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パラミタ百物語

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パラミタ百物語

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第弐拾参話 怪
 
 
 
「あの光、炎? 何が起こっているのよ」
 メガネの探索を諦めたリカイン・フェルマータが、ボロボロに崩れた鳥居の先に見えた異変に、あわてて草だらけの道を走っていった。
「やれやれ、すべて焼け崩れてしまったが、みんな無事だったようだな」
 黒焦げの畳と柱だけが残って、屋根も壁も焼け落ちてしまった社を見回して、グラキエス・エンドロアが言った。
 さすがに、空京神社の社を焼いてしまったのだ。これは、どうやって言い訳をしたものだろう。
 ゆっくりと歩いて行きながら、グラキエス・エンドロアは社から境内に飛び降りようとした。
「止まりなさい!!」
 突然そう声をかけられて、グラキエス・エンドロアが足を止めた。
「それ以上進むと落ちるわよ!」
 駆けつけたリカイン・フェルマータに言われて、グラキエス・エンドロアはあらためて足許を見た。
 崖から半分突き出たような社の廃墟の下は、切り立った断崖だった。もしそのまま進んでいたら、落ちていたところである。
「危ない、グラキエス!」
「だから、声に耳をかたむけてはだめです!」
「どこだ、どこに獲物がいる!?」
 ゴルガイス・アラバンディットとベルテハイト・ブルートシュタインがあわててグラキエス・エンドロアにしがみつくと、引きずるようにして引き戻した。そのそばで、エルデネスト・ヴァッサゴーがちょっとキョロキョロする。
 だが、彼らがいきなり暴れたので、かろうじて形を保っていた社の廃墟が傾いて断崖に滑り落ち始めた。
「みんな逃げて!」
 あわてて、その場にいた者たちが、手招きするリカイン・フェルマータの方へと逃げだした。ほとんど団子状態で、なんとか安全な地面の上に転がり出る。直後に、焼け落ちた社が、崖の下に落ちていき、途中で忽然とすべて消えてしまった。
「いたたたた……、きゃあ!」
 立ちあがろうとした神代夕菜が、巫女さんからもらった巫女服がボロボロに崩れていくのに気づいて、あわてて身体を手で隠した。そばで、同じような姿になったノルニル『運命の書』が呆然と突っ立っている。
「これは、どういうことなのですか」
 ユイ・マルグリットが、社がなくなった跡に立っていた空京神社の巫女さんを問い質した。
 ふわりと巫女服の袖を翻して、巫女さんが振り返る。
「死ねばよかったのに……」
 そうつぶやいたとたん、巫女さんの姿は朝日の中に忽然と消えてしまった……。
 

担当マスターより

▼担当マスター

篠崎砂美

▼マスターコメント

 
 真夏の怪談……のはずだったんですが、ネタに走る人続出でした。
 語るというのは、結構難しかったみたいですね。
 落語や講談の怪談などを知っていると、一種の様式美と言うことがよく分かるわけですが、アクションは文字数も限られますので皆さん大変だったようです。
 
 奈落人たちは結構活躍していたようですが、もともと活躍させるのがアクション的に複雑な種族ですから、たまにはこういったシナリオもいいでしょう。
 
 結局23話?で終わってしまいましたが、残り77話はいつか語られることがあるのでしょうか。冬?
 
 口調修正、読みにくい部分を加筆修正。