天御柱学院へ

蒼空学園

校長室

イルミンスール魔法学校へ

美緒が空賊!?

リアクション公開中!

美緒が空賊!?
美緒が空賊!? 美緒が空賊!?

リアクション

 チャーター便から空賊船への乗り継ぎをかりんの空飛ぶ箒シーニュに同乗することで行っためいは、甲板の上段部に立つ美緒の前へと降り立った。
「黒ひげ! 美緒ちゃんを返してもらうからね」
 羅星環刃刀の切っ先を突きつけて、見得を切っためいは、反対の手に、かりんから受け取った光条兵器を持ち、美緒へと斬りかかった。
 光条兵器の条件に、美緒の身体は斬らず、服だけを斬る、と設定付けて。
 めいの振り下ろした光条兵器を美緒の持つ細身剣が止める。
 金属が重なり合い、音を響かせた。
 刀が手から滑り、めいの肩口を美緒の剣が斬る。
「癒します」
 すかさず、かりんが癒しの魔法を使用して、その傷口を癒していった。
 刀を握り直しためいは再び、美緒へと斬りかかる。
 美緒が交わせば、時折、切っ先だけが服を掠めていく。
 めいは、美緒の纏う服のうち、コート以外にも“黒髭”が潜んでいるかもと見て、徐々に、コート以外も狙って、斬りつけていった。

(美緒さんの顔で手配書に載っている以上、コートを脱がせてはい終わり。というわけには行きませんわ)
 直感を頼りに、チャーター便から乗り継いで、現場へと辿り着いた冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)は、デジタルビデオカメラの用意を始める。
 美緒=“黒髭”という認識を何とかするため、『この呪いのコートが元凶であり、美緒さんは悪くない』ということを証明するために、皆が、仲間が、美緒を止めるところを収めるのだ。
 彼女がビデオカメラを構えると、それを阻止しようと、傍に控えていた空賊たちが短剣や拳銃を手に、襲い掛かってくる。
 それを止めるべく、小夜子のパートナーのエノン・アイゼン(えのん・あいぜん)が、ラスターエスクードを構えて、立ちふさがった。
 それでも攻撃を仕掛けてくる空賊に、
「捕虜としての価値はあるよね」
 そう告げながら、飛竜の槍で、突くのではなく、柄で殴りつけていく。
「あなたは何者?」
 ビデオカメラの回る前で、崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)が“黒髭”へと問う。
「この少女のことを知らず助けに来た、というのか?」
 普段の美緒とは違う、低めの声で、問い返される。
 それと同時に振り上げられた細身剣をマリカ・メリュジーヌ(まりか・めりゅじーぬ)の剪定鋏が止めた。
 力のままに、そのまま挟み込んで、弾き飛ばす。
 飛ばされた細身剣は、遠く、甲板の中央へと突き刺さった。
「あなたが美緒だというのなら、パートナーを連れてないなんておかしな話ね」
「パートナー、は……」
 “黒髭”からの問い返しには応えず、続けて出された亜璃珠の問いかけに、“黒髭”は言葉を濁らせる。
 意識ごと乗っ取られているというのであれば、彼女のパートナーが魔鎧だということは知らないだろうと踏んでの質問だ。
「パートナーを連れていないのが何だというのだ!」
 応えた“黒髭”は、隠し持っていた短剣を引き抜いて、亜璃珠へと斬りかかる。
 それを交わして、亜璃珠はダークネスウィップを振るった。
「中身は兎も角、美緒を鞭で叩くだなんて……、……ふふ、悪いけどぞくぞくしちゃうわね」
 呟きつつ、軽くそれを振るって、美緒の身体へと打ちつける。
 怯んだ隙に、マリカが身を低くしながら、踏み込み、心身の調和が取れた拳を叩き込んだ。

「チャンスをつくれないか、頑張ってみるよ!」
 そう告げたノーンは、今、という一瞬を見極める。
「合図したら耳を塞いでいてね?」
 皆の攻撃で美緒が疲弊していく中、その一瞬を見つけた彼女は、美緒の前へと飛び出しながら、仲間たちへそう伝えた。
 すぅ……と息を吸い込んだ後、仲間たちへと指サインで合図をする。美緒と対峙すると、ノーンは全身の力を込めて『声』を発した。
 彼女の声を聞いた美緒が畏怖の念を覚え、怯んだところで振り返る。
「今だよ!」 
 ノーンが告げると共に、美緒が後ろから羽交い絞めにされた。
「何っ!?」
 驚く皆の前に姿を現したのは、明子だ。
「はーろー、後輩。また偉い事になってるからちょいと止めに来たわよー」
 龍の鱗をイメージし、皮膚を硬質化させて、防御を固めつつ、彼女は皆が美緒へといろいろ試せるよう、彼女の動きを止めさせる。
 更に、動きを鈍らせるように、その効果を持つ毒粉を辺り一体にこっそりと撒いた。
 短剣を手にしたまま抵抗する美緒だが、次第に身体に力が入らなくなっていく。
 結果、力の抜けた美緒から、氷川 陽子(ひかわ・ようこ)がパートナーのベアトリス・ラザフォード(べあとりす・らざふぉーど)と共に、コートを脱がせた。飛んでしまっていた帽子も拾い上げてくる。
 コートを取り上げられ、意識を失った美緒を羽交い絞めにしていた明子がしっかりと支えた。
「“黒髭”の本体は、美緒が着ていたこの空賊のコートと帽子でしょう。その空賊のコートと帽子が、着ていた者の意識を乗っ取り、操っていることが、先日のモナミの様子からも分かります」
 陽子は、その場に居る皆へとそう告げ始める。
「従って、“黒髭”の本体である空賊のコートと帽子を焼却しなければ、“黒髭”は永遠に倒せないのではないか、と思います。“黒髭”空賊団の壊滅、またはパラミタ上空での空路の安全な往来を望んでいるならば、この提案は拒否できないはずですわ。ですので、このコートと帽子を焼却処分しようと思いますの。でも、何処ででも出来るものではありません。これらを折り畳まずに入れることが出来て、燃えにくい金属製か陶器製の容器をお借りして、その中で燃やそうと思いますの。飛行船の中にそのようなものはあって?」
 訊ねる陽子に、探してみないからには分からないと、皆は答え、残存する空賊たちを捕らえるものと、容器を探すものに分かれて、空賊船や飛行船の中を回り始める。

 そして、探し回った結果、陽子の出した条件に当てはまる容器を見つけると、一行はそれを空賊船の甲板に置き、火をつけた。
 燃えカスは、証言の提出に使いたいと小夜子が引き取っていく。