軽いバツゲームでよかったですよ、ほんと……」
 そうセーフェルはつぶやく。
 絵馬には彼ら4人の願いが書かれていた。

『もっと地球とパラミタのことを知りたい』
「どっちの世界にも、まだ知らないことがたくさんあるからさ。知ってどうするわけでもないんだけど」

『伴侶との仲をより深める』
「伴侶というのは無論、樹のことだ。今の関係にもそこそこ満足してはいるが、やはりこう……色々とな」

『兄さんたちがもっと仲良くなりますように』
「夫婦の契りを交わすくらい、仲良くなって欲しいの」

『もっとマスターの傍に居たいです』
「時々、留守番になることがありますから……。仕方ないと分かってはいるんですが、やっぱり寂しくて」

 イルミンスールは、そんな彼らの願いを聞き届けてくれはしないかもしれない。だが聞いてくれないとしても、今だけは……。


「さあて、レオン。約束のバツゲームはわかってるわよね?」
「イルミンスールの学食でおごれ、ってやつでしょ? わかってますって。でもあんまりたくさんは勘弁してくださいよ。小遣い少ないんですし」
「あら、何かに使ったの?」
「それはさすがに企業秘密ということで」
 宇都宮祥子のバツゲームを達成するため、レオン・ダンドリオンはここイルミンスール魔法学校の学生食堂に来ていた。イルミンスール魔法学校の校風がドイツ風だからなのか、食堂もドイツの雰囲気をかもし出しており、パンやチーズがバスケットに詰め込まれているのをよく見かける。
 祥子が注文したのは、赤ワインとサワーチェリーが入ったチョコレートケーキであった。特に高価なものではないためレオンの財布に響くことは無い。
「それじゃレオン、お願いね」
「は?」
「は、ってバツゲームに決まってるじゃない」
「もう支払ったでしょ?」
「忘れたの? イルミンスールの学食で甘味をおごってもらうのと、そのついでに『食べさせて』って言ったじゃない」
「あっ!?」
「というわけで、お願いね」
 なるほど、これは確かにバツゲームにふさわしい。今は食堂にそれほど人はいないが、それでも周囲の注目を集めるのは確かだろう。
 観念してレオンは祥子の口にケーキを一口分放り込んだ。この光景を天海北斗あたりが目撃したらどのような反応が返ってくることやら……。
「うん、おいしい。とりあえずこの1個が無くなるまで、お願いね」
「……ハイ」
「まあ、どうせ『今の内』なんだしね……」
「というと?」
「今は落ち着いてはいるけど、いずれ大きな戦争が始まるのは目に見えてるわ。そうなったら、今日みたいに遊んではいられなくなるのよ」
「…………」
「あ、それとも、私みたいな年上じゃそんな気分になれないとか?」
「な、何を言ってるんですか!」
 祥子にそんなことを言われ、レオンは顔を赤くしながら声を荒げる。怒りではなく照れのためだ。
 その後もしばらく彼は、目の前の元教導団員にからかわれ続けるのであった。


「うん……、この辺は、こんな感じ……」
 イルミンスール魔法学校の美術室にて、フェンリル・ランドールは師王アスカからのバツゲームを行っていた。彼女の絵のモデルになっていたのである。
 フェンリルのポーズは、足を組んだ状態で椅子に座り、鞘に収まったルーンの剣を体に立てかけさせ、軽く抱える、というものであった。
「で、いつまでこうしていればいいんだ?」
 大人しく動かずにいたフェンリルだったが、さすがに常時同じポーズというのはつらいものがある――それでも立っているよりはマシではあったが。
「大体のデッサンはできてるから、それが終わったら、ひとまず休憩かな」
「その後は?」
「もちろん着色。あ、でも、完全に完成するまでいてもらうわけじゃないから、適当なところで解散になるかな」
「……まあ特に用事は無いし、しばらくはここにいることにしよう」
「ありがと、それは助かるわ」
 アスカの絵は数日後には完成することとなった。


「う〜ん、この服もいいなぁ。あ〜、でもこれも捨てがたい……。いいや、両方、順番に試しちゃおう!」
「ち、ちょっとアルメリア〜、まだやるの〜?」
 ザンスカールの町、その服飾店にて久世沙幸はアルメリア・アーミテージの着せ替え人形にされていた。
「もっちろん! ずっと何の服が似合うか考えていたのよ? でも沙幸ちゃんったらなかなかそういう服は着てくれないから、今日はもう今までの鬱憤を晴らす勢いでやるわよ!」
「ええ〜!?」
 沙幸は普段からずっと丈がマイクロミニのスカートや着物を着ており、ロングスカートなどを穿く姿は見ない。もちろんミニでもいいのだが、アルメリアはここぞとばかりに沙幸にロングスカートやデニムパンツを穿かせ、それに似合う服を見立て、たまにはミニ丈のものも穿かせてそれに似合う……といったことを延々と繰り返した。
「さて沙幸ちゃん。今度はこの組み合わせよ!」
「さ、さすがにもう勘弁して〜!」
 その後、彼女たちはかなりの時間を服飾店で費やした……。


「ほ、ホントにそれを着るんですか……?」
「はい☆」
 イルミンスール魔法学校内の、とある更衣室。そこでフィリップ・ベレッタは騎沙良詩穂に魔法少女コスチュームを突きつけられていた。これを着ることがフィリップに科せられたバツゲームである。もっとも、詩穂にとってこれはバツゲームではなく、フィリップを魔法少女に近づけるための、いわば「布石」に近いものであったが。
「っていうか、なんで魔法少女なんですか……」
「フィリップ君はメイガスやネクロマンサーなんかよりも、断然魔法少女の方が似合うからです☆」
「僕は男ですよ!?」
「世の中には『男の娘』というジャンルがあります♪」
「僕に女装趣味は無いんですけど!?」
「知ってます♪ でも魔法少女です☆」
「意味がわかりませんよ!」
 いくらバツゲームだからといって魔法少女コスチュームを男の自分が着る、というのはさすがに男としての威厳にかかわる。フィリップとしてはどうしてもこの状況から逃げたかったのだが、目の前の魔法少女を相手にして逃げ切る自信は全く無かった。
「まあそうつべこべ言ってないで、さっさと変身するんです、フィリップ君☆」
 尚もコスチュームを持って詩穂が迫ってくる。まずい、これは非常にまずい……! フィリップは観念する1歩手前だった。
 だがここで彼に助けが入った。
「こら〜! フィリップ君になんてことしようとするのよ〜!」
 一体どこからどうやってこの状況を知ったのか、フィレデリカ・レヴィが更衣室に突撃してきたのである。
「あら、邪魔が入っちゃいましたか……」
 心の底から残念そうな顔をする詩穂。だがフレデリカは止まらない。
「そこの肉体言語が得意そうな魔法少女! さっさとフィリップ君を解放しなさい!」
「嫌です! フィリップ君は詩穂と同じ魔法少女になるんです!」
「フィリップ君は男なのよ!?」
「それでもなんです! 男で魔法少女になってる人はたくさんいるんです! 今更フィリップ君1人くらい増えたっていいじゃないですか!」
「よくないわよ!」
 そのまま詩穂とフレデリカによる好意室内乱闘が発生し、フィリップはそのどさくさにまぎれて姿を消した。
 なお、詩穂作の「魔法少女コスチューム」だが、そのまま彼女が持ち帰ったそうだ。

 こうして、イルミンスール魔法学校――その修練場を舞台にしたバトル劇は、終わりを告げた。これがまた来年開催されるかどうかは、誰も知らない……。


レオン・ダンドリオン(れおん・たんどりおん)――救護班からの治療を受けたため酷い負傷にはならなかったが、動きすぎたために翌日筋肉痛を起こした。再起可能。

フィリップ・ベレッタ(ふぃりっぷ・べれった)――レオンと同じく、翌日筋肉痛(主に脚)を起こす。その痛みはレオンより酷かったらしい。また、魔法少女コスチュームを着せられることはなかった。再起可能だが完全復活には1週間を要した。

フェンリル・ランドール(ふぇんりる・らんどーる)――当然のことながら「羽子板型の魔剣」を見つけることはできなかった。だが元々そのような剣の存在は信じていなかったため、特に落ち込むことはなかった。ダメージもほとんど無く、新入生トリオの中では「勝者」かもしれない。

武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)たちの撮った羽根突きのビデオ――結局全国放送されることは無く、知り合い同士での鑑賞会に使われる。

師王 アスカ(しおう・あすか)の絵――数日後、完成する。フェンリルをモデルにしたその絵をどうするかはアスカ次第だ。

和原 樹(なぎはら・いつき)たちの絵馬――その後、しばらくの間イルミンスールの枝にぶら下げられた。正月ムードが過ぎる頃に、誰かに回収されるかもしれない。

立川 るる(たちかわ・るる)の写真――デジカメの大破はメモリーカードを交換した後だったため、ほとんどは残っていたが、「るるゾーン」を含むメアリー・ノイジー(めありー・のいじー)との試合風景に関するものは消失。ある意味で再起不能(リタイア)。

久世 沙幸(くぜ・さゆき)アルメリア・アーミテージ(あるめりあ・あーみてーじ)――その後、30分ほど着せ替えが続いた。

騎沙良 詩穂(きさら・しほ)――それからも、フィリップを魔法少女にするのは諦めていないらしい?

・イルミンスール修練場――当然といえば当然だが、屋台を含め全てが片付けられた。羽根突きの影響で防護結界の一部に綻びが生じたが、特に大した被害ではなく、その後軽く修復される。

・羽根突きセット――羽子板数枚が破損、羽根は1つが完全消失、数個が見つからずじまい。とはいえ元々大量にあったため、補充されることはなく、また倉庫にしまわれることとなった。


TO BE CONTINUED…?

担当マスターより

▼担当マスター

名も無き詩人

▼マスターコメント

 元日からは大分過ぎてしまいましたが、皆様、明けましておめでとうございます。
「【2021正月】羽根突きで遊ぼう!」のリアクション、いかがでしたでしょうか。
 この度は公開が遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。
 今後はこうならないよう、最善を尽くさせていただきます。

 さて、今回は新入生NPC、あるいは友達と一緒にハイブリッド羽根突きでバトル、というものでしたが、望んだ通りの結果になりましたでしょうか。
 皆様のアクションから、勝つための執念やその戦法など様々なものが感じられ、正直申しまして、全員が勝ってしまうんじゃないかと思っていました。ですがやはり「文章を読み取り、行動に即した結果を返す」というクリエイティブRPGであるため、負けてしまった方もいます。

 NPCに対する数々の質問、ありがとうございました。
 多少はぼかされているものもありますが、質問に対する回答は、概ねリアクションの通りです。運営チームと話し合った結果得られた回答ですので、ほぼ公式設定です。
 ただしフェンリルが手に入れたという「薔薇のオーラが飛び散る剣」というのは、私が考えたものであって、アイテム化はされておらず、どこにも存在しません。

 羽根突きの際に様々なスキルが持ち出されました。ド派手な使い方にもうドキドキもんでした。
 スキルの使い方に関する判定については、概ねリアクションの通りです。これも運営チームと話し合った結果得られた回答ですので、ほとんどが公式の見解です。
 ただし「クロスファイア」と「朱の飛沫」については、今回のシナリオの特性上、採用されたものであって、いつでも同じことができるとは限りません。ご了承ください。

 その他アクションで気になったことについては、個別コメントにて言及させていただいております。
 また私に対する「描写注文」についてはしっかりとメモを取らせていただきました。お望みどおりの描写になりましたでしょうか。
 それから、様々なところでいろんな人が登場していますが、今回は時系列については特に考えておりません。その試合が同じ時間に行われたものか、それとも違う時間に行われたものなのかについては、皆様のご想像にお任せいたします。


 それではまた、縁がございましたら、別のシナリオでお会いいたしましょう。
 お相手は「名も無き詩人」が担当させていただきました。