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古の守護者達 ~遺跡での戦い~

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古の守護者達 ~遺跡での戦い~

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第7章「結界の守護石:黄」
 
 
「緋雨よ、次はどちらに行くとするかの?」
 遺跡の中で単独行動を取る水心子 緋雨(すいしんし・ひさめ)天津 麻羅(あまつ・まら)は守護石を破壊に向かった者達とは別の方向を探索していた。
「そうねぇ……ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・な・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り」
「それをわしの前でやるか」
「まぁまぁ、細かい事は気にしない。って訳で右に行きましょ……外れだったら神である麻羅のせいって事で」
「せめて責任は八百万分の一じゃろう!?」
 方々で起こっている戦いとは無縁の平和さで遺跡を進んで行く緋雨達。二人の目的は魔法生物と奥からの光に次ぐ第三の鍵である。
「しかし、そのような物が本当にあるのかのぅ」
「きっとあるはずよ。結界から出られないのは恐らく中に入った人を閉じ込める為の罠。それと同時に仕掛けである銅板の情報を外に漏らせないようにする為だと思うわ」
 緋雨が自信を持って言う。彼女が着目したのは、携帯電話が通じるという点だ。
「さすがに昔の人にはこういう手段が出てくるなんて予想もしなかったんでしょうね。でも、だからこそ私は内部の銅板に直接関係のある物が結界の外側にあると睨むわ。こんな大掛かりな仕掛けだもの、きっとそこには並じゃない思念が残っているはずよ」
 そう言って右手を軽く握る。怪しい所をサイコメトリで調べ、結界解除に関する情報を手に入れるつもりなのだ。
「……のぅ、緋雨。一つ気になる点があるのじゃが」
「ん? どんな事?」
「確かに結界から出る事は叶わんようじゃったが、結界越しに会話は出来ておらんかったか?
「…………あ」
「……」
「…………」
「ひょっとして、その点を考えていなかったとか……?」
「さ、さぁ先に進むわよ、麻羅! きっと何か見つかるはずだから! 多分、きっと!」
「ちょっと待て! 急に先行きが怪しくなって来おったぞ!?」
「さてと、マッピングマッピング」
「これ、待たんか緋雨! 待てというに!!」
 
 
「次は向こう、右奥に感じますね」
「今の所円を描くように進んでるね。一周で五箇所毎の黄色い石……マッピング出来てる訳じゃないから感覚での判断だけど、何重もの五芒星を展開しているのかな?」
 鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)のトレジャーセンスを頼りに進む一行。先頭に立つ彼の横でエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)がこれまでの守護石の配置からそれ自体が意味を持っているかどうかを推測していた。
「ぐるっと廻ってその中心、そこに何かがあるって事かな」
 葉月 エリィ(はづき・えりぃ)が壁の向こう、渦巻状になっている道の中心点を想像する。同じようにそこが鍵だと思っている者、風森 巽(かぜもり・たつみ)メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)が共通の見解を見出していた。
「仮に周囲のが五芒星だとすると、その力が一番及ぶ場所か……となるとそこにあるのは我らが破壊した石に護られている物があるのか、或いは――」
「――或いは、周囲の魔力を一身に受け、先ほどの結界に送る為の物、か」
 話しながら歩くうちに新しい守護石を見つける。三個の守護石が三角を描くように設置されている。この周回では五箇所目だ。
「これもやっぱり雷で壊せるのかな?」
「今までから考えるとそうでしょうね。私は良く知らないのですけど、ゲームなどではこういった属性に対応した仕掛けが定番だとか」
「そうなんだ? じゃあ夜月ちゃん、コレを作った人ってゲームが好きだったのかなぁ?」
「……古代にゲームは無いんじゃないか? ティア」
 ティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ)常闇 夜月(とこやみ・よづき)の会話に思わず巽が突っ込みを入れる。仮に古代にゲームがあったとして、こんな大掛かりな仕掛けを作るとしたらもの凄く間違った方向に努力しちゃったゲーマーだろう。
「それより、この石を破壊してしまおう。チェンジ! 轟雷ハンド!」
 雷を纏った巽の拳が守護石を砕く。それに併せ、仲山 祐(なかやま・ゆう)ファウナ・ルクレティア(ふぁうな・るくれてぃあ)もそれぞれ武器と魔法で他の二つを破壊した。
「ふぅ……全く、面倒くさい事を考える奴が居たもんだ……」
「ホントだよね〜。でも、そろそろ終わりかな?」
 五箇所目の守護石を破壊した為か、周囲に渦巻く魔力が若干薄れたのを感じた。再び貴仁が魔力を感知して先導する。
「次はこの先ですね。恐らくそこが中心部だと思うので、気をつけて進みましょう」
 妙にやる気のある貴仁に対し、パートナーの医心方 房内(いしんぼう・ぼうない)はどこか乗り気では無い感じだった。それに気付いたのだろう。鬼龍 白羽(きりゅう・しらは)が房内に並んで歩きながら理由を尋ねる。
「どうしたの? エロ本。普段は色々とふざけてるのに今回は何もしないし。変な物でも食べた?」
「わらわとて人命がかかっておる時くらい真面目にやるのじゃ……とは言え、それだけではいまいちやる気が出てこないのも事実での。何かご褒美的な物でもあれば話は別なのじゃが……」
(あぁ、そういう事ね)
 房内は房中術を扱った本の魔道書である為か、普段から言動が色々と不健全な人物だ。そんな彼女が空気を読んだ事が驚きだが、そこであと一歩が足りないのが房内らしいと言うべきか。
「だったら救助した人達に欲求不満を解消して貰えばいいんじゃない? 命の恩人(?)のお願いだもん。断れないんじゃないかな」
「……む? なるほど、恩という言葉と共に責め、嬲るか……面白そうじゃの」
 房内の顔にニヤリとした笑顔が浮かぶ。やる気を取り戻して列の前の方へと進む彼女を見送る白羽に、エレナ・フェンリル(えれな・ふぇんりる)クリムゾン・ゼロ(くりむぞん・ぜろ)が小声で話しかけた。
「白羽ちゃん。わたくしの記憶が正しければ、あの結界の中にいたのって」
「ご老人だった気がするのでござるが」
「うん、でもあのエロ本は良く見てなかったはずだから。やる気をだしてくれるならオッケーって事で」
 しれっと言い放つ白羽。そんな彼女の思惑など、房内は知る由も無かった。
 
 
「ふふふ……良く来たじゃん、お前達」
 中心にある最後の守護石。そこには一人の男がいた。その男、ゲドー・ジャドウ(げどー・じゃどう)が不敵な笑みで一行を出迎える。
「き、貴公は……魔法の本を爆発させた男!」
「そういう覚え方はやめてくれませんかぁぁぁ!?」
 シリアスな雰囲気が一瞬で台無しになる。巽は以前、所有者に必要な事柄が浮かぶという魔法の本に関する洞窟の調査の際、ゲドーの姿を見た事があった。その時に所有者の一人を欺いて本を奪ったゲドーが『自分がどうしたら幸せになれるか』を願ったのだが、その直後、本は謎の爆発をしてしまったのだった。
 ちなみにその破片で構成された回答は、強く生き――
「言うなぁぁぁぁ!!」
「……随分とテンションの高い妨害者だね」
 エースが思わずつぶやく。ゲドーは何とか落ち着くと、改めて一行と対峙した。
「お前達がこの守護石を破壊すると、俺様としては面倒な事になるのよ。だから妨害するってワケ」
「なるほど、ならばその守護石とやら、勝手に持って行くがいい」
 不意にそんな事を言い放つメシエ。当然疑問に思う周囲に対し、彼は小さな声で付け加えた。
「大方この手の物はあの台座から動かしてしまえば効果が無くなるだろう。むしろ向こうが引き剥がしてくれるなら手間が省けると思うのだが」
「つまり持ってけドロボーって奴だね。ちょっと面白いかも」
 エースがメシエの案を肯定的に捉える。残念ながらゲドーはそう捉えなかったが。
「こいつも後でちゃ〜んと頂くさ。でも、俺様の一番の目的は結界の中にある銅板なのよ」
「つまり邪魔が入らなくなるまではその石を護る気って事ね」
「奥に向かった人がいると聞いた時点でただ結界の鍵を壊して終わりとは行かないだろうと思っていたが、やはりこうなるか……」
 エリィと巽が戦闘態勢を取る。向こうはゲドーのみ。二人だけでも十分あしらえるはずだ。
「ちょ、いきなり二人掛かりかよ!?」
「とっとと片付けないといけないからね。すぐに終わらせるよ」
「葉月さんの言う通りだ。救いを待つ人達の為に、多少強引にでも押し通らせて貰う」
「くっ、俺様大、大――大チャ〜ンス!」
 不利を悟って狼狽していたはずのゲドーがニヤリと笑う。次の瞬間、彼の横に召喚されたシメオン・カタストロフ(しめおん・かたすとろふ)が現れた。
「さぁ始めましょう! 貴方を、私を、全ての者への祝福を与える救世の戦いを!」
 シメオンの叫びと共に通路の脇にあった石像達が動き出す。ガーゴイルとゴーレムだ。
「まだまだいるぜぇ! ローゼちゃん、やっちゃいな!」
「はいは〜い☆」
 更にゲドーの首から下を覆っていた着ぐるみ――そう、着ぐるみ――が分離され、隣に頭部がついた状態で同じ形の着ぐるみが現れる。
「着ぐるみが増えた……? 分身か何かでしょうか?」
「いや、あれは多分、ボクと同じ『魔鎧』だね」
 夜月の疑問に白羽が答える。白羽の言う通り、現れた着ぐるみはローゼ・シアメール(ろーぜ・しあめーる)と言う名の魔鎧だった。
「ひゃっは〜♪ パパ、何して遊ぶの〜?」
「あいつらを倒しちゃうのよローゼちゃん。そんでもって、遺跡のお宝は俺様の物だ!」
「だ〜♪ それじゃ、皆と遊んじゃうヨ〜」
 元気良く手を上げるローゼ。それとは逆に、ファウナと祐は冷静に周囲を観察している。
「わ、一気に増えた。どうする? 祐」
「まずはこの状況を何とかしないとな。しかし、予想以上の数か……」
「フフフ……戦いは数なんだよ。一人だけだと思ったら大間違いだ!」
 形勢逆転と見て強気になるゲドー。確かに今はゴーレム達が退路を塞ぐ事により、祐達を包囲した形になっている。
「これは些か予想外でしたね……やはり、あの着ぐるみを無視していたのは失敗でしたか」
「いや、普通なら見なかった事にするじゃろ。遺跡の奥で着ぐるみを着た男に会ったら、さすがにわらわでも反応に困るのじゃ」
「どうもすみませんねぇぇぇ!?」
 貴仁と房内の言葉に思わず半ギレで謝ってしまうゲドー。ローゼは人間形態の時は着ぐるみを着ている女の子だが、魔鎧になっても着ぐるみ状の為、どうしても普通の魔鎧のように装着を誤魔化す事は出来ないのだ。
「ともかく! 俺様の邪魔をする奴らは、不幸になっちまえ!」
 ゲドーの言葉と共に床と壁からアンデッドやゴーストが現れる。更に上空からは――
「あれは……ドラゴン型のアンデッド?」
 エースの言う通り、アンデッドとは違う、一際大きな屍龍が飛来してきた。狭い通路ギリギリを飛ぶその口から、ブレスを放ってくる。
「くっ、あれを何とかしないと厄介だな。ここは我が一気に……!」
「お〜っと、やらせないヨ〜♪」
 巽が壁を蹴る事で屍龍の高さまで上がろうとした。だが、それを察知したローゼの妨害により、突然空中で何者かに阻まれて落下する。
「何――!? 今の感覚……フラワシか!」
「だ〜いせ〜いか〜い!」
「さっすがローゼちゃん。いい仕事してくれるじゃん」
「えへ〜、でしょでしょ♪」
 ゲドーに向けてピースサインを返すローゼ。もっとも、着ぐるみではピースになっていないが。
 対する巽はブレスを警戒しながらも、頭上の厄介な相手をどうするか素早く考えていた。
「フラワシによる支援防御か。普通に戦う分にはまだやり方もあるが、上空への移動を遮られるのは対処が難しいな。姿が見えないと避ける事も出来ない」
「タツミ、ここはボクがシューティングスター☆彡で!」
「遺跡を壊すから駄目」
「え〜」
 ティアの意見を即座に却下する巽。ティアは守護石を破壊する時にもサンダーブラストで豪快に壊していた為、遺跡に被害が出ないかヒヤヒヤ物だったのだ。
「巽さん、本気になったらどのくらい速く上まで行ける?」
 その時、エリィが上を見ながら尋ねた。
「さっきのは神速の域には達して無かったからまだ速くは出来るが……何か手が?」
「うん。あたしが道を切り開くから、巽さんはそこを駆け抜けて」
 屍龍が再びブレスを放つ。それを散開して回避しながら、エリィは二丁の拳銃を上空に向けた。
「さぁ、行って!」
 それに応え、巽が先ほど以上の速度で壁を蹴り、上へと登って行く。当然の事ながら、ローゼはそれを防ぐ為にフラワシを差し向けた。
「れっつゴ〜♪ また落としちゃえ〜」
「そうはさせないよ。クリムゾン!」
「お任せにござる」
 エリィの号令でクリムゾンがミサイルを上空に向けて発射する。弾幕のように展開されたそれは、コンジュラー自身以外には姿が見えないフラワシの位置を的確に炙り出した。
「そこっ!」
 続けてエリィが両手の拳銃のトリガーを引く。二発の弾丸はフラワシがいるであろう位置を正確に射抜き、その存在を消滅させる。
「はきゅっ!?」
 フラワシのダメージがローゼに伝わり気絶する。遮る物が無くなった所を駆け抜ける為、巽は更に速度を上げて神速の域に達した。
「目にも留まらぬ速さってのを見せて……って、それじゃ見えないか」
 そうつぶやいた時には既に屍龍を越え、更に上へと跳んでいた。そのまま脚に雷の気を纏い、龍の牙のような鋭い蹴りをお見舞いする。
「閃光! イナヅマ反転キックッ!」
「よし……皆、退避だ!」
 祐の合図に従い、下にいる者達が周囲に散った。次の瞬間、空いた場所目掛けて屍龍の巨体が地上へと降下する。その勢いは激しく、下にいたゴーレムやアンデッドを巻き込んで一気に叩き潰した。
「なぁぁ!? 俺様のアンデッド達が!」
 その大きさ故に巻き込まれた者の被害は大きく。あっさりと戦闘不能に陥ってしまったアンデッド達を見て愕然とするゲドー。そこに綺麗な着地を決めた巽がお決まりの名乗りを上げる。
「蒼い空からやって来て、不幸を蹴り砕く者! 仮面ツァンダーソークー1! 囚われし者を救う為、仲間と共に敵を討つ!」
「く、くそっ、やってくれるじゃん。こうなったら……」
「さっすがタツミ! よ〜し、今度はボクが」
 ゲドーとティアが前もって考えていた手を使う。それは奇しくも両者同じく、光術による目晦ましだった。
「うおっ、まぶしっ!?」
「きゃっ!?」
「けど俺様にはまだ――」
「――こんな手があるんだから!」
 再び同じタイミングで二人が杖を振る。蒼き水晶がついたその杖はゲドーとティア、互いのスキルを封じ込めてしまった。
「ぬぬぬ、中々」
「やってくれるね」
 ゲドーとティアの間にライバルとしての火花が散る。そんな中、決着は伏兵によってつけられた。
「ごめんなさい。その隙、突かせて頂きますわ」
「へ? ……はうっ!?」
 ゲドーの尻に短刀が刺さる。エレナがこっそりサイコキネシスで床ギリギリを進ませていた物だ。短刀の効果により、ゲドーの身体が下半身から石化する。
「ふふ、では貴方の血、頂戴しましょうか」
「ちょ、待っ」
「大丈夫。吸われるうちに気持ち良くなってきますわ」
 首筋に熱い視線を向けながら、エレナが徐々にゲドーへと近づく。逃げたいと思っても、足元が石化している上にスキルを封じられているゲドーでは不可能だ。
 そんな彼に――不本意だろうが本当の意味で――救世主が現れた。端でゴーレム達を強化する歌を歌っていた為に屍龍の被害を受けなかったシメオンがゲドーの石化を解除する。
「お困りのようですねぇ、ゲドー。未熟なパートナーを導くのも私の務め。そう! 私が! 貴方を! 皆を! 救世致しましょう!」
 間一髪、血を吸われる直前で石化が解けて素早く離脱するゲドー。彼はそのまま入り口側へと走ると、ある意味お決まりとも言える捨て台詞を吐いて行った。
「お、お前ら覚えてやがれ! 次こそは、次こそは絶対に幸せになってやるからなぁぁぁぁ!!」
「……あの方が仰っている意味が良く分からないのですが」
「色々あるんじゃないかな、多分」
 夜月と白羽のつぶやきが遺跡に響く。彼が望む物を手に入れ、幸せになれる日がいつ来るのか。それは誰にも分からなかった。
 
 
「ともかく、これで邪魔者はいなくなったか。ここの石もとっとと破壊してしまうとしよう」
「そうだね。多分これで最後だろうし」
 祐とファウナが周囲を確認して廻る。やはり中央にある守護石が唯一残っている物のようだ。
「お嬢さん達も、気力は大丈夫かな?」
 エースがイナンナの加護の力で皆の精神力を回復させ、尋ねる。どうやら全員、守護石を破壊するだけの精神力は戻ったらしい。
「さて、これで結界にどういう影響が起きるのか……実に興味深いね。やはりこういった物は自身の目で確かめるに限る」
 メシエが中心となり、サンダーストームを詠唱する。それと同時に他の者達が放った雷電系の魔法や技により、最後の守護石はバラバラに砕け散った。
「ふむ。魔力の流れが止まったようじゃの。後は他の者任せか……む? 主様、どうしたのじゃ?」
 房内が貴仁がしゃがんでいるのに気付く。雷電系の攻撃を行えない貴仁は守護石の破壊に参加していない為、精神力が尽きた訳でもないはずなのだが。
「いえ、ちょっとこれが気になりまして」
「それは石の欠片か? そのような物を拾ってどうするのじゃ」
「まぁ個人的な事ですよ」
「ほほぅ、それは聞き捨てならんの。後でじっくりと聞かせて貰うとするか」
 ニヤリと笑う房内。そんな彼女に嫌な予感がしながらも、貴仁は守護石の欠片をポケットにしまい込んだ。
(残念ながらあの不思議な力は失われて、ただの石になってしまいましたか……でも綺麗な色なのは変わりませんし、持って帰るとしましょう。上手くあの人へのプレゼントになるように加工出来たらいいんですけどね)
 明るく元気な想い人へ。そんな事を頭で考えながら、貴仁は結界前へと戻る一行の後に続くのだった――