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虹の根元を見に行こう!

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虹の根元を見に行こう!

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「こちら、ホームベース。シルキスさんを救出。作戦に移れます」
「こちら、オウルアイ、了解! これよりトサカ頭に対してオペレーション、パラ実涙雨を行う! それでは、スタート!」
 亮一が仲間達に向けて言うと、堰を切ったように動いた。
「虹の根元、か。ロマンがあっていいねぇ。それじゃ、邪魔する無粋な連中には、さっさとお引取り願おうか」
 突撃してくる3人のパラ実生の間を、亮一は小型飛空挺オイレで軽やかにすり抜けた。
「ビビって避けるしかできないってかぁ!? ヒャッハー!」
「全く……。戦うことだけの連中はこれだから……」
 亮一は攻撃するわけでもなく、ただパラ実生を煽った。
 単純な彼らは、いくつもの青筋を立てて、奇声を上げながら突撃してきた。
 目に映るは、ターゲットとしているのは亮一のみ。
 だから、気付けなかった。
「教導団です、おとなしく投降して下さい!」
 ティーは警告しながら鉄心と共に、亮一を狙う3人の両脇からそれぞれ、猛烈な速度で向かってきたのだ。
「う、うるせー! アマはひっこんでろ!」
 ボーガンで抵抗を試みるパラ実生だが、素早いワイルドペガサスを捉えきれなかった。
「抵抗と見なします!」
 そのまま1人に近づくと、則天去私で小型飛空挺に切り込んだ。
「こ、このおおおおおおおお!」
 未だ鉄心に気付いていない端のもう1人が、ティーに向けてボーガンを構えたが、鉄心の操るワイルドペガサスの体当たりで、小型飛空挺から真っ逆さまに落下した。
 残った小型飛空挺も、これ以上悪さに使われないようにと、魔道銃で打ち抜いた。
「……地上で仲間の一部が全力でパラ実生の心を折りに行くみたいだぜ。俺が言うのも何だが、あんな目に会うくらいなら……投降してくれた方がいいぜ。忠告はしたからな」
 落ちていくパラ実生を目で追いながら、鉄心は言った。
 空中に残ったパラ実生はあと1人。
 それを取り囲むように、亮一、鉄心、ティーがいた。
「さて、どうするか……」
「もう一度言います、投降してください!」
「荒野の民の気骨、奔放さも嫌いではないが、それとこれとは話が違う。犯罪は、な」
「……は、ハハ、それじゃ、お先失礼します。お疲れっした! ヒャッハー!」
 蛇に睨まれた蛙の様に震えると、パラ実生は潔く小型飛空挺から飛び降りた。
 上空の制圧は、完了した。

「それでは皆さん、パラ実涙雨開始です」
 梓が仲間に伝えると、梓は梓でパートナーのアルバート、ソフィアと共に行動を開始した。
「あ〜、やりすぎんようにな、皆の衆」
 狛がそう皆に向けて釘を刺すが、嬉々とした顔を見て、苦笑いするしかなかった。
「ふむ、か弱い女性を狙うとは不埒な輩め。ここは一つ、徹底的に教育してやる必要がありますな」
「虹の根元で元気になれるかなって思ってるんだから、邪魔してあげるのはね」
「ヒャッハー! 金になるアマはどこだぁぁ!?」
 早速、狛の仕掛けた爆発から抜け出したパラ実生がアーミーショットガンを乱射しながら近づいてきた。
 それに負けじと、ソフィアが六連ミサイルポッドを打ち込んで、弾幕を張るが、それで怯むパラ実生ではない。
 愚直に攻撃しながら突撃してくるパラ実生を、アルバートがそれを盾で防ぎつつ、後方のソフィアを守り、隠した。
 それに気付かずにアルバートの横を通り過ぎたパラ実生のスパイクバイクを、ソフィアが剣で突き刺した。
 バイクから転げ落ち、それでもなお立ち上がるパラ実生に、今度はアルバートが剣を振るった。
 はらり、とモヒカンだけを刈り取って見せた。

「じゃあ兄さん、僕らもそろそろやろうか」
「……ふわあ、あぁーあ、本当にこんな事やりたくね」
「でも、やるんでしょ?」
「ああ。めんどくせえけど、パラ実生を泣かしてやりたいしな」
 ちらりと本音を覗かせたセイバーの夜月 鴉(やづき・からす)は、パートナーである魔鎧夜月 壊世(やづき・かいぜ)で己が身を纏った。
「やる気になったか、鴉殿。それでは、わしが助太刀しよう」
「頼む!」
 壊世を纏った鴉が向かってくるパラ実生向けて駆けた。
「ヒャッハー! 飛んで火にいる夏の虫ぃぃぃ!」
「……外さんよ、この一撃は――ッ!」
 狛は特技である銃器に加えて、超感覚、シャープシューターのスキルを使い、狙いを定めた。
 くっと引かれたトリガーの後に、1台のスパイクバイク――鴉に最も近かった敵のタイヤを打ち抜いた。
「敵が多いの……」
 しかし手におえないというわけでもなく、攻撃を弾幕援護に切り替えて、鴉にこれ以上の敵を近づけさせないようにした。
 その攻撃も一区切り付けると、すかさず精密射撃のために構え、集中した。
 もう1台、スパイクバイクのタイヤを打ち抜いた。
 バイクと共に滑りこけるパラ実生だが、それでも頭に上った血を下げるほどには至らない。
 バイクに積んだ機関銃を取り出し、狂ったように乱射する。
「死んでも恨むなよ……」
「ウヒャヒャ、ヒャ……ッ、ギャハーッ!?」
 狛は的確にその乱射するパラ実生の足を打ち抜いた。
「くるんじゃねぇぇぇぇぇ!」
 バイクから転倒したパラ実生が、ずるずると尻餅をついたまま、ボーガンを乱れ撃ち、後退していく。
 それを鴉は剣で捌き、捌ききれない部分を壊世の鎧としての力を信じ、あえて受け止め、距離を詰めた。
「ヒィィィ、殴り合いしか俺たちゃできねぇぇってのぉぉぉ!」
「嘘つけ、ボーガン使ってるじゃねえか」
 完全に怯え切った敵に鴉は剣で薙ぎ払おうとするが、剣の動きを途中で止め、振りかぶった。
 ――ドゴッ!
 そのままパラ実生の脳天を、剣の柄で叩きつけるだけに留め、気絶させた。
 なぜなら、本番はこれからなのだ。

「オペレーション、パラ実涙雨、ごにゃ〜ぽ☆」
「ごにゃ〜ぽ☆」
 コンジュラー、鳴神 裁(なるかみ・さい)が高らかに宣言すると、パートナーである魔鎧のドール・ゴールド(どーる・ごーるど)も掛け声を合わせて、裁に纏った。
 1台のスパイクバイクに乗ったパラ実生が奇声を上げながら裁に向かってきた。
「やっちゃって、アリス!」
「うん、やっぱりパラ実生は徹底的に心を折って洗脳……げふげふ、説得しちゃおうね☆」
「洗脳? 今洗脳って言った?」
 ドールのツッコミを流して、パートナーである吸血鬼のアリス・セカンドカラー(ありす・せかんどからー)が氷術を唱えると、目の前の地面がスパイクバイクに向かって氷結していき、避け損ねたスパイクバイクが横転して、そのまま滑って木にぶつかり、大破した。
 しかし、バイクから落ちたパラ実生――ゲブーは、タフネスだった。
「てめぇ俺様の邪魔をしようっていうのかよ」
 むくりと起き上がり、裁達を見据え、
「む、そっ、そうか、メイドおっぱいよりてめぇのおっぱいでフガフガしてほしいっていうんだな!」
「はあ?」
「任せておけ。俺様は両手両足モヒカン毛すべて同時プレイオッケェだぜ! みんなまとめてテクでおっぱいボン!して、キャーキャーいわせてやるぜぇ!」
 頭の打ち所が悪かったのだろうかと思ったが、裁はゾッとした。
 ゲブーの背後から揺らぐ彼の何かが、裁の目にはモザイクがかって仕方ない。
「一時撤退〜〜っ」
 思わず3人は逃げ出し、鬼ごっこが始まった。

 オペレーション『パラ実涙雨』の中で、最も後方――、
「シャンバラの治安を維持する教導団の一員としては、不届きな犯罪計画を看過することはできないな。犯罪者予備軍を、犯罪者予備軍のままで置いておくのではなく、犯罪などしようとも思わないよう教え、導くのが僕達教導団の任務だ」
「やっぱり人間、かたち、から入ることも大切ですね。パラ実生の方達が、暴力的な行動に出るのも、かたち、服装の乱れからでしょう。やさしい、清純な服装をすれば、そのかたちに引っ張られて、おのずとこころもやさしく、清純になるものです」
 サイオニック、トマス・ファーニナル(とます・ふぁーになる)が使命感を露わにすると、トマスのパートナー、英霊の魯粛 子敬(ろしゅく・しけい)は戦いを眺め言葉に頷きながら、説法のように言った。
「どうやらパラ実生はヒット&アウェイの戦法で攻撃を仕掛けているな。なら僕達はキャッチ&リリースで対策をとろう。生け捕りにして、かたち、を清く正しくして……」
「わかった、わかったから2人とも手伝えよ」
 獣人のテノーリオ・メイベア(てのーりお・めいべあ)は、何やら白と黒の衣装を縫うヴァルキリー、ミカエラ・ウォーレンシュタット(みかえら・うぉーれんしゅたっと)の手伝いをしながら、パートナー達に継げた。
 ミカエラの裁縫速度は、とても尋常のスピードとは思えず、残像がちらついていた。
(いやいや、ミシンでその速度はありえねぇ……)
「テノーリオ、生地の裁断の手が止まっています。それに魯先生も……」
「モヒカンで、世紀末な服装だから、言動までつい乱暴になるのです。さあ、充分に準備しましょうか。ふふふふふ♪ 悪い子たちは、服装から正していきませんとねー♪ らんららら♪」
(……ちょっと魯先生がハイなのが気になりますが、ときどき、あの方もおかしいですからね。ホントに昔の偉い将軍だったのかしら?)
 一着、また一着と、ありえない速度で衣装が仕上がっていく。
 その時だった。
 逃げ出してきた裁達が近づいてきて、その異様な光景にテノーリオが立ち上がった。
 追ってきたゲブーの前に立ちふさがり、組み手となる。
「な、なんだ、この嫌な感覚……ッ!?」
 その不気味さにテノーリオは一気に畳み掛ける。
 適者生存、野生の蹂躙と繰り出し、ゲブーが怯んだところで強烈な一撃を腹に見舞った。
「ぐへぇ!? 痛ぇなぁ、俺様……人気過ぎ、だ……ぜ」
 ゲブーがそのまま気絶すると、裁は汗を拭って一息ついた。
「助かった〜。それじゃ、更正タイムだね!」
「止めないから、手伝いは任せてよね」
 オペレーション『パラ実涙雨』はフィナーレへと向かう。



 だが、まだまだシルキス達を狙う者は多い。
 パラ実生達によるヒットアンドアウェイの消耗戦の戦いはこれから、個人戦へと移る。