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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

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乙女の聖域 ―ラナロック・サンクチュアリ―

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 先に部屋を後にした数名は、漸く校庭に出る。が、既にそこに風はなく、先程の影もない。
「と、兎に角急ぎましょう。早くしないと――」
 真人の言葉は、しかしセルファの蹴りで途切れた。
「危ないわよ! ぼさっとしてたら…っ!」
 慌てて受け身を取った彼は、自分の今いた場所を見て言葉を失った。
そこには先程姿を見たドラゴンではなく、ゴーレムが立っていたのだ。
「うぉ! どっから降ってきやがったんだ!?」
 静麻は慌ててワイヤークローを手にする。
「きゃっ……うわぁ、おっきぃ…」
 彼の後に続いていた可憐は小さく悲鳴を上げた後、佇むゴーレムを見上げてそんな事を口ずさむ。と、漸くパソコン室から出てきた一行もその場に到着するが、いまいち状況が掴めずにいた。
「数人残り、後は俺たちとこいつを倒す手伝いをお願いします!」
 一人離れた場所にいる真人は大声で一行に叫んだ。
「こいつは前に戦った事があるの。でも二人じゃ足止めにだってならないと思う。数人残ってくれれば倒せると思うわ。後は全員雅羅の後を追って欲しいのよ」
 警戒しながらセルファが背後にいる一行へと呟いた。
「オーケイだ、あたし等は残って戦うとするよ」
「こた、こわいけろ……が、がんばりゅお!」
 樹とコタローがそう言うと、セルファの隣へと仁王立ちする。樹は両の手に禍心のカーマインを握って。
「サンダースの後を追う方はこちらへ、退路を開きます!」
「彼女の支援に向かう方は着いてきていただきたい!」
 幸祐とヒルデガルドはそう言い、ゴーレムから更に距離を取った。
「わ、我は雅羅のところに行くいよっ!」
「よし、行こうぜ」
 薫と孝高はヒルデガルドの言葉に則り、二人の後に続いてゴーレムから距離を取る。
「ど、どーしよ……」
「僕たちも雅羅さんを追いかけよう」
「う……うん」
「任せろ! あいつの注意は俺たちでひきつける! 行け!」
 勇刃、緋葉、セレア、友見が夜舞と斎の前に立ちはだかり二人を背負う形でゴーレムと対峙し、叫んだ。
「んじゃ、俺たちも残って戦うか」
「うー……ちょっと自信ないけどなぁ」
 カイと渚が互いに武器を取るが、真人が二人の方を向いて叫ぶ。
「こちらはそこまで人手はいりません! あくまでも相手の狙いは足止めです! 俺たち全員が此処で足止めを食っては、まさに相手の狙い通り。お二人は雅羅さんたちを追う方々の支援をお願いします!」
「わ、わかったわ!」
 渚は返事をしながら踵を返し、今幸祐とヒルデガルドに誘導されている一行の元へと向かった。
「こっちに残ってんのは結局誰なんだっ!?」
 ゴーレムが攻撃を始め、それを交わしながらにコタローを連れた樹が真人の隣へやってきた。
「私、真人、あなたとコタローちゃん、えっと後は――」
「俺たちもいるぞ!」
 セルファも樹にならって真人の隣へと、半ば転がる形でもってやってきて呟くと、後ろの方から勇刃の声がした。
「こちらは誘導を完遂!」
「どうしますか? この状況」
 次にやってきたのは幸祐とヒルデガルド。どうやらゴーレムから狙われない距離まで雅羅を追いかける面々を誘導できたらしい。
「そのままカイと渚が護衛として雅羅んとこまでいったが、これで足りんのかい?」
 静麻もやってきて真人に尋ねた。が、一度対峙している相手もあり、真人、セルファは暫く考え、その場の面々を見て薄らと笑った。
「恐らくは平気です。以前は洞窟内、今は開けた校庭。セルファをはじめ、大振りが出来る武器が使えますし、何より魔法も打ちたい放題」
「充分よね」
「すみませんが勇刃さんたちは雅羅さんの後を。相手はドラゴンになるかもしれません。こっちの人員よりも向こうに人数がいないとみんなが危ない。お願いできますか?」
「……んま、そこまで頼られたら、仕方ないわよね? 勇刃」
「あぁ、そうだな」
「では早速、参りましょう」
「よーし、私が殿やっちゃいますよ! 四人でダッシュで戦域離脱ですー!」
 勇刃、緋葉、セレア、友見はそれぞれに返事を返し、すかさず踵を返し走り始めた。
「それでは再び我々が退路誘導を」
「後に後方から周辺を一望出来る場所を確認できる場所にて皆さんの援護を行います」
「頼んだぜ、二人とも」
 幸祐、ヒルデガルドが勇刃たちの前に出て、四人がこの戦域から離脱するための退路を敷く。真人、樹が魔法と銃弾で相手に牽制を行った事を皮切りに、一同がそれぞれ動きを見せた。
 真人と樹は笑顔のままに顔を見合わせ、続いてゴーレムへと顔を向ける。
「足止めの足止め、此処は俺たちで――引き受けましょう