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合法カンニングバトル

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合法カンニングバトル

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「しかし、ここまでテストの難易度が高いとは……カンニング推奨も納得です」
 ルイ・フリード(るい・ふりーど)
 難問、と呼ぶには無理すぎる問題を前にうーんと唸っている。
「これといって何の用意もありませんが……カンニングするしかないようですね」
 どうしたものかと周囲を見回す。
 そんなルイの目に飛び込んできたのが……武術部と山田の白熱するバトルだった。
「ひょっとして、この場合のカンニングというのは……」
 私怨もあるとはいえ、持てる力の全てを山田にぶつける武術部生徒達。
 そんな彼らの姿を見て、その発想にたどり着くのはごく自然の流れだった。

『教師を力ずくでねじ伏せて、答えの書かれたプリントを手にする』

「頭脳のみならず、日頃の鍛錬の成果もテストする……つまりはそういうことなのですね! いやはや、これは面白いテストです」
 これがエリザベート校長のお考えか、と関心するルイ。
 その鍛えられた肉体に気合をこめる。
「こうしてはいられません、さっそく私も相手をして頂きましょう」
 とはいえ、山田と武術部の真剣勝負の邪魔をする程ルイは野暮ではない。
 と、そこで二ノ宮先生を狙う算段をしていた生徒達がいた事を思い出す……なるほど、弱そうな相手を狙うのも有効なのだろう。
 だがルイはそこまでして勝利にこだわるつもりもなかった。
 どこかに手ごろな教師はいないものかと周囲を見回す……

「くそ……普通に解くのもカンニングするのも無理すぎる……ここは諦めるのも仕方ないのか……」
「そう、それも志方ない」
 ……志方綾乃だ。
 すっかり諦めムードの生徒を見つけては、白紙の答案を回収していた。
 答案を差し出した生徒には、時間までここで待つ必要はないと帰していく。
 戦いに巻き込まれないようにと配慮しているのだろう。
 生徒を外へ送り出した所を見届け、ルイが名乗りをあげる。
「そこの試験官殿、私の相手をお願いします!」
 ルイ☆スマァイル! と筋肉質な笑顔で挨拶するルイ。
「……ええと……相手、とは?」
 突然声をかけられた綾乃、わけがわからない。
 そんな彼女の様子にしばし考え込むルイだったが……
「おっと、これはカンニングでしたね……ひょっとして、不意打ちが正しい作法でしたか……」
 と一人で納得している。
 綾乃はますますわけがわからない。
 しかし、ルイははっきりカンニングと言っていた……何かをするつもりなのかも知れない……警戒した方がいいだろう。
 綾乃がそう判断した、その瞬間ふと……視界からルイの姿が消える。
「?!」
「では後ろから、失礼します」
 ルイが背後に立っていた。
 綾乃の背中に、その豪腕を叩きつける!
 ……その衝撃に大きく弾き飛ばされる綾乃。
「……っ……!」
 だが綾乃には見た目ほどのダメージはないのか、空中で体勢を整え着地する。
「まだです!」
 そこへさらなる一撃を加えるべく、ルイが肉迫する。
「ふぅ……」
 息を吐く綾乃……上体を沈めてルイの拳を避ける……と同時に足を払った。
「しまった! と、と……」
 突進してきたルイにとって効果てきめんだった……そのままの勢いでつんのめる。
 そこへ綾乃は先程のお返しとばかりにルイの背中を押し込む、転倒させるにはわずかな力で充分だ。
「ぐぬ……さすがです、ですが!」
 ルイの頭に牛のような角が生え、その鍛え上げられた筋肉が更に盛り上がる……
「戦いはまだまだこれからですよ」
「まだ諦めないのですか……志方ない……」
 全力を出したルイ。
 彼の相手をするには綾乃も全力を出さねばならないようだ。
「これ以上は手加減出来ません……大怪我をしても、それは、いた志方ない」
「望むところです!」
 すっかりバトルに熱中するルイだった。