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第一章

 開始が宣告され、少し経過。
 何名かの生徒達は探索のため講堂から既に出て行った。残った生徒達も、今後の方針について相談しあっている。
「……ボク達も行こう」
「そうだね、ここにいても何もいいことは無いと思うし」
 アゾート・ワルプルギス(あぞーと・わるぷるぎす)金元 ななな(かねもと・ななな)がお互い頷く。
「……っていうけど、何処に行けばいいのやらわかんないや。それよりここ何処なのー?」
「ああ、そういやキミずっと寝てたんだっけね。あそこに案内板があるんだよ」
 アゾートが指差す先に、一枚の板。そこには簡潔であるが、この場所の見取り図が描かれていた。
「どうやら、学校らしいよ」
「そうだねー……ん?」
「どうしたの?」
「いや、あそこ……」
 なななが指差す先は、演説用の壇上――そこに、『それ』は居た。

――『それ』は頭から爪先まで、真っ黒で人の形をしていた。

「……何、あれ?」
「わかんないけど……嫌な予感しかしないんだけど」
 なななが言った瞬間、『それ』は弾丸のように駆け出し、まっすぐに正確に生徒達へと向かってきた。
「早っ!?」
「に、逃げよう!」
 アゾートとなななが走り出す。同時に、他の生徒達も駆け出した。

「……みんな行きましたか?」
 そろりと様子を伺うように、卜部 泪(うらべ・るい)が講堂内へ入ってきた。
「うむ、これでようやく始められる」
 全身黒タイツの『それ』が、頭に覆われたマスクを脱ぐ――現れたのは金 鋭峰(じん・るいふぉん)の顔だった。。
「しかし、我々も参加する必要はあるんですかね?」
 彼女も、鋭鋒と同じ黒いタイツを身にまとっていた。流石に、顔は出してあるが。
「無論だ。他に追いかけている生徒達もいるが、我々のような者も居た方が緊張感が増すだろう」
「はあ、そうですか」
「それにただ見ているだけというのもつまらぬからな」
「間違いなく本音はそっちですね……けど、夜の校舎でこういうことするのも何だかわくわくしますね」
「勘違いしないでもらいたいのは、あくまでもこれは生徒達の為……指導だということだ」
「あ……そうですね。申し訳ありません」
「解っているのならばいい……さて、楽しい狩りの始まりだ! ゆくぞ!」
 そういうなり、鋭鋒は再度黒いマスクを被る。
「……一番ノリノリなのこの人なんですよねぇ」
 マスク越しに鋭鋒が笑みを浮かべているのが判った泪は、苦笑を浮かべた。