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第1回魔法勝負大会

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第1回魔法勝負大会

リアクション

 
    ★    ★    ★
 
「第二十試合、天枷 るしあ(あまかせ・るしあ)選手対、アリアス・ジェイリル選手です」
「やれやれ、紗理華の仇は私が討ちましょう」
 しっかりとした足取りで、アリアス・ジェイリルが武舞台にむかって橋を渡っていった。
「トゥプシマティの分まで頑張って優勝します!」
 対する天枷るしあの方もやる気に満ちている。
「無毀なる湖光!」
 天枷るしあが呪文を唱えると、彼女の足許から氷の面が前方にむかってのびた、キラキラと輝いて、まるで湖面のようだ。その中から、ふいに細い氷の矢が飛び出してアリアス・ジェイリルの前面にむかう。
「光の精よ……」
 アリアス・ジェイリルが光精の指輪を填めた手を前方に掲げた。
 朝顔の花が開くように翼を広げた光の精が、正面から天枷るしあにむかった。氷の矢と光の精がすれ違う。
 氷の矢はアリアス・ジェイリルの前面のバリアに弾かれたが、光の精はなんの妨害もなく進むと、えいと天枷るしあのおでこを蹴っ飛ばして消えた。
「まぶし……」
 思わずよろめいた天枷るしあが武舞台から足を踏み外した。
「ごきげんよー」
 ブラックコートで身体をしっかりとつつむと、天枷るしあがぽっちゃりとスライムの中へ落ちていった。
「勝者、アリアス・ジェイリル選手!」
 
    ★    ★    ★
 
「第二十一試合、セシリア・ファフレータ(せしりあ・ふぁふれーた)選手対、ルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)選手です」
「ふっふっふー……皆の者、聞くがよい! 私こそ蒼空学園一の魔女、セシリア・ファフレータじゃー!」
 武舞台に立ったセシリア・ファフレータが堂々と名乗りをあげた。
「おねえちゃん、いつ学園一の魔法使いになったんだろう?」
 オレンジジュースを呑みながら観戦していたミリィ・ラインド(みりぃ・らいんど)が、セシリア・ファフレータの台詞を聞いて、ちょっと小首をかしげた。
「さあな。態度だけなら一番かもしれないが……。それにしても、いつになくノリノリだな」
 少し呆れたようにエルド・サイファル(えるど・さいふぁる)が答えた。
「んー……命の危険がないんだったら、あたしも出ればよかったかなあ?」
「ふむ。出たらいいところまではいったかもしれないが……、マジックスライム漬けになりたかったのか?」
「やっぱりやめといてよかったのかな」
「こういうのは見るに限るってことだよ。ちょっとそのジュース一口くれ」
「やだよ。これはあたしのなんだから」
「なんだよ、いいじゃないか」
「やだ!」
 なんだか、肝心の試合観戦そっちのけで、エルド・サイファルとミリィ・ラインドがジュースの取り合いを始める。
「あんなのとあたるのですか。ルーシェリア、早く辞退を……。いや、でも、勝てないと決まったわけでは……。とにかく、頑張っていください」
 セシリア・ファフレータの傲慢とも言える強気な態度を見て、ちょっとはらはらしながらも、アルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)がルーシェリア・クレセントを応援した。
「よし、さあ行くぞえ! ……降り注げ我が魔力!」
 セシリア・ファフレータが、振り上げた両手を勢いよく下ろした。その勢いのままに、炎と冷気が下方へと吹き出る。そのうちの炎の方が一気に上昇してルーシェリア・クレセントを襲った。バリアがあるから平気とはいえ、火と冷気であおられたルーシェリア・クレセントが、きゃっと小さな悲鳴をあげる。
「燃えてくださーい!」(V)
 ルーシェリア・クレセントが手を横に薙いで火球を放った。
 セシリア・ファフレータの右側で火球が弾けた。
「ふっ。そちらが弱点とでも思ったのかえ? さあ、どんどん行くぞえ!」
 セシリア・ファフレータが、くいっと手を返した。ルーシェリア・クレセントの周囲を威嚇するようにグルグルと渦巻いていた冷気が、今度はルーシェリア・クレセントの右側に殺到した。
「あっはっはっ、これ楽しいのう♪」
 ルーシェリア・クレセントが下からあてようとした火球を意にも介さずにセシリア・ファフレータが笑った。
「見ておるか、二人共……」
 余裕を見せて振り返ったが、エルド・サイファルとミリィ・ラインドはジュースを巡ってまだ取っ組み合いの最中である。
「いったい何をやっておるのじゃ……」
 ちょっと唖然として、セシリア・ファフレータが言った。
「専門外の魔法戦ですがぁ、勝てるのならばぁ、一勝だけでもぉ……」
 ルーシェリア・クレセントがセシリア・ファフレータの頭上から火球を落下させた。
「外れじゃ!」
 セシリア・ファフレータが、正面から火流と冷気を一度にあてる。
 双方共にバリアに弾かれて、なかなかに勝負がつかない。
「吹き下ろせ!」
「戻るですぅ!」
 セシリア・ファフレータが上から、ルーシェリア・クレセントが後ろから攻撃するが、これもまた防がれてしまった。
「まずいのう」
 もうそろそろ二人共後がない。
「後ろ……と見せかけて左じゃ!」
 真正面から勝負をかけてきたルーシェリア・クレセントの火球をバリアに任せると、セシリア・ファフレータがクイと攻撃のむきをフェイント気味にコントロールした。
「やられちゃったですぅ……」(V)
 ルーシェリア・クレセントがもろに攻撃をくらって武舞台から吹っ飛ばされる。
「まだまだですぅ? でも、恥をかいたままでは終わらないですぅ。次は……」
 ホワイトアーマーの重みでズブズブとスライムの海に沈んでいきながらルーシェリア・クレセントが言った。下に着ていた制服の破片だけがぷっかりと浮かんでくる。
「専門外の魔法戦とはいえ、これも経験です。また修行を積んで次頑張りましょう」
 アルトリア・セイバーが、救護室にぺっされるルーシェリア・クレセントにむかってつぶやいた。
「勝者、セシリア・ファフレータ選手!」